宮崎駿の『風の谷のナウシカ』にも影響を与えた、
フランスの漫画『Arzach』の和訳です。
[
『Arzach』(アルザック)解説]
[
メビウス&宮崎駿対談動画:文字おこしと全和訳1]
LORSQU'ON S'ENGAGE DANS CE TYPE DE TRAVAIL,
LES VANNES DE L'ESPRIT S'OUVRENT SOUDAIN,
LAISSANT APPARAITRE LES FORMES, LES IMAGES,
LES ARCHETYPES QUE L'ON PORTE EN SOI.
DANS LA PREMIERE IMAGE, PAR EXEMPLE,
LA TOUR GIGANTESQUE EST UN SYMBOLE PHALLIQUE EVIDENT,
DE MEME QUE LE CHAPEAU D'ARZACH
ET QUANTITE D'AUTRES FORMES DISSEMINEES DANS CES PAGES.
NATURELLEMENT, CELA N'A RIEN DE DELIBERE,
JE NE ME SUIS PAS ASSIS DEVANT MA TABLE EN ME DISANT :
《TIENS, JE VAIS FAIRE UN TRUC DANS LE GENRE PHALLIQUE,》
C'EST ARRIVE PLUS SUBTITLEMENT.
ひとたびこういったタイプの物語に入り込むと、
心の扉がとつぜん開かれて、
自分のなかに眠っていたもやもやしたものや、
イメージや、普遍的な何ものかが、
だんだんと形を成してくることに気が付くはずだ。
たとえば、「アルザック」第一話の扉絵を観てほしい。
ここに描かれている巨大な塔は、あきらかに男根の象徴だ。
ほかにも、アルザックの帽子や、
物語のなかに出てくる色々な物についても、
同じことが言えると思う。
もちろん、こういった事に
ちゃんとした答えが用意されているというわけではない。
「さて、これは男根の象徴として描いておこうかな」
なんてことを言いながら、
机に向って絵を描いてるわけじゃないからね。
そういうのは、もっと密かにやって来るものさ。
《付記》
下訳なので、ちょっと詳しく注記しておきたいのですが、
この文章には精神分析学の用語がいろいろと出て来ています。
前回の下訳その4の分とあわせて挙げてみるなら、
以下のようになります。
CONSCIENCE:意識
L'INCONSCIENT:無意識
FRANGE DE L'INCONSCIENT:「FRANGE DE LA CONSCIENCE」
(識閾/しきいき)からの連想か。
ARCHETYPE:元型(げんけい)
SYMBOLE PHALLIQUE:男根の象徴
あと、用語ではありませんが、
無意識のなかに「ELEMENTS ONIRIQUES」(夢の材料)がある、
という文章も、精神分析学を思わせます。
もちろん精神分析学の用語として厳密に使われているわけではなくて、
どちらかと言うとオカルト的に、
「この物語には深い意味が込められているんだよ」
ということを言いたいだけだと思うので、
一般的に定められている訳語にはこだわらずに、
「元型」はあえて意訳しておきました。
原文中に「LA PREMIERE IMAGE」(一番最初の絵)とありますが、
これはおそらく、
「アルザック」がはじめて
ベデ雑誌「メタル・ユルラン」に発表されたときの、
第一話の一番最初の絵のことを言っているのだと思います。
現行のアルバム(Nouvelle edition, ISBN:2731614080)で言うなら
21ページに相当すると思われます。
([
『Arzach』(アルザック)解説])
● 「MOEBIUS Fatal」内『アルザック』の紹介ページ
● 「BD oubliee」(忘れさられたベデ)の「Arzach dans Metal Hurlant」
上記リンクの、左上に白く「ARZACH」と書かれていて
翼竜に乗ったアルザックが塔に向って飛んでいる絵が、
それです。
たしかに「巨大な塔」(LA TOUR GIGANTESQUE)が描かれています。