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メビウス、『メトロポリス』を語る:その2
フランスのアニメ専門誌「AnimeLand」の公式サイトで公開されていた、
メビウスの『メトロポリス』評の訳です。
この記事にはインタビューの後半が収められています。

かなり長い記事になってしまったので、
他の関連記事については以下のインデックスを参照してください。
目次:メビウス、『メトロポリス』を語る


◆ インタビュー対訳:後半
AL:
Pour ainsi dire,
c’est un peu aussi la dream-team de l’animation japonaise
que l’on retrouve au générique de ce film,
et avec, pour tous, un même esprit humaniste dans leurs créations.
アニメランド:
映画のクレジットタイトルを観てみると、
これは本当に日本のアニメのドリームチームですよね。
しかも、どの作家の作品にもおなじヒューマニズムの血が流れている。

M: Oui,
c’est pour cela
que je pense que ça n'est pas le film d’un seul auteur,
ou même d’un groupe d’auteurs,
mais plutôt le film du Japon, d’un peuple,
qui est rentré dans la modernité
par une voie que l’on ne connaît pas, dont on a pas idée.
Il y a un livre, qui s’appelle Le choc des civilisations,
qui est le résultat d’une recherche approfondie
qu’on trouve dans la tradition anglo-saxonne,
qui consiste à essayer de décoder l’Histoire du monde,
à apposer des grilles de perceptions
qui ne soient pas « nationales » mais « extra-terrienne ».
A ce niveau,
les Japonais sont un peu les Anglais du troisième millénaire.
Et cela se voit dans leurs créations.
Ils ont expérimenté ce que seront les problèmes de la planète,
car d’une certaine manière la Terre est une île,
entourée du vide sidéral,
qui est une mer beaucoup plus difficile à traverser qu’un océan.
On est dans un ordre croissant
d’isolement et de difficulté qui est phénoménal.
Quelque part, dans cette perspective des civilisations,
on voit que ce qu’on appelle la civilisation occidentale
(même si on est toujours les occidentaux de quelqu’un)
a ouvert la boite de Pandore du développement technologique et laïque,
et toutes les autres civilisations de la planète sont
confrontées à ce problème que nous avons créé.
C’est ça qui est troublant et excitant quand on observe,
non pas le Japon, mais le regard que pose le Japon sur le monde,
surtout à travers des auteurs populaires.
Ils portent sur le monde un vrai regard,
ils s’approprient l’Histoire du monde
comme quelque chose que l’on peut légitimement explorer.
Chose que les autres civilisations n’ont pas expérimenté.
On n’a pas encore vu d’histoire
par exemple qui serait racontée par l’Islam
et qui prendrait des blancs comme vecteur d’humanité.
Nous on peut faire cela,
comme KIPLING l’a fait avec le Livre de la Jungle,
et raconter une histoire avec un indien dans une forêt
qui devient un mythe fondamental et mondial.
Les Japonais n’ont, de fait, aucun complexe,
ils prennent cette attitude,
qu’ils considèrent comme une attitude de maître de Jeu
et ils la jouent sans la moindre peur, sans complexe.
Ce qui leur permet de faire des histoires de mousquetaires,
avec un sens du détail très approximatif, une fantaisie certaine,
mais en tout cas un sens de l’universalité confondant.
On retrouve cette même démarche
dans la façon d’aborder les thèmes de Métropolis.
メビウス:
そう。でも単にチームというだけじゃないよ。
僕は、この作品には、
西洋人が思いも付かないやり方で近代化を果たした
日本という国や人々の姿が刻印されていると思っているんだ。
特定の作家には還元できない何かがある。
『文明の衝突』という本は読んだ?
いかにもアングロ・サクソンらしい詳細な調査に基づいて、
世界の歴史を分析しようとしているものだ。
“国家”という枠組みをはなれて、
“超地球的”な視野から世界を読み解こうとしているこの本に従うなら、
日本人はさながら、新世紀のイギリス人の観を呈していると思うんだ。
当然、彼らの作品にもそういった性質が反映している。
地球というのは、いわば虚空に浮かぶ一つの島のようなものだろう?
他の星々とのあいだには、
行く手を阻む大海原という名の宇宙が横たわっている。
そういう意味では、島国日本は、
世界がこれから直面する問題をすでに経験してしまっている国とも言える。
世界は孤立化が進んでいる。
どうしようもない困難も増すばかりだ。
『文明の衝突』のなかで、
西欧文明
(もっとも、どこを基準に「西」と言うかによるけれど)
が技術の発達と世俗主義というパンドラの箱を空けてしまって以来、
世界中の他の文明のすべてが、
我々西洋人の引き起こしたこの問題に直面するようになってしまった、
という一節があっただろう?
日本という国を世界とのかかわりのなかで観察してみると、
このことがよく分かるよ。
とくにサブカルチャーの作家を通して観てみるとね。
とても興味深くて、なおかつ厄介な問題だ。
日本人は透徹した目で世界を観ている。
世界の歴史を一国で体現している国でもある。
だから、日本を分析することは、世界の歴史を分析することでもあるんだ。
他の文明ではこうは行かない。
たとえばイスラム文明からは、
白人にヒューマニズムを教えてもらう、
なんて物語は生まれて来ていないよね。
西洋にはキプリングの『ジャングル・ブック』がある。
森に住むインド人の物語で、
人間の本質を描き出した、普遍的なお話に仕上がっている。
思うに、日本人には一切の気負いというものが無いんだと思う。
達観とでも言うのかな、
とにかく少しのためらいも無く軽やかに遊んでみせる感性。
そういう姿勢を持っているから、
日本人は、たとえば戦争を描くときなんかも、
細部の詰めがおそろしく大雑把で現実離れしているにもかかわらず、
おどろくほど普遍性をもった作品を描き得てしまうんだと思う。
『メトロポリス』のテーマの扱い方にも同じことが言えるよね。
 *『文明の衝突』と『ジャングル・ブック』については、
 以下の記事を参照してください。
 [訳注『メトロポリス』:『文明の衝突』『ジャングル・ブック』...
 (の引用とメビウスの日本論 - その1)
 *「anglo-saxonne」(アングロ・サクソン)は、
 イギリスやアメリカの文化を指す語です。
 欧米の文化はおおまかに、
 大陸系(フランスなど。理論を重んずる合理主義の文化)と
 イギリス系(アメリカも含む。実践を重んずる経験主義の文化)の
 二つに分けられることがあります。
 『文明の衝突』は多くの具体的な調査にもとづいた本なので、
 こう言われているのでしょう。

AL:
Il faut dire aussi
que la particularité des manga est
de se pencher beaucoup sur les personnages et leurs psychologies.
アニメランド:
キャラクターや心理描写を重視するのも、
日本の「漫画」の特徴なんじゃないでしょうか。

M:
Oui mais pour en arriver là,
cela dénote une libération pour être à même de considérer
que rien de ce qui est humain ne nous est étranger,
peu importe les critères de civilisation,
la morale, les religions, les couleurs de peaux.
Et cela c’est vraiment la leçon de ces peuples.
メビウス:
そうだね。でもそれを言うなら、
僕たちだって、ヒューマニズムを学ぶべき立場なのかも知れない。
文明の違いだとか、モラルの違い、
宗教や、肌の色の違いなんて関係ないんだよね。
そういったことは、僕たちが日本人から学ぶべきことなんだ。

AL:
Au niveau des références du film,
il y a un véritable jeu permanent tournant au jeu de piste
par rapport à
tout ce que l’on peut voir d’écrit sur les murs de Métropolis.
アニメランド:
この映画にはいろいろと出典があるようですが、
街の壁に落書きがしてあったり、
サウンド・トラックにお遊びがあったりと、
いろいろと面白い試みがなされているようですね。
 *落書きとサウンド・トラックについては、
 以下の記事を参照してください。
 [訳注『メトロポリス』:落書きとサウンド・トラック

M:
Oui, d’ailleurs
dans une des phases de la découverte de son expression par Tima,
elle écrit le nom de son aimé sur tous les murs de sa chambre.
Ca veut dire
que l’écriture, le hiéroglyphe manifesté est
porteur du fond d’elle même.
Il y a une allusion également à Victor HUGO
et au personnage de Gavroche avec le personnage d’Atlas,
chef de la révolution.
On voit le tableau de DELACROIX,
« La Liberté guidant le Peuple » à un moment dans le film.
Rendez vous compte quelle connaissance,
et quelle générosité il y a,
dans l’acceptation que d’autres aient pu lancer
au monde des symboles valables.
Comment aussi
les Japonais ont ils « osé » s’emparer du mythe de BABEL ?
C’est magnifique d’avoir osé ça !
Comme on retrouve aussi l’image du Che Guevara en divers endroits.
On voit bien que Métropolis, c’est une leçon aussi.
C’est une très grande leçon pour nous occidentaux
de voir comme ça paie d’ouvrir son regard
sur une perception planétaire.
Enfin !
メビウス:
そうそう。
ティマが、自分の気持ちを表わそうとして、
自分の部屋の壁一面に愛する人の名前を書く場面もあったよね。
書かれた文字が彼女の内面そのものを表わしているんだろう。
革命の主導者のアトラスが、
ヴィクトル・ユゴーのガヴローシュを思わせる場面もあった。
ドラクロワの『民衆を導く自由の女神』が出てくる場面もあったよね。
こういったシンボルにちゃんとした意味を読み取れるかどうか、
観る側の豊かな教養が期待されているんだと思うよ。
それにしても、まさか日本人が、
バベルの神話を我が物にしてしまうとはね!
すばらしい。
チェ・ゲバラのイメージも何回か出て来ていたな。
もちろんフリッツ・ラングの『メトロポリス』も意識しているはずだ。
ラングの『メトロポリス』が1927年、
日本の『メトロポリス』が2001年だから、
人々が世界的な視野を得るのにこんなにも長い時間がかかったことになる。
このことからも、僕たち西欧人は多くのことを学ぶべきだと思うね。
 *ここで挙げられている「出典」(des références)については、
 以下の記事を参照してください。
 [訳注『メトロポリス』:ティマが部屋の壁一面に愛する人の名前を...
 [訳注『メトロポリス』:アトラスとユゴーのガヴローシュ
 [訳注『メトロポリス』:ドラクロワの『民衆を導く自由の女神』
 [訳注『メトロポリス』:バベルの神話
 [訳注『メトロポリス』:チェ・ゲバラ
 [訳注『メトロポリス』:フリッツ・ラングの『メトロポリス』




目次:メビウス、『メトロポリス』を語る
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by moebius-labyrinth | 2006-11-15 22:30 | メビウスの子孫たち
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