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メビウス&宮崎駿対談動画:文字おこしと全和訳1
[ 1 / 2 / 3 / 4 / 5 ]

《おねがい》
ご訪問いただきありがとうございます。
記事本文を読んでいただくまえに、みなさんにお願いしたいことがあります。
今回僕が用意したメビウスと宮崎駿の対談動画の文字おこしと和訳は、
著作権や翻訳権等、正当な諸権利への配慮を欠いた上に
成り立っているものと思います。
そのため、僕が偉そうなことを言えた立場ではないのですが、
以下のことをお願いさせて頂きたく思います。
まず、商用での転載はぜったいに止めてください。
また、非商用での転載も、
僕自身がこんなことを言えた身の程ではないんですが、
出来れば、止めていただければ幸いです。
引用やリンクやトラックバックまで禁止にしてしまうというのは、
さすがに無理がありすぎると思いますので、
僕の方から禁止をお願いすることはしません。
引用、リンク、トラックバックしていただいて結構です。
ただ、やはり難しい問題だということは忘れないで下さい。
また、対談のなかで
宮崎駿監督の『ハウルの動く城』が話題になっている箇所があります。
ネタバレに該当するような箇所もあるかと思いますので、ご注意ください。


 「メビウス・ラビリンス」管理人 




パリで開かれている「宮崎駿―メビウス」展に際して行われた
メビウスと宮崎駿の対談動画の文字おこしと全和訳です。
動画の詳細は以下の記事を参照してください。
メビウス&宮崎駿の対談動画6種

メビウスの発言は動画の字幕をそのまま写してあります。
宮崎駿の発言は、読みやすさを考慮して、
かならずしも厳密には文字おこしはしていません。
表記の形式は以下のようになります。
フランス語(メビウスの発言)

メビウス:
日本語(メビウスの発言の和訳)

宮崎:
日本語(宮崎駿の発言)

「*」(アステリスク)から始まる文書は訳注です。

青色の部分はDVD収録版でカットされている箇所です。
『ハウルの動く城』DVDレポート(メビウス関連のみ)


この記事には抜粋動画その1~3が収められています。


[ 1 / 2 / 3 / 4 / 5 ]
◆ 抜粋動画その1

Au niveau du travail,
c'est vrai que d'abord, on est
a peu pres de la meme generation,
et on a commence a travailler
dans un contexte qui etait commun,
et ca, deja, c'est une forme...
de similitude.
Ensuite, il y a eu des sensations.
Mais je ne sais pas comment
M.Miyazaki a percu mon travail.
Pour moi, c'est tres mysterieux.
J'aimerais savoir comment
il a rencontre mes dessins.
Par quels canaux il les a connus.
Si ce sont des canaux professionnels...


メビウス:
 *もしかしたらメビウスのこの発言のまえに、
 宮崎駿が、漫画の『ナウシカ』を描き始めたばかりのころ、
 メビウスの真似だと非難されていたことを
 話しているのかもしれません。
 『ナウシカ』の絵柄は、
 メビウスの影響を顕著に受けているとよく言われます。
作品を描き始めたばかりの頃というのは、
やはりどうしても、同じ世代の人間の影響を受けてしまうものですよ。
みんな、互いに似たような環境のなかで
制作を始めるものでしょう?
何と言うか、摸倣することから全てが始まるんですよ。
その次に初めて、
独自のフィーリングみたいなものを表現できるようになるんだ。
でも、私のばあいは、
宮崎さんが私の作品を見て感じ取ったようには行かなかった。
私のばあいは、大いなる「謎」から、すべてが始まったんです。
この日本の漫画家は、
いったいどうやって僕の作品に出会ったんだろう?
いったいどんな手段を使って知ったんだろう?
何か仕事の関係で知ったんだろうか?
そういう謎を、とにかく知りたいと思ったのです。

宮崎:
メビウスさんの『アルザック』が、
1975年だと思うんですけどね、
僕が出会ったのは1980年ごろですが、
大変な衝撃を受けました。
それは私だけじゃなくて、
日本の漫画家たちが、全体が、大変な衝撃を受けたんです。
ただ残念なことに、僕が出会った時には、
自分の絵がずいぶん固まっていて、
彼の影響を本当に上手に自分の発展のうえに役立てることは
出来なかったんですが、
でも、メビウスさんの空間感覚は、
いまだに本当に魅力を感じています。
『ナウシカ』って作品は、
明らかにメビウスの影響によってつくられたものです。
 *『アルザック』は、1975年に雑誌「メタル・ユルラン」の創刊号に
 初めて掲載されました。
 フランスの漫画に革命を起こしただけでなく、
 世界中の漫画家に影響を与えたことで有名です。
 くわしくは以下の記事を参照してください。
 [『Arzach』(アルザック)解説

C'est vrai que quand j'ai vu
Nausicaa de la vallee du vent...
Ca prouve que l'influence
importe peu, au fond.
Ce qui compte,
c'est qu'il y ait eu une communaute,
une certaine
communaute d'inspiration
qui preexistait
a la rencontre consciente
et qui fait que
au-dela des cultures,
et au-dela du temps ou de l'espace.
on peut rencotrer quelqu'un
avec qui on se sent en phase.


メビウス:
私がはじめて『風の谷のナウシカ』を見た時、
影響関係がどうのこうのなんてのは、
どうだっていいことだと思いましたよ。本当にね。
それよりも、大切なことは、
この作者とは何かを共有しているんだ、という実感だったんです。
共通のインスピレーション、とでも言うか、
とにかくその共有感覚は、
実際に出会って意識するようになる前にすでに存在していて、
文化の違いだとか、時代の違いだとか、場所が離れているだとか、
そんな差を越えてしまっているものだと感じたんです。
人は、自分とまったくおなじ感覚を持つ誰かと、
出会うことが出来るものなんだな、と。

宮崎:
あぁ、なるほどね。

Moi, ce qui m'a frappe,
ce ne sont pas nos similitudes.
C'est qu'on puisse voir
des ressemblances
alors que tant de choses
nous separent.
Parce que, ce qui m'a toujours
frappe chez M.Miyazaki,
c'est le fait d'avoir ete
presque un chef d'entreprise,
un chef d'industrie.
Le cinema d'animation,
je sais que
c'est une entreprise industrielle
qui demande beaucoup de pouvoir,
puisqu'il faut emmener
jusqu'a 100, 150 ou 200 personnes...
Et moi, ce qui m'epate,
c'est la permanence et la qualite
de son inspiration
malgre cette lourde machinerie,
sur des anness et des annees.
Je trouve ca
absolument fantastique
et c'est la chose
que j'admire enormement.
Moi qui suis tout seul,
qui suis solitaire.


メビウス:
私の猿真似、なんてとんでもない話ですよ。
むしろ、ほとんど接点なんてあるはずがないのに、
自分とおなじ感覚を共有する仲間を見つけて、
本当にびっくりしました。
それだけじゃない、宮崎さんの作品を観るたびに驚かされるのは、
あなたが一企業の社長というか、
経営者のようなものも兼任しているという事なんですよ。
ひとたびアニメ映画をつくるとなると、
ひとつの企業のようなものを組織して、
それを運営して行くために、
とても多くの力量が必要となってくるものでしょう?
100人、150人、200人、とか、
とにかく多くの人間を統率して行かなくちゃならないはずだ。
そういった仕事をこなしながら、
あなたのインスピレーションは衰えることを知らない。
何年にも渡って良質の作品を創りつづけて来ていらっしゃる。
それは本当に、並外れて凄いことですよ。
あなたの仕事ぶりには本当に感心するしかない。
私はずっと一人で、孤独にやって来たから。
 *メビウスも多くの映画にデザイナーとして参加しています。
 『トロン』『エイリアン』『時の支配者』
 『フィフス・エレメント』などが有名でしょう。

宮崎:
いや、僕は、アニメーションの現場の、
工場の、工場長だと思ってやってるんです。
経営者という発想は全然ありません。
職工の職工長、職人の親分という、
そういう風な気持でやってます。
 *じつは、メビウスの発言中の「un chef d'industrie」というのは
 「工場長」と訳されてしかるべき語だと思うのですが、
 宮崎駿のこの発言と矛盾しないように、あえて訳してありません。
 おそらく同時通訳の人が「会社の経営者」という風に
 訳してしまったのだと思います。
 ちなみに、「職人の親分」というのは
 「patron d'artisans」(アルチザンのパトロン)と訳されているようです。

C'est interessant de savoir ca
car c'est un grand mystere.
L'autorite et le pouvoir
de M.Miyazaki
s'expriment d'une facon
invisible et magique.
Ca prouve que
d'une facon magique...
l'autorite et le pouvoir
de M.Miyazaki
s'expriment d'une facon invisible.


メビウス:
それはおもしろいですね。
でもちょっと分からないな。
私は、宮崎さんの作品には、
宮崎さんの影響力というか支配力のようなものが、
目には見えない、何か不思議な感じで、
ちゃんと表現されているように思うんです。
不思議な感じではあるけれど、確実に、というか、
目には見えない形で、
宮崎さんの影響力というか支配力のようなものが、
表現されていると思うんですよ。


[ 1 / 2 / 3 / 4 / 5 ]
◆ 抜粋動画その2

宮崎駿:
いや……。
 *仏訳では「Vous croyez?」
 (いえ、そんなことはないと思います)と訳されています。
 おそらく、宮崎駿のこの発言の前に、
 メビウスが宮崎駿を褒めまくっていたのではないかと思います。

Tout a l'heure, des questions
ont ete posees a M.Suzuki
pendant la conference de presse.
Il y avait une journaliste japonaise
qui disait que le film,
son dernier film
avait ete un peu critique au japon.
Et M.Suzuki a repondu
que M.Miyazaki aimait toujours
casser les systemes
sur lesquels il s'appuyait,
mais que sa preoccupation,
c'etait le public,
la satisfaction du public.
Il y a donc un melange d'aventure
et de souci du spectateur.


メビウス:
さっきも記者会見の場で、
鈴木プロデューサーが質問攻めに会っていましたよ。
日本人の記者がちょうどこの映画について訊いていたな。
「宮崎氏の最新作は、日本では、
 少々評判が良くないようですが?」と。
鈴木プロデューサーはこう答えていた。
「宮崎さんはつねに、
 固定観念を打破しようとしていますから。
 しかし、何よりも観客のことを第一に思っています。
 何よりも、映画を観れくれた人に満足してもらいたい、と
 思っているのです。
 だから、思い切って冒険したいという気持と、
 観客に分かってもらいたいという気持との間で、
 板ばさみになっているようです」と。

宮崎:
21世紀というのは、とても困難な、先が見えない時代なんです。
いままで自分達が当然だと思っていた色々な常識や考え方を、
ひとつひとつ検討し直さなければいけません。
それは、子供たちや、
エンターテイメントのお客さんたちに向う作品であっても、
今までこうだったから、あるいは、こうだから、
こういう悪役が出て来て、これをやっつければ良いんだ、
とかっていう風に、
簡単につくってはいけないという風に思っています。
一番大きな判断の基準は、
自分がこれで面白いと思うか、っていう。
面白くないからこれは止めた、って、
止めた止めた、ってやって行くうちに、
自分のスタッフもよく分からんっていう作品になってしまって、
私はとても困っているんです。

C'est vrai que son dernier film
est d'une grande complexite
dans les entrees
et les sorties des lieux,
sur l'age des personnages, etc.
Et d'une certaine facon,
ce qui est deroutant,
c'est que le temps consacre
a l'explication des choses
est legerement ampute.
Il y a plein de choses qui n'ont pas
d'explications dans le film.


メビウス:
なるほど、だからこそあなたの最新作は、
いろんな場所を行ったり来たり、
登場人物の年齢も変幻自在で、
とてもとても複雑なものになっているのですね。
で、その複雑さこそが作品全体の特徴になっているというか、
何が何だかよく分からない部分があるし、
いろいろな物事について説明しようとしているのに、
いまひとつ繋がりが悪かったりするのですね。
あの映画のなかでは、ほとんどの物事が、
ちゃんと説明されないままに終わってしまっている。

宮崎:
60歳になった少女のための、
60歳の少女のための映画だっていう風に……。
 *この発言の仏訳では、
 「私は、この映画は60歳の少女のための映画だと思っています」
 というように訳されています。

C'est genial!

メビウス:
ハッハッハッ、それはいい!
 *あんまりこういうことに訳注を挟まない方がいいとは思うのですが、
 メビウスは、『ハウルの動く城』の魅力は「une grande complexite」
 (大いなる渾沌)にこそある、と思っているようなので、
 宮崎駿が「60歳の少女」なんていう変なものの言い方で
 この映画の特徴を言い表わしたことに、笑っているのだと思います。

宮崎:
18の自分と60の自分とどこが違うんだろう、
少しも違わないんじゃないか。
90のおばあちゃんも、
私は18のときと少しも変わらないよ、
って言うのを聞いたんですよね。
つまり、若い18の少女、女性が、
呪いをかけられておばあちゃんになってしまった、
で、呪いを解けば若くなって幸せになれる、
という映画は、
私にはまったく納得できないんですよね。
つまり、呪い、呪いを解くというのはどういうことか、
っていう時に、
ただ若くなるんではない、
若いのが素晴らしいんじゃない、
じゃあ何が素晴らしいのか?
どうすれば主人公は幸せになるのか、
それを自分なりに必死に探した結果、
こういう映画になったんです。

C'est exact.

メビウス:
なるほど。

宮崎:
ハウルが何をやっているのか、
描く時間は無かったんです。
で、自分のスタッフに訊きました。
よく仕事のために帰りが遅くなってる男たちに訊きましたら、
自分の妻たちは、自分が何をしてるか何も知らないし、
関心も持とうとしていない(と答えたんです)。
じゃあ、ソフィーもハウルが何をしようとしているか、
関心を持たなくてもいいんだ、
っていう風に、そう思ってこの映画をつくったんです。
つまりハウルのことは描かなかったんです。

Au debut, le personnage
ressemble beaucoup
a des archetypes du manga japonais
pour jeunes filles.
Ces personnages avec des grands yeux
et des cheveux
qui tombent comme ca,
comme un rideau un peu mysterieux.
Pour a la fin, devenir tres enfantin.
A la fin...
il perd tous les attributs
vestimentaires heroiques,
et un peu arrogants,
et il devient
comme une jeune homme nu.


メビウス:
映画が始まったばかりの頃は、
そのハウルという登場人物は、
日本の少女漫画のステレオタイプそのもののような
描かれ方がされていますよね。
目がとても大きくて、
髪もちょっと秘密めかして、
ちょうどこんな感じに、
(と言いながらジェスチャー)
幕みたいに垂れ下がっている。
でも、話が進むとだんだん幼い感じになっていって、
映画の最後の方になると、
彼はヒロイックな衣裳を脱ぎ捨てて、
傲慢な態度も鳴りをひそめて、
はだか同然の、ただの一人の若い男になるんだ。

宮崎:
とても嬉しいです。



[ 1 / 2 / 3 / 4 / 5 ]
◆ 抜粋動画その3

Mais c'est vrai
que travailler sur des films,
faire des oeuvres abouties
avec un scenario soigneusement fait,
des sequences, de la musique...
C'est vraiment
une facon de rentrer
dans le luxe absolu
du metier de dessinateur.


メビウス:
 *たぶんメビウスのこの発言のまえに、
 宮崎駿の映画の制作方法について話していたのでしょう。
 そしてそのやり方に、
 メビウスはとても感心しているのだと思います。
しかし、だからこそ、
よく練られたシナリオや、エピソード、
すばらしい音楽を使って、
良い映画を何本もつくることが出来るんじゃないですか?
そういうやり方でやってこそ、
漫画家は真の贅沢を味わえるようになるというか、
本当の仕事が出来るようになるんじゃないでしょうかね。
 *メビウスの発言中の「le luxe absolu」というのが難しくて、
 直訳すると「すごい贅沢」というような意味になります。
 たぶん隠喩として、
 何か抽象的な意味を持たせてあるのでしょう。
 思い切って意訳しておきました。
 ただ、現場では同時通訳で会話しているのでしょうから、
 通訳の人も、ここは翻訳するのが難しかったのだと思います。
 つぎの宮崎駿の発言が、微妙にピントがずれているように思います。

宮崎:
上手く行ったときは贅沢するけど、
上手く行かないこともあるから、
とても不幸にもなりますね。

Est-ce que M.Miyazaki a traverse
des periodes de doute
au niveau de son travail?


メビウス:
宮崎さんも、自分の仕事について、
迷ったりする時があるということなのですか?

宮崎:
いつもそうです。

C'est vrai? C'est fou, ca.

メビウス:
本当に? 信じられないな。

宮崎:
スタッフが、
この映画分からない、って言うと、
僕は床が無くなったような気分になります。
その度に。

Par exemple,
quand j'ai vu Princesse Mononoke,
mais surtout
Le Voyage de Chihiro,
ce qui m'a frappe,
c'est que je ne voyais pas
un producteur,
aucun producteur dans le monde
accepter le scenario.


メビウス:
たとえば、『もののけ姫』や、
とくに『千と千尋の神隠し』を観たときなんかには、
本当にびっくりしましたよ。
まさか、あんなとんでもないシナリオに
ゴーサインを出すプロデューサーが、
この世に存在していたなんてね。

宮崎:
彼は反対はしませんから、
時間に間に合うようにつくれ、と言いますけど……。

Ah, d'accord.
Mais s'il avait travaille
pour Disney,
il n'aurait jamais
reussi a faire ca,
meme pas Nausicaa.


メビウス:
なるほど。
ディズニーなんかじゃ考えられないでしょうね。
そんなプロデューサー、
とてもじゃないが受け容れられないでしょう。
とくに『ナウシカ』なんて、
つくるのは絶対に無理だったでしょうね。

 *メビウスは、ディズニーのCG映画『トロン』に
 デザイナーとして参加しています。
 また、メビウスと宮崎駿は、
 日米合作の映画『ニモ』の製作に参加していますが、
 この映画の製作にはディズニーの人間も参加していて、
 映画自体もディズニーを意識した形で製作されたようです。
 くわしくは以下の記事を参照してください。
 [『リトル・ニモの野望』解説

宮崎:
討議をして映画をつくるのは不可能です。
僕は、スタッフと討議をして映画をつくることは出来ません。
こういう風にします、と言うしか、出来ません。

Mais je trouve que cette confiance,
c'est ce qui nourrit un peu
le travail de M.Miyazaki
et qui fait que c'est unique,
au niveau du cinema.


メビウス:
そういう信頼関係があるからこそ、
宮崎さんは安心して良い作品をつくることが出来るし、
それこそが、
宮崎さんの映画が真にユニークなものであることの、
本当の理由なんじゃないかと思いますね。
 *原文の「comfiance」(信頼、信用、自信)は、
 DVD収録版では「自信」と訳されています。

宮崎:
いや、僕はまだ、『ハウルの動く城』については、
結論は出ていないと思います。
お客さんたちが、本当に、どういう気持を受け止めたのか。
じつは僕は、映画評論をぜんぜん読まない人間なもんですから、
何を言っているのか、あんまり関心が無いんですけれども、
観客がどういう気持を持ったのかは、非常に関心がありますね。
それはまだ答えが出ていません。



《注》
以下の記事に続きます。
メビウス&宮崎駿対談動画:文字おこしと全和訳2


本展関連の他の記事については、
以下の記事を参照してください。
「宮崎駿―メビウス」展関連記事インデックス
訳文の改定にあたって、
『ハウルの動く城』特別収録版DVD収録の字幕を参照しています。
『ハウルの動く城』DVDレポート(メビウス関連のみ)

[ 1 / 2 / 3 / 4 / 5 ]
by moebius-labyrinth | 2004-12-30 08:38 | メビウスの子孫たち
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