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ライフログ
エンキ・ビラルと荒木飛呂彦 ~リトル・フィートは誰がつくったか?
今回はメビウスとはまったく関係ない話です。
日本の漫画家荒木飛呂彦と
フランスのバンド・デシネ作家エンキ・ビラルの関係について、
ちょっと面白い例があるので、
紹介してみたいと思います。
 *「バンド・デシネ」とはフランスの漫画のことです。
 「メビウス」はバンド・デシネ作家の名前です。
 くわしくは以下の記事を参照してみて下さい。
 [基本用語解説
 [メビウスをはじめて知った方へ~宮崎駿との対談に寄せて


◆ 荒木飛呂彦とバンド・デシネ
日本漫画界の奇才と呼ばれる荒木飛呂彦。
僕も好きな作家ですが、
彼もまた、バンド・デシネを愛好する一人のようです。
荒木飛呂彦自身が自分の単行本へのあとがきの中で、
バンド・デシネについて触れている箇所があります。
[引用者注:故郷の仙台から東京に出てきたことについて]
 そして今、思い返すと、
上京して良かったと思う点しかあがらない。
[中略]
フランク・フラゼッタとかエンキ・ビラル、
アントニオ・ロペスといった画家は、
本当に好きになった。
[荒木飛呂彦『バオー来訪者』(2000年6月21日、集英社文庫)。
 文庫版に寄せられた「あとがき」より。
 引用に際して適宜改行を挿入した。
 引用は2000年7月29日発行の第2刷による]

まずは、ここに上げられている人名について
簡単に解説を加えておくことにしましょう。

 ◆ フランク・フラゼッタ
Frank Frazettaは、アメリカのファンタジーアートの巨匠です。
筋骨隆々な男たちのヒロイックな絵で知られています。
● フランク・フラゼッタ公式サイト
  「Gallery Store」「Featured Art」で作品を観ることが出来ます。
  サムネイルはクリックで拡大。
● 「幻想資料館」内「幻想美術館>フラゼッタ, フランク」
● 「テクノドローム」内「Frank Frazatta」
● 「UNOFFICIAL Frank Frazetta Fantasy Art Gallery」
● 「The Art of Frank Frazetta」
とくに最後の二つのリンクで大量に画像を観ることが出来ます。
「テクノドローム」さんの「リンク」で紹介されているものです。

 ◆ エンキ・ビラル
Enki Bilalは、メビウスと並んで
バンド・デシネ界でもっとも有名な作家です。
スタイリッシュかつジャンキーな未来都市の絵で知られています。
大友克洋も影響を受けた作家として名前を挙げていて、
雑誌で対談を行ったりもしています。
その他にも影響を受けた漫画家は多く、
日本の漫画に多大な影響を与えています。
● エンキ・ビラル公式サイト
  ビラルの主要作品を出版しているフランスの出版社
  LES HUMANOIDES ASSOCIES社が用意している公式サイトです。
  フランス語は特殊なフォントを使用する必要があるので、
  そのままでは文字化けしてしてしまうかもしれません。
  僕の環境では文字コードを「西欧(ISO-8859-1)」に設定することで
  解消できました。
  ページ最下段がメニューになっています。
  「32 Decembre」(12月32日)はビラルの最新作の題名です。
  ポイントするとその下に「Extraits」(抜粋)と出て来るので、
  クリックしてください。同作の画像紹介ページに移ります。
  サムネイルのクリックで画像が現れます。
  サムネイルの上の「cases」(一コマ分の画像)
  「planches」(ページ全体の画像)をクリックすると、
  さらに多くの画像を観ることが出来ます。
  ページ最下段の「Galerie」(ギャラリー)も
  ポイントして見てください。
  「Fonds d'ecran」(壁紙)
  「Christian Desbois」(出版社クリスチャン・デスボワ社商品紹介)
  「Autres Oeuvres」(他作品)
  をそれぞれクリックすると、画像を観ることが出来ます。
  移った先のページのなかのリンクをクリックしてください。
  さらに、「Enki Bilal>l'atelier」「Galerie>Graphic Stories」
  では、ビラルのアトリエの様子や作品の動画まで用意されています。
  移った先のページのなかの
  「real 56k」(動画ナローバンド用)
  「real 256k」(動画ブロードバンド用)をクリックしてください。
● アマゾン日内エンキ・ビラルの邦訳書一覧
  邦訳版は現在4冊が刊行されています。
  バンド・デシネの単行本は
  日本の「漫画」のものにくらべると驚くほど高価ですが、
  基本的にフルカラーでストーリーも高尚なものが多く、
  価格に似合った内容になっています。
  バンド・デシネに「漫画」の常識を押し付けるのは
  おすすめ出来ません。
  漫画の単行本としてではなく、
  画集、美術書を買う感覚で手に取って見て下さい。
  大型図書館などでは架蔵しているところもあります。
● 出版社LES HUMANOIDES ASSOCIES社公式サイト内ビラルのビブリオグラフィー
  右側のフレームのなかのテキストがビラルの作品一覧です。
  それぞれクリックすると作品紹介のページに移ります。
  (「Pierre Christin」は共作者の名前なので注意して下さい)
  移った先の作品紹介ページのなかの、
  左側上から2段目、「Images」とあるところをクリックしてください。
  右側のフレームで作品の画像が紹介されます。クリックで拡大。
● Les Humanoides Associes社サイト内『不死者のカーニバル』
● Les Humanoides Associes社サイト内『罠の女』
● Les Humanoides Associes社サイト内『冷たい赤道』
● Les Humanoides Associes社サイト内「ニコポル三部作」合冊版
  ビラルの代表作、「ニコポル三部作」の画像紹介ページです。

 ◆ アントニオ・ロペス
Juan Antonio Lopez(ファン・アントニオ・ロペス、
ホアン・アントニオ・ロペス)は
スペインのファッション・デザイナーです。
実際に絵を見れば分かりますが、「そのまんま」な画風です。
● アントニオ・ロペス公式サイト
  「ENGLISH」をクリックで英語版のページへ。
  「lookbook>右に現れるテキストのうちいずれか」
  「gallery>右に現れるテキストのうちいずれか」
  で、作品の写真を見ることが出来ます。
  とくに靴のデザインで知られているデザイナーのようで、
  彼がデザインした靴の写真が多数紹介されています。
● 「Smithsonian Center for Latino Initiatives」内「Latino Virtual Gallery>Exhibitions>Antonio: 25 Years of Creative Collaboration>ENTER」
  どうやらアントニオの展覧会のページのようです。
  「Time & Place>NEW YORK」と辿ってみて下さい。
  びっくりすること請け合い。
● 同上内「Time & Place>NEW YORK」
  うはー! まんまや。荒木先生、そのまんまやないですかっ!
  紛(まご)う方なきジョナサン・ジョースターです。
● 「modaEspana」内「プレスルーム>ニュース>過去のニュース>2004年10月29日. スペインシューズ界の才能」
● 同上内「2005年3月30日. ニューヨークで発表されたクスト・バルセロナ最新コレクション、ホアン・アントニオ・ロペスによるシューズ」
  日本語による解説としてはここが一番分かりやすいと思います。
● 「バーチャル独裁者・総統ちゃん7歳」内「オレのケツを拝め! Part.3」
  荒木飛呂彦とアントニオ・ロペスについては
  ここが一番まとまっていると思います。
  それにしても、まんまや。

さらに、荒木飛呂彦とバンド・デシネの関係については、
次のような例も見逃せないでしょう。

 ◆ パリの「荒木飛呂彦」展
フランスでは漫画は芸術の一種として認知されています。
そのためか、作家の個展や展覧会が頻繁に開かれています。
また、日本の「漫画」への関心もつよく、
フランス漫画界最大のイベント、
アングレーム国際ベデ・フェスティバルには、
手塚治虫、鳥山明、大友克洋、
谷口ジローなどが招待されたことがあるほか、
日本の「漫画」の仏訳版なども人気があるようです。
このような背景があってか、
荒木飛呂彦がパリで個展を開いたことがあるようです。
● 「アットマーク・ジョジョ」内「2003/04/15, ★『JOJO IN PARIS』!! 荒木飛呂彦先生の個展がフランスのパリで開催中」
上記のページで同展のサイトも紹介されています。
● 「Galerie Vedovi」内「Paris>Click here to see last exhibition>JOJO IN PARIS」
ページ下部の紹介文のなかから、
とくにバンド・デシネに関係する箇所を訳しておきましょう。
Hirohiko ARAKI a ete tres inspire par [中略]
autres bandes dessinees (Corto Maltese)

荒木飛呂彦氏は、(日本の先行作家のほか、)
バンド・デシネの作家たち、
とくに「コルト・マルテーゼ」シリーズ等から
影響を受けている。

「コルト・マルテーゼ」はウーゴ・プラット(Hugo Pratt)の代表作で、
一匹狼の船乗りコルト・マルテーゼが世界中を旅する、という物語です。
単体の作品の名前ではなく、複数の作品のシリーズ名です。
● 「コルト・マルテーゼ」公式サイト
  音が鳴るので注意して下さい。
  ページの上の方、横長の画像の下のテキストがメニューです。
  笑っちゃうくらい重いので、僕はまだ内容を確認していません。
  一応メニューを訳しておくと、以下のようになります。
  「HUGO PRATT」(ウーゴ・プラット:作者)
   「ACTUALITES」(ニュース)
   「BIOGRAPHIE」(バイオグラフィー)
   「BIBLIOGRAPHIE」(ビブリオグラフィー)
  「CORTO MALTESE」(「コルト・マルテーゼ」)
   「ACTUALITES」(ニュース)
   「LES ALUBUMS」(各巻紹介)
   「LES PERSONNAGES」(キャラクター紹介)
  「AUDIOVISUEL」(映画・テレビ)
   「CINEMA」(映画)
   「SERIE TV」(テレビシリーズ)
   「MUSIQUE」(BGM)
  どうやら同作は映画化だけでなく
  テレビ作品にもなっているようです。
● 出版社Casterman社公式サイト内「コルト・マルテーゼ」のページ
  2ページ目もあるので注意して下さい。
  ページ最下段の「page suivante」(次ページへ)をクリックすると、
  2ページ目に移ります。
  ページの下の方のピンク色のコーナーのなかのテキストが、
  同シリーズの各巻のタイトル名です。
  それぞれをクリックすると各巻の紹介ページに移って、
  表紙と内容の画像が1ページ分紹介されています。
  サムネイルはクリックで拡大。
● 「BD NET」内「コルト・マルテーゼ」のページ
  フランスの漫画専門オンライン書店のサイトです。
  全部で6ページあります。
  ページ最上段にアラビア数字で各ページのインデックスがあるので
  それで移動してください。
  ページの中の表、一番右側にあるテキストが画像へのリンクです。
  「Couverture」(表紙)、
  「Voir une page」(1ページ分の画像を見る)で、
  表紙と内容の画像を1ページ分観ることが出来ます。
● 「BULLEDAIR」内「コルト・マルテーゼ」のページ
  サムネイルをクリックすると各巻の紹介ページに移ります。
  各巻の紹介ページでは、表紙画像のほか、
  その下にあるサムネイルをクリックすることで
  内容の画像を1ページ分観ることが出来ます。
たしかに「コルト・マルテーゼ」は比較的有名な作品ではあるのですが、
フランス語の読めない荒木飛呂彦が
(多分読めないと思います。僕もぜんぜん読めませんが)
邦訳版はおろか日本ではほとんど紹介もされていない同作の影響を
どれほど受けているのか、
個人的には少々疑問に思うところです。
展覧会のサイトに記載されている紹介文も
ざっと目を通してはみたのですが、
どうも、「コルト・マルテーゼ」については、
「ジョジョの奇妙な冒険」の登場人物空条承太郎との見かけ上の類似から、
画廊の人間が勝手に影響関係を設定しているのではないか、
という印象をぬぐい切れません。
もう少し確実な資料を待ちたいと思います。
それよりも、今回はエンキ・ビラルに注目してみましょう。


◆ エンキ・ビラルとリトル・フィート
荒木飛呂彦自身も
好きなアーティストとして名を挙げるエンキ・ビラルですが、
作品そのものを見てみても、
両者の影響関係をうかがわせる興味深い例があります。
XB2-1XB2-2
リトル・フィート1リトル・フィート2
一つ目に挙げたのは、エンキ・ビラルの代表作
『La Foire aux Immortels』(不死者のカーニバル)
(1980年7月、Dargaud社。
 邦訳版は貴田奈津子訳、2000年11月30日、河出書房新社。
 引用は邦訳版による。
 なお、フランスの漫画は基本的に単行本書き下ろしで発表される)
に登場するロボット「XB2」です。
二つ目に挙げたのは荒木飛呂彦の代表作、
『ジョジョの奇妙な冒険 第50巻』
(1996年11月6日、集英社。
 引用は2001年7月18日発行の第20刷によった。
 なお、雑誌初出時期については調査が及ばなかったが、
 おそらく1996年と思われる)
『ジョジョの奇妙な冒険 第51巻』
(1997年2月9日、集英社。
 引用は2000年9月19日発行の第15刷によった。
 雑誌初出時期は同様に1996年と思われる)
に登場する「スタンド」というキャラクター
「リトル・フィート」です。
 ● 「SPW財団新ジョジョ研究部署」内「スタンド大解析」
 (>ラ行のスタンド>リトル・フィート)
そっくり、と言うか、
ほとんどそのままデザインを借りて来ているという感じです。
その他にもエンキ・ビラルの同作には
エジプトの神の姿をしたエイリアンが出てきて、
(先に挙げたリンクを参照して見てください)
これも「ジョジョの奇妙な冒険」第三部に登場するスタンド
「エジプト九栄神」との類似を想起させますが、
これはまあ、元ネタが同じということなのでしょう。

これらの例をもって、
荒木飛呂彦のパクリとするのは野暮というものでしょう。
荒木飛呂彦は、エンキ・ビラルとはまた異なった
独自の境地を切り拓いているからです。
キャラクター達の今にも動き出すかのような独特のポージング、
表情豊かな顔の表現、
大衆娯楽作品としての親しみやすさを具えながら
「スタンド」「波紋」という独自のアイデアによって
ヒネリを効かせたストーリー。
これらの特徴は、
エンキ・ビラルの作品にはまったく見られない優れた特徴です。

反対にエンキ・ビラルの作品は、
日本の「漫画」からは想像もつかないほど高尚なストーリーと、
完成度の高い絵を具えています。
とくにその絵の素晴らしさは、
日本の漫画家にも多大な影響を与えていると言われています。
日本の「漫画」のなかでは、
荒木飛呂彦の作品は比較的ビジュアル表現に重点をおいている
と思うのですが、
そこには、こういったバンド・デシネの影響が一因としてある、
とするとさすがに深読みのしすぎでしょうか。
ともあれ、バンド・デシネから「漫画」への影響の
生きた例として、メモしておきたいと思います。

《追記》
どうやら、「ジョジョの奇妙な冒険」第三部に登場するスタンド
「マジシャンズレッド」も、
エンキ・ビラルの「ニコポル三部作」の登場人物ホルスから
デザインを借りて来ているようです。
● 「アットマーク・ジョジョ」内「2005/04/09, 『エンキ・ビラルと荒木飛呂彦』」
「ホルス」というのは、「ニコポル三部作」全編を通して登場する
エイリアンの名前で、エジプトの神ホルスの姿をしています。
主人公ニコポルに乗り移って未来社会の転覆をはかります。
ニコポルは右足の膝から下を切断された姿で登場するのですが、
ホルスは目から熱線を出して電車のレールを切り取り、
ニコポルに義足を作ってやったりします。
ホルスに関しては、
僕はてっきり「元ネタがたまたまおなじエジプトの神だった」
くらいにしか認識していなかったのですが、
きっちりフォローを入れていただくあたり、さ、さすがです。
シャトレーゼ紅威さん!
あなたの命がけの行動ッ!
ぼくは敬意を表するッ!
ホルスとニコポル
ホルス
マジシャンズレッド
上記画像、一つ目は『La Foire aux Immortels』(不死者のカーニバル)
(1980年7月、Dargaud社。
 邦訳版は貴田奈津子訳、2000年11月30日、河出書房新社。
 引用は邦訳版による)
から、主人公のニコポル(宇宙服を着て右足が切断されている男)と
エイリアンのホルス(鳥の頭をした裸のキャラクター)です。
背景に描かれているポスターの絵には
実写の写真がコラージュで使われていたりします。
二つ目も同書より、
ニコポルの右足の代わりになる義足をつくるために
目から光線を出して電車のレールを焼き切っているホルスです。
三つ目は、
集英社文庫版『ジョジョの奇妙な冒険 13』
(荒木飛呂彦、2002年8月14日 集英社)
より、炎で電車のレールを焼き切ったマジシャンズレッドと
アヴドゥルとジョセフ・ジョースターです。
(「『バステト女神』のマライア その5」の一コマです)
さすがにこの類似はただの偶然だと思いますが、
オマケとして提示しておきます。


アントニオ・ロペスに関しては
「▼CLick for Anti War 最新メモ」の九郎正宗さんに教えて頂きました
当初は、スペインの画家、アントニオ・ロペス・ガルシアとしていましたが
これは、スペインのファッション・デザイナー
ファン・アントニオ・ロペスの間違いでした
大変失礼しました
くわしくは[『ARZACH』下訳その29]のコメント欄を
参照してください

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by moebius-labyrinth | 2005-03-23 19:16 | - 番外篇 -
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