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ライフログ
カテゴリ:メビウスの子孫たち( 95 )
訳注:『メトロポリス』の落書きとサウンド・トラック
「メビウス、『メトロポリス』を語る」の訳注です。
他の関連記事については以下のインデックスを参照してください。
目次:メビウス、『メトロポリス』を語る


◆ 落書きとサウンド・トラック

 ◆ 原文と問題点
インタビュー原文を直訳とともに挙げておきます。

AL:
Au niveau des références du film,
il y a un véritable jeu permanent tournant au jeu de piste
par rapport à
tout ce que l’on peut voir d’écrit sur les murs de Métropolis.
アニメランド:
映画の諸々の出典についてですが、
人々がメトロポリスの壁のうえに書かれたものを見ることができる
こと全てとの関連で、
サウンド・トラックのうえで
ひっきりなしの本当の遊びがあります。

要点は三つです。

 1, 壁の落書き
 2, サウンド・トラックのお遊び
 3, 落書きとサウンド・トラックのお遊びとの間に関連がある

1については、
メトロポリスの地下世界の諸所で落書きを見つけることが出来ます。
2の「jeu de piste」(サウンド・トラックのお遊び)については、
『I Can't Stop Loving You』と
([訳注『メトロポリス』:『I Can't Stop Loving You』])
ジャズ風のBGMをおもに挙げることが出来るでしょう。
問題は3で、
「par rapport à」(~に比べて、~との関連で)を
どう解釈するかによるのですが、
アニメランドのインタビュアーは、
落書きとサウンド・トラックのお遊びとのあいだに
「rapport」(関係)があると言っています。
これがよく分かりません。

 ◆ ジャズ風のBGMとスタイルの使い分け
まず、ジャズ風のBGMについて確認しておきましょう。
本作の音楽は
本多俊之という有名なジャズ・ミュージシャンが担当しています。
● ウィキペディア日内「本多俊之」
● 本多俊之公式サイト
このジャズ風のBGMは、
たんにジャズというだけではなくて、
作品のテーマと関連させたうえで
意識的にスタイルが使い分けられていると思います。
「漫画」にギャグや劇画等のスタイルの違いがあるのと同様に、
ジャズにも色々なスタイルの違いがあるのです。
本作では三つのスタイルが使い分けられていると思います。

  ◇ ディキシーランド・ジャズと狂騒の20年代
『メトロポリス』の地上世界の街並みは、
1920年代に流行ったアール・デコという美術の様式を
模したものになっているのですが、
ジャズ風のBGMは、この時代にアメリカで流行っていた
ディキシーランド・ジャズのスタイルを模したものになっています。
● ウィキペディア日内「アール・デコ」
● 同上内「ディキシーランド・ジャズ」
映画の最初のほう、
「METROPOLIS」という表題がおおきく映し出される前後の場面で
メトロポリスの喧騒が映し出されますが、
[レンタル版DVDで再生時間00:01:36~00:04:30、以下同様]
ここで鳴っているのがディキシーランド・スタイルのジャズです。
この場面はまさに、
「永遠の繁栄」(Great Prosperity)「狂騒の20年代」(Roaring Twenties)
「ジャズ・エイジ」(Jazz Age)などと呼ばれる、
もっとも繁栄を極めていた頃のアメリカを彷彿とさせる
仕掛けになっています。
● ウィキペディア日内「アメリカ合衆国の経済>2.2 第一次世界大戦と永遠の繁栄」
● ウィキペディア米内「Roaring Twenties」
● 同上内「Jazz Age」
なお、ニューヨークの摩天楼がこの時期に建設されていること、
このあとすぐ大恐慌が起こって
「永遠の繁栄」が未曾有の大不況に変わることも、
押さえておいて良いかもしれません。
● ウィキペディア日内「超高層ビル>3.1.2 ニューヨーク」
● 同上内「エンパイアステートビルディング」
  *摩天楼を代表するアール・デコ調の超高層ビルです。
  『メトロポリス』作中のジグラットのモデルをあえて特定するなら
  これでしょう。
● 同上内「クライスラービル」
  *エンパイアステートのすぐとなりに建つ
  アール・デコ調の超高層ビルの傑作です。
● ウィキペディア米内「Empire State Building」
  *上記二つのビルが一緒に写っている写真を見ることが出来ます。
● ウィキペディア米内「Chrysler Building」
● 同上内「世界恐慌」

  ◇ エリントンとハーレムの退廃
「ZONE」と名づけられている地下世界でも
ジャズ風のBGMが鳴る場面がありますが、
これはディキシーランド・スタイルではありません。
ケンイチ、ヒゲオヤジ(伴俊作)、ペロが
はじめてZONEに降りる場面[13:18~15:07]、
火災からティマを救ったケンイチが目を覚ます場面[25:32~27:05]
で鳴っているのは、
おそらくデューク・エリントン楽団のスタイルを模したものです。
● ウィキペディア日内「デューク・エリントン」
エリントンは
ニューヨークのマンハッタンにあるハーレムという地区を
活動の拠点にしていたのですが、
このハーレム地区は当時、
ギャングが牛耳る非常に治安の悪い土地でした。
● ウィキペディア日内「ハーレム (ニューヨーク市)」
エリントン楽団のダークでミステリアスな作風は、
ハーレムの退廃的な雰囲気を彷彿とさせるものです。
● 『メトロポリス』公式サイト内「MAP」
  *「超近代的な地上都市と退廃的な地下都市」
エリントン楽団が最盛期を迎えるのは1940年前後なのですが、
すでに1927年にはハーレムで活動を開始しているので、
ディキシーランドとエリントンという二つのスタイルの使い分けは、
狂騒の20年代に沸くニューヨークの
光と影を想起させる狙いがあるのでしょう。
 *[13:47]ヒゲオヤジのセリフ
 「ほほう/光ある所に影は生まれる… か」

  ◇ ベイシーと30年代の希望
ラストの大崩壊のシーンの後に鳴るジャズ風のBGMはさらに巧妙です。
[01:38:53~01:42:32]
このBGMは前半と後半に分かれるのですが、
前半[01:38:53~01:40:43]はディキシーランド、
後半[01:40:44~01:42:32]はおそらく
カウント・ベイシー楽団のスタイルを模したものです。
この点はとくに大切なので強調しておきたいのですが、
後半部分でのサックス・セクションのシンコペーションの溜め方や、
いちばん最後のピアノのパターンは、
ベイシー楽団の専売特許です。
● ウィキペディア日内「カウント・ベイシー」
ベイシーは、大恐慌後の30年代に主流になった
スイング・ジャズを代表するプレイヤーで、
とにかくハッピーな作風を信条としています。
● ウィキペディア日内「スウィング・ジャズ」
狂騒の20年代から大恐慌を経て、
1930年代の希望を求めるアメリカの歴史の変遷が、
一曲のなかのスタイルの変化に込められているのではないでしょうか。
(同じ曲の途中でスタイルを変えるなんてことは普通はしないものです)
オープニングとの対比を与えるために、
オープニングの曲のメロディーをそのまま使って
アレンジだけを変えているところも巧妙です。

 ◆ 落書きとの関係?
このように、たしかに「出典」(des références)のある
「サウンド・トラックのお遊び」(jeu de piste)だとは思うのですが、
「壁の落書き」(écrit sur les murs)との「関係」(rapport)が
具体的にどういうものなのかが、良く分かりません。

僕が見た限りでは、
明確に音楽と関連のありそうな落書きは以下の3例です。
(看板も含めています。
 原文の「écrit」は「書かれたもの」という意味です)
11:55
[11:55]
マンハッタンに「RADIO CITY MUSIC HALL」という有名な劇場があります。
● ウィキペディア日内「ラジオシティ・ミュージックホール」
前述のニューヨークの摩天楼の一角にあります。
20:15
[20:15]
「BE BOP」というジャズのスタイルがあります。
● ウィキペディア日内「ビバップ」
なお、この場面で鳴っているBGMはビ・バップではありません。
とくにこれと特定できる作風ではありません。
55:31
[55:31]
「So What」というジャズの有名な曲があります。
● ウィキペディア米内「So What (composition)」
ジャズの歴史を変えた非常に有名な曲です。
曲そのものは作中では使われていません。
45:16
[45:16]
45:11
[45:11]
「So What」は
ZONE-1のEASTブロックとWESTブロックを結ぶ通りの名前
ではないかと思います。
くわしくは以下の記事を参照してください。
補足資料『メトロポリス』:ZONE-1の地図

また、明確に音楽と関係しているとは言えませんが、
上述のニューヨークのマンハッタンを想起させるものがあります。
45:15
[45:15]
「Park Avenue」(パーク・アヴェニュー)はマンハッタンの通りの名前です。
● ウィキペディア米内「Park Avenue (Manhattan)」
上述の摩天楼とハーレムをつなぐ通りです。
56:03
[56:03]
「MANHATTAN」(マンハッタン)の「TTAN」だと思います。
● 「あっとニューヨーク」内「基本情報・旅行情報>地図/地下鉄マップ>ニューヨークの地図(ニューヨーク区・マンハッタン島全域)」
  *ハーレムと摩天楼のあるミッドタウンの位置関係を
  確認することが出来ます。
● 同上内「>ミッドタウン(北側)の地図」
  *ロックフェラーセンターを赤丸で囲ってあるところに
  「Radio City Music Hall」とあります。
  クライスラービルは42nd StとLexington Aveの角、
  (Radio City Music Hallの南東)
  エンパイアステートビルディングは地図から見切れていますが、
  33rd,34th StとFifth Aveの角で、
  クライスラービルの南西に位置します。
  Radio City Music Hallとクライスラービルのあいだに
  「Park Ave」とあります。

ということで、
落書きとサウンド・トラックとのあいだに
とくにこれと言えるほどの関係を挙げることが出来ません。
「par rapport à」は、
たんに並列の意味として解釈するべきなのでしょう。

 ◆ 『St. James Infirmary』と『There'll Never Be Good-Bye』
「サウンド・トラックのお遊び」という意味では、
挿入歌の『St. James Infirmary』と『There'll Never Be Good-Bye』も
確認しておく必要があるでしょう。

  ◇ 『St. James Infirmary』
『St.James Infirmary』はブルースの古典的な曲です。
● アマゾン日内「ジャズ詩大全〈第7巻〉」のページ
  *この曲について解説されています。
  大型図書館で架蔵しているところがあります。
● 「Absolute Lyrics」内「Van Morrison>Saint James Infirmary」
● 同上内「The White Stripes Lyrics>St. James Infirmary Blues」
  *歌詞を参照することが出来ます。
  こういう曲の常として
  歌詞はその場の気分で歌い替えられる場合があるので、
  細かい点で相違があります。

『ジャズ詩大全』(第7巻)によると
この曲は全部で4番まであるようなのですが、
映画のなかで歌われているのは3番です。
上記の歌詞検索サイトで紹介されているのは3番と4番です。
実際に歌われている歌詞は以下のようになると思います。
I went down to St. James Infirmary,
I saw my baby there.
She was stretched out on a long white table,
so cold, so sweet, so bare.
Let her go, let'er go, God bless her,
wherever she may be.
She can look this wide world over,
she'll never find a sweet man like me.
聖ジェイムズ診療所へいって
そこで僕のあのこを見たよ
長い白いテイブルの上でのびていた、
冷たく優しい表情で裸だった
彼女を死なせてやってくれ、死なせてやってくれ
神よ、あのこに祝福を! あのこがどこへいくのであろうと
あのこが世のなかを見わたしたって、
僕より優しい男は見つけられっこないさ
[『ジャズ詩大全』第7巻204~205ペイジの原詩・訳をもとに私見により改めた。訳は村尾陸男]

(おそらく暴行を受けて病院に担ぎ込まれた)
瀕死の恋人を見送る歌です。
ティマを天使に見立てる場面[48:51~50:30]で、
「God bless her」(神よ、あのこに祝福を!)と歌いながら、
じつはティマが失われることを予告しているわけです。
非常に巧妙な選曲だと思います。

  ◇ 『There'll Never Be Good-Bye』
この曲は映画のために書き下ろされたのでしょう。
● アマゾン日内「THERE’LL NEVER BE GOOD-BYE~THE THEME OF METROPOLIS~」
エンディング・テーマとして使われているほか、
ティマがラジオを見つける場面[46:52~46:56]で、
この曲のサビの歌い出しが流れます。
(エンディングの[01:44:16~01:44:20]に相当)
オープニングや大崩壊後に流れるジャズ風のBGMも、
この曲をアレンジしたものになっています。

歌詞を真さんから提供していただいたのですが、
さすがに全文転載するのは問題がありすぎるので、
もっとも重要だと思われる箇所の訳詩だけ、
抜粋しておきたいと思います。
(サックスソロの次のサビ明けから最後まで、[01:46:17~01:47:18])
お叱りを受けた場合は即刻削除する所存です。
手を握っていてくれた時のように
私の心のそばにいて
私の命は終わっていくけれど
あなたは私のなかで生き続ける
私の心が私のものでなくなってしまうまで
でも堕ちていく私の姿をあなたには見せたくないから
ここから消えよう

そう、忘れないで、
これはさよならではないの

決して忘れないで、
さよならなんて
ないのだから。
[原詩はMinako "mooki"Obata、訳者不明]
 *個人的に気になるので注記しておきますが、
 訳詩中「堕ちて」とあるところの原詩は「fall」です。

ケンイチの心情に重ねあわされる
『I Can't Stop Loving You』と『St. James Infirmary』に対して、
ティマの側からのアンサー・ソングになっています。
深読みに過ぎるかもしれませんが、
映画のオープニング・テーマはこの曲をアレンジしたものですから、
この映画は全編にわたって、
BGMによって結末(もしくは結末以後)が予告されていることになります。
各場面にぴったりの音楽だけではなく、
あえて内容をずらせることによって、
音楽によって作品の世界が二重三重に広げられているわけです。

なお、
『There Will Never Be Another You』というジャズの有名な曲があるので、
もしかしたらこれを踏まえているのかも知れません。
(「There'll never be~」というのは慣用句ですが、
 『~Another You』はものすごく有名な曲なので、
 本田俊之が知らないはずがありません)
● 「ARTANIS」内「 There Will Never Be Another You...(Harry Warren) 」

――どうでもいいことですが、
古典的な曲の中から絶妙の選曲をする監督の手腕も恐ろしいですが、
作詞者(Minako"mooki"Obata)と作曲者(本田俊之)は、
レイ・チャールズとブルースの古典に匹敵する曲を創ってくれ
と言われているのも同然なのですから、
よくもまあ、仕事を受けたよな、と思ったり思わなかったり……。
(普通は畏れ多くて出来ませんよね、やっぱり)

 ◆ その他
エンド・クレジットによると、
ジャズ風のBGMを演奏しているバンドの名前は
「METROPOLITAN RHYTHM KINGS」となっていますが、
(メンバーも豪華です)
これはディキシーランド・ジャズのバンド名を意識したものだと思います。
● ウィキペディア米内「New Orleans Rhythm Kings」
そしてなんと、
りんたろう監督がバスクラリネット(B.Cl)でクレジットされています。
ロートン博士の研究所が映し出される場面[14:47~15:07]の、
右チャンネルでトリルを吹いているバスクラリネットが
りんたろう監督だと思うのですが、いかがでしょうか。
とにかく、
音楽にしっかりとした意味づけがなされているのは間違いないようです。

また、じつは主人公のケンイチの声も、
有名なジャズ・シンガーの小林桂が担当しています。
● 小林桂公式サイト
映画公開の2001年は、
ちょうど小林桂が精力的に売り出していた時期に当たります。
声優の才能まであるとは恐ろしいかぎりですが、
サウンド・トラックに参加していないのが実に惜しいっ。
せっかくだから本多俊之と競演して欲しかったのに……。

なお、ヒップ・ホップのグラフィティ風の落書きを
作品の諸所で見つけることができますが、
ヒップ・ホップとの関連は考えなくても良いでしょう。
● ウィキペディア日内「グラフィティ」
● 同上内「ヒップホップ」




目次:メビウス、『メトロポリス』を語る
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by moebius-labyrinth | 2006-11-15 21:40 | メビウスの子孫たち
訳注『メトロポリス』:ティマが部屋の壁一面に愛する人の名前を書く場面
「メビウス、『メトロポリス』を語る」の訳注です。
他の関連記事については以下のインデックスを参照してください。
目次:メビウス、『メトロポリス』を語る


◆ ティマが部屋の壁一面に愛する人の名前を書く場面
以下の場面のことでしょう。
01:08:39(1)01:08:39(2)
01:08:4001:08:42
[01:08:39(1)][01:08:39(2)]
[01:08:40][01:08:42]
メビウスは、
「Ca veut dire
 que l’écriture, le hiéroglyphe manifesté est
 porteur du fond d’elle même. 」
(これは、
 この書かれた文字、表出された象形文字が、
 まさに彼女の内面そのものを伝えるものだということを
 意味している。)
と言っています。




目次:メビウス、『メトロポリス』を語る
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by moebius-labyrinth | 2006-11-15 21:30 | メビウスの子孫たち
訳注『メトロポリス』:アトラスとユゴーのガヴローシュ
「メビウス、『メトロポリス』を語る」の訳注です。
他の関連記事については以下のインデックスを参照してください。
目次:メビウス、『メトロポリス』を語る


◆ アトラスとユゴーのガヴローシュ
アトラス(Atlas)は『メトロポリス』の登場人物、
ガヴローシュ(Gavroche)は
フランスの小説家ヴィクトル・ユゴー(Victor Hugo)の
小説『レ・ミゼラブル』に登場する少年のことです。
● 『メトロポリス』公式サイト内「CHARACTER>アトラス」
  *アトラスの紹介画像として
  特にこの画像が選ばれていることに注意しておいて下さい。
● ウィキペディア日内「ヴィクトル・ユーゴー」
● 同上内「レ・ミゼラブル」
  *1800年代前半のフランス、
  とくに1830年の七月革命前後が主な舞台になっています。
● 「Project Gutenberg」内「Les misérables Tome I」
● 同上内「Les misérables Tome II」
● 同上内「Les misérables Tome III」
● 同上内「Les misérables Tome IV」
● 同上内「Les misérables Tome V」
  *『レ・ミゼラブル』のフランス語原文を読むことが出来ます。
  全五巻の長大な作品です。
● アマゾン日内『レ・ミゼラブル』(新潮文庫)第一巻のページ
  *僕はこの邦訳を参照しました。全五巻です。
● ウィキペディア仏内「Gavroche」
  *ここで挙げられている画像がガヴローシュの一般的なイメージです。
  ガヴローシュは
  パリに住む浮浪児の典型的なイメージとして知られています。
  「ABC」(仏語で「アベセー」と発音)という革命団と仲良くなって、
  1832年のパリ市での蜂起に参加、12歳で銃弾に倒れます。
  口は悪いが憎めない小僧、という感じの人物です。

『レ・ミゼラブル』から特に関連のありそうな箇所を引いておきます。
 この物語の第二部で述べた出来事から、およそ八、九年たったころ、タンプル大通りや、シャトー・ドーの近辺で、十一、二歳の男の子が見受けられた。[中略]この子は大人のズボンを変な具合にはいていたが、それは父親譲りのものではなかったし、女ものの上着を着ていたが、それも母親譲りではなかった。
[中略]
 言い忘れたが、この子は、タンプル大通りではプチ・ガブローシュと呼ばれていた。
 Huit ou neuf ans environ après les évènements racontés dans la deuxième partie de cette histoire, on remarquait sur le boulevard du Temple et dans les régions du Château-d'Eau un petit garçon de onze à douze ans [中略]Cet enfant était bien affublé d'un pantalon d'homme, mais il ne le tenait pas de son père, et d'une camisole de femme, mais il ne la tenait pas de sa mère.
[中略]
 Nous avons oublié de dire que sur le boulevard du Temple on nommait cet enfant le petit Gavroche.
[佐藤朔訳、新潮文庫第三巻32~35ペイジ、第三部第一章13、以下同様]
 *ガブローシュの初登場場面です。

[前略]パリにはこの種の結社の数ある中で、ABCの友の会というのがあった。
[中略]
 ABCの友と自称していたが、つまり「下層の者」[ルビ:アベセー]で、民衆のことだった。その民衆を立ち上がらせようとしたのである。
[中略]
 ABCの友のいつもの秘密集会は、キャフェ・ミュザンの奥の部屋で行われた。
il y avait à Paris, entre autres affiliations de ce genre, la société des Amis de l'A B C.
[中略]
 On se déclarait les amis de l'A B C.—L'Abaissé, c'était le peuple. On voulait le relever.
[中略]
 Les conciliabules habituels des Amis de l'A B C se tenaient dans une arrière-salle du café Musain.
[第三巻110~111ペイジ、第三部第四章1]
 *革命を志す秘密結社の名前は
 「下層の者」との掛詞になっています。
 (仏語ではどちらも「アベセー」と発音)
 この結社の団員の一人マリユスが
 ガヴローシュの家の隣に住んでいたことから、
 ガヴローシュが革命団の団員に可愛がられるようになります。

このとき、ぼろをまとった一人の少年が、メニルモンタン通りからやって来た。[中略]骨董屋のおかみさんのいる店先で、乗馬用のピストルを発見した。彼は花のついた枝を敷石に捨てて、叫んだ。
「おばさん、こいつを借りるよ」
 そして彼はそのピストルを持って逃げ出した。
[中略]
 それは戦いに行くプチ・ガヴローシュだった。
 大通りまで来たとき、彼はピストルに撃鉄がないことに気がついた。
En ce moment un enfant déguenillé qui descendait par la rue Ménilmontant,[中略]avisa dans la devanture de boutique d'une marchande de bric-à-brac un vieux pistolet d'arçon. Il jeta sa branche fleurie sur le pavé, et cria:
 —Mère chose, je vous emprunte votre machin.
 Et il se sauva avec le pistolet.
[中略]
 C'était le petit Gavroche qui s'en allait en guerre.
 Sur le boulevard il s'aperçut que le pistolet n'avait pas de chien.
[第四巻391~392ペイジ、第四部第十一章1]
 *ガヴローシュが蜂起に加わる場面です。
 一般的なイメージではガブローシュは銃を持っていますが、
 じつは、彼は子供なので
 なかなか銃を持たせてもらえていません。
 この銃にも撃鉄が付いていないとあります。

 だが、一弾が、ほかのよりも狙いがよかったのか、陰険だったのか、とうとう鬼火のような子供にあたった。ガヴローシュはよろめいたと見るままに、くず折れた。[中略]一筋の血が顔に長く糸をひいた。両手を空中にあげ、弾丸の来る方を見つめて、歌いだした。

 俺は地面に倒れた、
 そりゃ、ヴォルテールのせいだ、
 どぶに鼻をつっこんだ、
 そりゃ、ルソーの……

 彼は歌い終わらなかった。同じ射手の第二弾が、それをぴたり止めたのだ。[中略]この小さな偉大な魂は、今飛び去ったのである。
 Une balle pourtant, mieux ajustée ou plus traître que les autres, finit par atteindre l'enfant feu follet.[中略]un long filet de sang rayait son visage, il éleva ses deux bras en l'air, regarda du côté d'où était venu le coup, et se mit à chanter.

 Je suis tombé par terre,
 C'est la faute à Voltaire,
 Le nez dans le ruisseau,
 C'est la faute à....

 Il n'acheva point. Une seconde balle du même tireur l'arrêta court.[中略]Cette petite grande âme venait de s'envoler.
[第五巻77~78ペイジ、第五部第一章15]
 *ガヴローシュの死の場面です。
 ガヴローシュはよく歌を歌う人物でもあります。


アトラスがガヴローシュを暗示(allusion)している場面というのは、
以下の場面を指しているのでしょう。
57:42
[57:42]
なお、以下の記事も参照してください。
訳注『メトロポリス』:ドラクロワの『民衆を導く自由の女神』




目次:メビウス、『メトロポリス』を語る
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by moebius-labyrinth | 2006-11-15 21:20 | メビウスの子孫たち
訳注『メトロポリス』:ドラクロワの『民衆を導く自由の女神』
「メビウス、『メトロポリス』を語る」の訳注です。
他の関連記事については以下のインデックスを参照してください。
目次:メビウス、『メトロポリス』を語る


◆ ドラクロワの『民衆を導く自由の女神』
フランスの画家ドラクロワ(DELACROIX)が19世紀に発表した絵画
『民衆を導く自由の女神』(La Liberté guidant le Peuple)のことです。
● ウィキペディア日内「ウジェーヌ・ドラクロワ」
● 同上内「民衆を導く自由の女神」
● 同上内「画像:Delacroix Liberty Leading the People 1830.jpg」(作品の大サイズの画像を見ることが出来ます)
画面の中央でフランス国旗を掲げている女性が
フランスという国を象徴するイメージとして受け容れられていて、
フランス人なら誰でも知っている作品です。
● ウィキペディア日内「マリアンヌ」
七月革命という実際に起こった革命を題材にしていて、
フランスの市民革命の精神を象徴する作品と考えられています。
● ウィキペディア日内「フランス7月革命」

この作品が登場するのは以下の場面です。
35:21民衆を導く自由の女神
[35:21]
左側の壁に書かれている文字は、
「FREEDOM PHLANTHROPY EQUALITY」(自由・博愛・平等)が
見切れたものでしょう。
フランス国旗が象徴する理念です。
(『メトロポリス』作中の女神は旗は持っていませんが)
● ウィキペディア日内「フランスの国旗」
七月革命(1830年)に先立つフランス革命(1789~1794年)で制定されました。

まさしく「一瞬」(un moment)しか映らないので、
メビウスがかなり注意深く『メトロポリス』を観ていることが伺えます。

なお、
『メトロポリス』作中の絵では見切れていますが、
『民衆を導く自由の女神』の女神の右側で銃を振り上げている少年は、
『レ・ミゼラブル』のガヴローシュを描いたものとして非常に有名です。
57:42民衆を導く自由の女神
訳注『メトロポリス』:アトラスとユゴーのガヴローシュ
アトラスがガヴローシュを暗示する場面も、
じつはこの絵画から採られているわけです。
(ウィキペディア仏のガヴローシュの画像もこの絵から切り取られたものです)
● グーグル日での「Gavroche」のイメージ検索の結果
● グーグル仏での「Gavroche」のイメージ検索の結果
ただし、七月革命は1930年、
ガヴローシュが参加したのは1932年のパリでの共和派の蜂起です。




目次:メビウス、『メトロポリス』を語る
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by moebius-labyrinth | 2006-11-15 21:10 | メビウスの子孫たち
訳注『メトロポリス』:バベルの神話
「メビウス、『メトロポリス』を語る」の訳注です。
他の関連記事については以下のインデックスを参照してください。
目次:メビウス、『メトロポリス』を語る


◆ バベルの神話
これはもちろん、聖書のバベルの塔の挿話でしょう。
● ウィキペディア日内「バベルの塔」
● 「日本聖書協会ホームページ」内「メインページ>聖書を読む>聖書本文検索>訳名選択:新共同訳, 書名選択:創世記, 章選択:11で検索」
  *聖書の該当箇所を読むことが出来ます。
  残念ながら検索結果に直接リンクすることが出来ないようなので、
  上記の手順で検索しなおしてください。
  聖書の邦訳にはいくつものバージョンがありますが、
  新共同訳が現在もっともポピュラーなものです。
● 「La bibliothèque du Cherf」内「La Traduction œcuménique de la Bible (nouvelle édition)> LA GENÈSE」」
  *仏訳版聖書の該当箇所です。
  表示されているのは「創世記」(LA GENÈSE)の冒頭です。
  ページ右上の「>>page suivante」(次のページ)をクリックして、
  表示される本文の右肩に「11, 3」と表示されるまで移動してください。
  創世記冒頭が65ページ、バベルの塔が81ページに相当します。
  (「>>page suivante」を16回クリックする)
  「La tour de Babel」とあるところから、
  次のページに移って「De Sem à Abraham」とある直前までが
  バベルの塔の挿話になります。
  仏訳版にも多くのバージョンがあるのですが、
  この「Traduction Oecuménique de la Bible」
  (「新共同訳」に相当)が、もっともポピュラーのようです。
  メビウスがどの宗派でどの訳を想定しているのかは分かりませんが、
  (おそらくカトリックだとは思いますが)
  この版は宗派にかかわらず参照できるものとして作られているので、
  フランスでもっともポピュラーな聖書として、
  ひとまずはこの版を想定しておけばよいでしょう。
バベルの塔
La tour de Babel

創世記 / 11章
LA GENÈSE / 11

世界中は同じ言葉を使って、同じように話していた。
La terre entière se servait de la même langue et mêmes mots.

東の方から移動してきた人々は、
シンアルの地に平野を見つけ、そこに住み着いた。
Or en se déplacant vers l'orient,
les hommes découvrirent une plaine dans le pays de Shinéar
et y habitèrent.

彼らは、「れんがを作り、それをよく焼こう」と話し合った。
石の代わりにれんがを、
しっくいの代わりにアスファルトを用いた。
Ils se dirent l'un à l'autre :
«Allons ! Moulons des briques et cuisons-les au four.»
Les briques leur servirent de pierre et
le bitume leur servit de mortier.

彼らは、
「さあ、天まで届く塔のある町を建て、有名になろう。
そして、全地に散らされることのないようにしよう」と言った。
«Allons ! dirent-ils,
bâtissons-nous une ville et une tour
dont le sommet touche le ciel.
Faisons-nous un nom afin de ne pas être dispersés
sur toute la surface de la terre.»

主は降って来て、人の子らが建てた、塔のあるこの町を見て、
Le SEIGNEUR descendit pour voir la ville
et la tour que bâtissaient les fils d'Adam.

言われた。
「彼らは一つの民で、皆一つの言葉を話しているから、
このようなことをし始めたのだ。
これでは、彼らが何を企てても、妨げることはできない。
«Eh, dit le SEIGNEUR,
ils ne sont tous qu'un peuple et qu'une langue
et c'est là leur première oeuvre !
Maintenant,
rien de ce qu'ils projetteront de faire
ne leur sera inaccessible !

我々は降って行って、直ちに彼らの言葉を混乱させ、
互いの言葉が聞き分けられぬようにしてしまおう。」
Allons, descendoons et brouillons ici leur langue,
qu'ils ne s'entendent plus les uns les autres !»

主は彼らをそこから全地に散らされたので、
彼らはこの町の建設をやめた。
De là,
le SEIGNEUR les dispersa sur toute la surface de la terre
et ils cessèrent de bâtir la ville.

こういうわけで、この町の名はバベルと呼ばれた。
主がそこで全地の言葉を混乱(バラル)させ、
また、主がそこから彼らを全地に散らされたからである。
Aussi lui donna-t-on le nom de Babel
car c'est là que le SEIGNEUR brouilla
la langue de toute la terre,
et c'est de là que le SEIGNEUR dispersa les hommes
sur toute la surface de la terre.





目次:メビウス、『メトロポリス』を語る
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by moebius-labyrinth | 2006-11-15 21:00 | メビウスの子孫たち
訳注『メトロポリス』:チェ・ゲバラ
「メビウス、『メトロポリス』を語る」の訳注です。
他の関連記事については以下のインデックスを参照してください。
目次:メビウス、『メトロポリス』を語る


◆ チェ・ゲバラ
チェ・ゲバラ(Che Guevara)は南米の有名な革命家です。
● ウィキペディア日内「チェ・ゲバラ」
作中では革命団の本部の場面で登場するのですが、
ゲバラは共産主義
(労働者が資本家を倒して平等な社会を作ろうとする考え方)に
傾倒していた革命家なので、
同様の革命を目指す革命団の団員にも
信奉されているということなのでしょう。
「少佐の階級章(一つ星)をつけたベレー帽は
 後年チェのシンボルマークとなる。」
とあるところも注意しておいて下さい。

1960年に撮られたポートレイトが有名で、
ポップカルチャーの重要なモチーフになっています。
● ウィキペディア日内「画像:Cheicon.jpg」
作中に登場する
「チェ・ゲバラのイメージ」(l’image du Che Guevara)も
このポートレイトを指しているようです。
僕が見たかぎりでは9例登場しています。
(場面が変わっても同じ対象を映している場合は合わせて1例)

(1)
47:15
[47:15]
微妙な例ですが、ゲバラの写真だと思います。

(2)
48:04
[47:58~48:50]
ゲバラの写真の上に英文が書かれていますが、
残念ながらこの英文の出典を確認するには至りませんでした。
英文はおそらく以下のようになっていると思います。

 THE LAW OF REVOLUTION
 SICKNESS IS THE MIRROR OF
 HEALTH
 DISCRETION IS FOR THE
 PROLETARIAT
 FRETUDKE[この一語不明] IS FOR THE
 BOURGEOISIE
 革命の原則
 病(やまい)は身体の兆候なり
 プロレタリアートは思慮深くあれ
 ブルジョワジーは[不明]たり

ゲバラの主著『ゲリラ戦争』と『ゲバラ日記』を見てみましたが、
参考になりそうな箇所は見つけられませんでした。
● アマゾン日内『ゲリラ戦争―武装闘争の戦術』のページ
● 同上内『ゲバラ日記』のページ

(3)
50:02
[50:02]
写真の下の星のマークは、
ゲバラのシンボルマークの少佐の階級章でしょう。

(4)~(8)
ティマが革命団の一室で字の練習をする場面にも
5枚のゲバラの写真が登場しますが、
非常にややこしい例なので、
この部屋の見取り図を描いてみました。
図の左側の壁の構造が少しややこしいのですが、
(角のところが下から上にかけてせり上げてくる構造になっている。
 階段を下から見上げた構造に似ている)
部屋を上から見下ろすと以下の図のようになっていると思います。
見取り図内のローマ数字のI~Vが、
それぞれ通し番号の(4)~(8)に対応します。
ゲバラのイメージ(革命団の一室)
[50:37~52:08]
各スクリーンショットは小さくなってしまいましたが、
実際に映像を観ながら確認して見てください。

(9)
59:09
[59:09]

また、アトラスは右足に星のマークを付けていますが、
これはゲバラのシンボルマークの一つ星(五角)ではなく、
六角のダビデの星です。




目次:メビウス、『メトロポリス』を語る
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by moebius-labyrinth | 2006-11-15 20:50 | メビウスの子孫たち
訳注『メトロポリス』:フリッツ・ラングの『メトロポリス』
「メビウス、『メトロポリス』を語る」の訳注です。
他の関連記事については以下のインデックスを参照してください。
目次:メビウス、『メトロポリス』を語る


◆ フリッツ・ラングの『メトロポリス』
インタビュー原文を直訳とともに挙げておきます。

On voit bien que Métropolis, c’est une leçon aussi.
人々は『メトロポリス』も確かに観る。これも一つの教訓だ。

原文では単に「メトロポリス」(Métropolis)とされているのですが、
これは、ドイツの監督フリッツ・ラングが1927年に発表した
SFの古典的映画『メトロポリス』を指していると思います。
● ウィキペディア日内「メトロポリス (1927年の映画)」
● ラング版『メトロポリス』公式サイト
● 「goo映画」内「メトロポリス(1926)」

ラング版『メトロポリス』にはいくつかのバージョンがあるのですが、
ポピュラーなのは1927年版と1984年編集版のようです。
メビウスがどのバージョンを想定しているのかは分からないのですが、
1984年版はオリジナルとは別個の作品と称されているので、
1927年版を想定しておけば良いでしょう。
問題は2002年版なのですが、

 2001年 5月26日 りんたろう版『メトロポリス』日本公開
 2002年 6月 5日 りんたろう版『メトロポリス』フランス公開
 2002年 7月12日 ラング版『メトロポリス』再編集版がアメリカ公開
 2002年12月 5日 りんたろう版『メトロポリス』DVDがフランスで発売

というように、
りんたろう版『メトロポリス』の公開日程と微妙に前後していて、
インタビューの時点で
メビウスがラングの2002年版を観ているかどうかはっきりしません。
(メビウスのインタビューは
 りんたろう版のDVDがフランスで発売された際に
 特典として付けられているので、
 すくなくともそれまでには行われているはずです。
 インタビューの正確な日程は判明していません。)
● 「IMDB」内「Metropolis (1927)>release dates」
  *ラング版『メトロポリス』各バージョンの公開日程の一覧ページです。
● 同上内「Metoroporisu (2001)>release dates」
  *同様にりんたろう版『メトロポリス』のページです。
● アマゾン仏内『Metropolis - Edition Collector 2 DVD』
  *フランスで発売されたこのDVDの特典として、
  当該インタビューが収められています。
  DVDの発売日は「5 Déc 2002」(2002年12月5日)です。
ただし、メビウスは日本の「漫画」・アニメの熱心なファンで、
大友克洋とも個人的な付き合いがあるようなので、
もしかしたら日本やフランスでの公開に先駆けて
りんたろう版を観ている可能性があります。
その時点ではラング版2002年版は公開されていません。
● [記者会見記事の下訳のまとめ1:「宮崎駿―メビウス」展]
  *当時アメリカに住んでいたメビウスは、
  アメリカでの一般公開に先駆けて、
  海賊版の『風の谷のナウシカ』のビデオ
  (日本版のビデオにアメリカのファンが字幕を付けたもの)
  を観ていたようです。
● [宮崎駿とメビウスの対談]
  *宮崎駿とメビウスの対談のなかで、
  『となりのトトロ』のビデオを
  宮崎駿がメビウスに個人的に送ることを申し出ています。
● [メビウス&大友克洋対談記事:「OTOMOEBIUS」1>注6]
  *『スチームボーイ』もフランスでの公開に先駆けて観ているようです。
  このように、メビウスは
  一般公開に先駆けて日本のアニメ映画を観ることがあるようです。

ひとまずは1927年版を想定しておけば良いでしょう。

● アマゾン日内『メトロポリス』のページ
  *僕はこのDVDをレンタルで観ました。
  淀川長治総監修『世界クラシック名画100撰集』(3)、1927年版です。

りんたろう版『メトロポリス』が
ラング版『メトロポリス』を出典としていることは
説明するまでもないでしょう。
その意味も含めて、ラング版『メトロポリス』は必見です。
モノクロで音声も付いていない映画ですが、
そんなことは全く気になりません。
むしろそれこそが魅力になっています。
色や音に頼らずとも、
役者の表情やしぐさ、美術などが雄弁に語りかけてくるように
作られています。

りんたろう版が出典としている要素は多々あるので
いちいち挙げることは出来ませんが、
ここでは、
ヒロインのマリアが地下世界で
労働者たちにバベルの塔の講話を語る場面を取り上げたいと思います。
Today I will tell you the story of the Tower of Babel.
きょうはバベルの塔の話をします

Let us build a tower whose summit will touch the skies--
「天までとどく塔を建設しようではないか

--and on it we will inscribe :
'Great is the world and its Creator.
And great is Man.'
偉大なる世界と創造主 そして
偉大なる人間を記念するために」

Those who had conceived the idea of this tower
could not build it themselves,
so they hired thousands of others to build for them.
建設工事のために大勢の人が
土工として雇われました

But these toilers knew
nothing of the dreams of those who planned the tower.
しかし土工達は塔建設の立案者の理想には無知でした

While those who had conceived the tower
did not concern themselves with the worker who built it.
一方、立案者たちには
現場土工達への思いやりがありませんでした

The hyms of praise of the few
became the curses of the many.
少数者の喜びは多数者にとって呪いでした

BABEL
バベル

Between the brain that plans
and the hands that build there must be a mediator.
計画立案者と現場の労働者の間には調停者が必要でした

It is the heart
that must bring about an understanding between them.
たがいの理解のための心が必要だったのです
[上記DVDより。訳はDVDの字幕に拠り、表記を改めた箇所がある]


この映画が、
労働者を善とし資本家を悪と決め付けるような、
共産主義にありがちな陳腐で一方的な構図にはおさまらないことを
物語っています。
メビウスがりんたろう版『メトロポリス』のテーマを
「le cœur」(「心」、英語の「heart」に相当)としていることと併せて、
非常に重要な場面だと思います。




目次:メビウス、『メトロポリス』を語る
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by moebius-labyrinth | 2006-11-15 20:40 | メビウスの子孫たち
補足資料『メトロポリス』:作中時間表
「メビウス、『メトロポリス』を語る」の補足資料です。
他の関連記事については以下のインデックスを参照してください。
目次:メビウス、『メトロポリス』を語る


◆ 作中時間表
『メトロポリス』の作中時間表をつくってみました。
合計5日間の出来事です。
作中で雪が降るので、季節は冬でしょう。
メトロポリスの所在地は、
ひとまずはニューヨークを想定しておけば良いと思います。
([補足資料『メトロポリス』:ZONE-1の地図])

┬────────────────────────────
◆ 1日目[01:36~07:36]

│夜:ジグラット完成祝賀会[01:36~07:36]
┼────────────────────────────
◆ 2日目[07:37~24:32]

│朝~昼:
│ケンイチとヒゲオヤジ、警察に行き応援を要請[07:37~09:33]

│ケンイチとヒゲオヤジ、ペロを借りる[09:34~13:07]

│ケンイチとヒゲオヤジ、ZONE-1の調査[13:06~14:13]


│夜:
│ロートン研究所でティマ覚醒~火災[14:14~23:27]
│ケンイチとティマがZONE-3へ落ちる[23:28~24:32]
├────────────────────────────
◆ 3日目[24:32~54:42]

│早朝:レッド公、ロートン研究所の火災の報を受ける[24:33~25:32]

│朝:ケンイチ、目覚める[25:33~30:36]
│ジグラットの光線発射実験[30:37~36:24]

│昼:
│ケンイチとティマ、ロックに追われてZONE-1まで逃げる[36:25~47:12]

│夕方:
│ケンイチとティマ、革命団にかくまわれる[47:13~50:36]

│夜:
│ティマ、革命団の一室で字の練習&着替え[50:37~54:42]
├────────────────────────────
◆ 4日目[54:43~01:26:07]
│早朝:クーデター勃発[54:43~59:21]


│夕方:クーデター失敗[59:22~01:03:26]
│ティマとケンイチ、ジグラットに捕らわれる[01:03:27~01:08:47]

│夜:
│ティマ、ロックにだまされて機能を停止させられる[01:08:48~01:13:22]
│ヒゲオヤジがティマを助け、ホテル・ココナッツへ[01:13:23~01:19:13]
│ヒゲオヤジとティマ、レッド公に発見されジグラットへ
│[01:19:14~01:26:07]
├────────────────────────────
◆ 5日目[01:26:08~01:42:43]
│夜明け前:ティマ覚醒~大崩壊[01:26:08~01:42:43]





目次:メビウス、『メトロポリス』を語る
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by moebius-labyrinth | 2006-11-15 20:30 | メビウスの子孫たち
補足資料『メトロポリス』:ZONE-1の地図
「メビウス、『メトロポリス』を語る」の補足資料です。
他の関連記事については以下のインデックスを参照してください。
目次:メビウス、『メトロポリス』を語る


◆ ZONE-1の地図
ZONE-1のおおまかな地図を作成してみました。
(クリックで拡大)
ZONE-1の地図
 *おおまかにNORTH(北)、EAST(東)、
 SOUTH(南)、WEST(西)に分かれています。
 「SO WHAT st」はWESTとEASTを結ぶ道路です。
 EASTには、地上やZONE-2,3との行き来をするための
 メインゲート(地図中のEASTを上下に挟む斜線で表記)
 があります。詳しくは後述。

ZONE-1は、
その雑然とした街並みそのものがひとつの魅力を持つように
造形されているように思います。
こういう場合は、
単に箱庭としてではなく、
実際に人の生活を想定した設定の裏付けがあるものです。
もしかしたら、しっかりとした地図が設定されているかもしれません。
劇中のヒントを辿って行くと、
少なくとも、おおまかな地図を作成できるように思います。
以下に僕の考証の道筋を示しておきます。

 ◆ TELENETの地図
ZONE-1の地図を作成するうえで第一に参考になるのは、
ホテル・ココナッツ(HOTEL COCONUTS)に隠れているヒゲオヤジとティマを
マルドゥーク党が探し出す場面です。
01:18:05
[01:18:05]
一瞬しか写りませんが、
マルドゥーク党の使用するモニターに
ZONE-1の地図が映し出されます。
これによると、ZONE-1はおおきく
N(NORTH、北)、E(EAST、東)、S(SOUTH、南)、W(WEST、西)
の四つのブロックに分かれているようです。
「ZONE 1 CENTRAL EXCH」は
「ZONE 1 CENTRAL EXCHANGE」(ZONE-1中央交換局)でしょう。
ヒゲオヤジとティマが電話網(TELENET)を使って
ケンイチの居場所を突き止めたので、
それを逆探知しているわけです。
「MGCC」は
「METROPOLIS GENERAL CONTROL CENTER」
(メトロポリス総合コントロール・センター)
の略でしょう。

この四つのブロックに沿って、
ZONE-1のおおまかな地図を作成することが出来るようです。
(ホテル・ココナッツについては後述)

 ◆ EAST ENDのメインゲート
ZONE-1のなかで比較的はっきりと位置を特定できるものとして、
メインゲート(各階層をつなげる通路)を挙げることが出来ます。
ケンイチ、ヒゲオヤジ、ロボットのペロが、
はじめてZONE-1に降りる場面で乗っている昇降機に、
「UNDERGROUND EAST END」(地下、東のはずれ)と書かれてあるからです。
13:09
[13:09]
「METROPOLIS GENERAL CONTROL CENTER」
(メトロポリス総合コントロール・センター)から地下へ降ります。
13:28(1)13:28(1)
13:28(3)13:283
[13:28(1)][13:28(2)]
[13:28(3)][13:23]
メインゲートの昇降機に書かれている文字をすべて繋げると、
「UNDERGROUND EAST END」になるようです。
「DERGROUND」と見切れていますが(ぎりぎり「D」が見えるくらい)、
「UNDERGROUND」を想定しておけば良いでしょう。

13:4113:47
[13:41][13:47]
メインゲートから出てZONE-1に出たところです。
[13:47]の「AN」は、
訳注『メトロポリス』:落書きとサウンド・トラック
で想定した「MANHATTAN」が見切れたものと考えれば良いと思います。
56:03
[56:03]
クーデターの人たちが集まるのもメインゲート前広場です。
ただし、
(くわしい考証は省きますが)
[13:47]と「56:03」の「MANHATTAN」の看板は別物であるはずです。
13:53
[13:53]
「75」の数字が[13:47]のものと一致します。
「EAST END」が見切れたと思われる「END」の文字も見えます。
画面上部の赤い建物はメインゲートの建物なのでしょう。

ZONE-1のメインゲート前は
おそらく以下のような地理になっているのでしょう。
メインゲート前地図

 ◆ WEST所在のロートン研究所
ロートン博士の研究所はZONE-1のWEST(西)ブロックにあるようです。
14:25
[14:25]
レッド公が研究所に向かう途中、
「W-15TH」(西15番通り)を通ります。
20:41
[20:41]
研究所の火事の場面で「ZONE-1 WEST」と映し出されます。

ケンイチとヒゲオヤジ一行は、
東のはずれからZONE-1に入って、
一日中ZONE-1を回ったあとに、
西地区にあるロートン研究所の火事に駆けつけるわけです。
(上掲地図の緑の矢印)

 ◆ HOTEL COCONUTSと南地区
劇中、唯一確実な所在地が知らされるのが、
ヒゲオヤジがティマをかくまった
「HOTEL COCONUTS」(ホテル・ココナッツ)です。
01:18:15
[01:18:15]
マルドゥーク党の逆探知によって、
「SOUTH blk 17 ZONE-1」(南地区 17番 ZONE-1)
とはっきりした住所が判明しますが、
SOUTH(南)ブロックのどこに当たるかは不明です。
このシーンの直前に、
南地区の電話線を探知している画面が映し出されますが、
表示される数字(おそらく住所か通りの番号)には、
とくに規則性などはないようです。
01:18:4701:19:14
[01:18:47][01:19:14]
ホテル・ココナッツは、
「CENTRAL STATION」(中央駅)の跡地に
(おそらく)オリエント急行の列車を係留してホテルとして使っている、
という設定なのでしょう。
実在の駅をモデルにしているのかも知れません(未調査)。

また、確実な手がかりはありませんが、
ヒゲオヤジは機能を停止したティマを担いでホテルまで来たのですから、
ロックがティマを解剖しようとしたビリヤード台のあるバーも、
南地区のホテルの近くにあるのではないかと思います。
01:13:33
[01:13:33]
扉に「Nemo」(『海底二万リーグ』のネモ船長)とあるので、
仮に「Nemo亭」と名づけておきます。

これも確証はありませんが、
ヒゲオヤジがロックの尾行をはじめた酒場も、
ひとまずは南地区にあると考えておけば良いでしょう。
01:07:5301:08:12
[01:07:53][01:08:12]
仮に「TORONGOの酒場」と名づけておきます。
酒場の向かいにはなんと「両国」とあります。

さらに、革命団のアジトも南地区にあるのではないかと思います。
49:12
[49:12]
これをブロック名の表記と考えて良いかは不詳ですが、
「SOUTH」の代わりに「南」とあるのではないでしょうか。

 ◆ ケンイチとティマの逃走経路
ロックに追われるケンイチとティマの逃走経路も、
地図上でおおまかに追うことが出来ます。
(上掲地図の青の矢印)

まず、WEST(西)ブロックのロートン研究所からZONE-3まで落ちます。
20:41
[20:41]
落ちた先のZONE-3でも依然としてWESTブロックです。
このことを確認するために、
ロックの追跡経路を確認しましょう。

36:36
[36:36]
ロックはEAST(東)ブロックからZONE-1に入ります。
(魚のオブジェについては後述)
37:12
[37:12]
さらに、「METROPOLIS GENERAL CONTROL CENTER」から
ZONE-2,3へと降下します。
「METROPOLIS GENERAL CONTROL CENTER」が
EAST END(東のはずれ)にあるのは上述の通りです。
おそらくメインゲートの近くなのでしょう。
38:27
[38:27]
最終的に「ZONE-3 WEST-77-1」(ZONE-3 西地区77-1)の
昇降機を使ってZONE-3に降ります。
ここで東から西に移ったわけです。
この後、ロックがケンイチとティマを発見します。

41:04
[41:04]
ロックに追われるケンイチとティマは、
上述の「ZONE-3 WEST-77-1」の昇降機をつかってZONE-2に逃げます。
ZONE-2のなかで西(WEST)から東(EAST)に移るようです。
43:38
[43:38]
ケンイチとティマは、
東地区にある「METROPOLIS GENERAL CONTROL CENTER」から
ZONE-1に出て来ます。
先ほどロックがZONE-2へと降りた通路のすぐ隣から出てきます。
43:36
[43:36]
ロックを待ち伏せていたヒゲオヤジが
ケンイチとティマを発見する直前の場面です。
このあとケンイチとティマは西に向けて逃走しているようです。
44:19
[44:19]
確証はありませんが、ここはEAST(東)ブロックだと思います。
ケンイチとティマが東のはずれから西に向けて逃げている途中です。
44:20~22
[44:20~22を合成]
中央の尖塔は、
マンハッタンのセントラルパークにあるオベリスクだと思います。
 *くわしくは以下の記事を参照してください。
 [訂正『メトロポリス』:マンハッタンにもオベリスクはあった
ここに魚のオブジェが登場しますが、
これが[36:36]の魚のオブジェと符号する
仕掛けになっているのではないでしょうか。
36:36
[36:36]
ということで、ここはおそらくEAST(東)ブロックだと思います。

45:1145:16
[45:11][45:16]
この場面の考証が非常にむずかしいのですが、
ここはEAST(東)とWEST(西)のちょうど中間にあたる
のではないかと思います。
ケンイチとティマはEAST END(東のはずれ)から逃げて来たはずですが、
この場面に出てくる道路の標識には、
「W 760」(西地区760番)や
「W 751」(西地区751番)とあります。
つまり西地区だと思われるのですが、
それにもかかわらず、このすぐ後の場面(後述)では、
またEAST(東)ブロックと思われる場所が映されるのです。
要するに、ケンイチとティマは、
東のはずれから西に向かって逃走し、
西地区に入りかけたところでUターンをし、
今度は逆に西地区から東に向かって逃げているのではないでしょうか。
(上掲地図の青の矢印、「SO WHAT st」近辺のU字矢印)
さらに、ここで映し出される
「SO WHAT st」(SO WHAT street、SO WHAT通り)の看板が重要です。
後にクーデターが起こって、ケンイチとティマがアトラスを見送る場面で、
「SO-WHAT」という看板が映されるからです。
55:31
[55:31]
ここはEAST END(東のはずれ)のメインゲートに上るエスカレーターです。
つまり、「SO WHAT st」というのは、
EAST(東)ブロックとWEST(西)ブロックを結ぶ通りの名前
なのではないでしょうか。

45:28
[45:28]
「E-7」(東地区7番)とあります。
ケンイチとティマはUターンをしてすぐ東地区に戻って来たわけです。
45:39
[45:39]
なんと「GINZA-7」(銀座7番)とあります。
ZONE-1の東地区には銀座まであるようです。
45:46
[45:46]
「EAST-1」(東地区1番)です。

このあとケンイチとティマは革命団にかくまわれます。
(上掲地図の青色破線の矢印)

 ◆ ZONE-1とジグラットの位置関係
大崩壊後の場面で、
ZONE-1とジグラットの位置関係が示唆される場面があります。
01:38:59
[01:38:59]
遠景の塔がジグラットなのでしょう。
そして、近景はZONE-1のメインゲート前広場です。
13:47
[13:47]

僕の作成したメインゲート前の地図が正しいなら、
ジグラットはおそらくZONE-1の中心地の上あたり、
ちょうどケンイチとティマがUターンをした場所の上あたりに
建っているようです。
45:11
[45:11]

ケンイチとティマの逃走経路(ZONE-1の東地区と中央部)の場面では、
多くのビルが映し出されます。
さらに、これらのビルはとても古ぼけていて、
傾いたものも多くあります。
44:20
44:24
[44:20]
[44:24]
 *背景のビルが傾いています。
おそらく、
ジグラットはかつてのマンハッタンの摩天楼の残骸のうえに建っている、
という設定があるのではないかと思います。

 ◆ その他
ティマが革命団の一室で字の練習をする場面で、
部屋のなかに地図が張られていますが、
とくに参考になりそうなものは見つけることが出来ませんでした。
革命団の一室


また、ジグラットから太陽に向けて光線が発射される場面で、
宇宙から地球を望む絵が映されますが、
ここでも参考になりそうなものは見つけることが出来ませんでした。
32:38
[32:38]

地図の作成には直接関係ないことですが、
地上のメトロポリスの街並みがCGで描かれていて、
地下のZONEの街並みが手描きで描かれているのは、
やはり対比を狙ったものなのでしょう。

 ◆ ZONE-1の地図は作成可能か? - 不確かさの意味
こういった作品の製作のセオリーからして、
ZONE-1については詳細な設定と地図が用意されているとは思うのですが、
(そうしないと生きた街並みがつくれません)
実際に作品に映し出されている限りでは、
せいぜい四つのブロック(東西南北)に沿って、
おおまかに地図を作成できる程度のようです。

ZONE-1の街並みはその雑然とした雰囲気こそが魅力なのですから、
明確な地図は作中では提示されず、
あえて大まかなままに止(とど)められている地理関係にそって、
観客もまたZONE-1をあてもなく彷徨(さまよ)うことが求められている、
ということなのでしょう。
さらにその街並みは、
ニューヨークのマンハッタンを中心として、
銀座や両国、上では触れませんでしたが、フランスやイタリア等、
看板の文字を通して、各国の街並みのイメージがいくつも重ね合わされている
ように思います。
ZONE-1は、はっきりと一つのイメージにはまとめられない、
不確かな街なのです。

上に記した僕の考証にはいろいろと不確かな部分がありますし、
実際に僕とは違った地図を作成することも可能かもしれません。
おそらくそういった不確かな要素を含んだままで、
手探りで不確かな地図を作成してゆく工程そのものが、
ZONE-1という街そのものなのだと思います。

ということはつまり、
僕の不確かな考証の道筋をここまで読んでくれたあなたも、
今まさにZONE-1という街の道筋を旅して来たところだ、
ということにもなるでしょう。
自分で地図を作成してみれば、
もっと深くZONE-1という街に入り込むことが出来るだろう、
ということも、最後に付け加えておきましょう。




目次:メビウス、『メトロポリス』を語る
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by moebius-labyrinth | 2006-11-15 20:20 | メビウスの子孫たち
総括『メトロポリス』:出典の詮索と作品の可能性
「メビウス、『メトロポリス』を語る」の総括です。
他の関連記事については以下のインデックスを参照してください。
目次:メビウス、『メトロポリス』を語る
出来れば、他の関連記事をすべて読んでから
この記事を読んでいただけると助かります。

この記事では、

 ・『メトロポリス』の問題は僕たち自身に差し向けられている。
 ・作品の可能性を広げるような解釈を示さないかぎり、
  出典の詮索には意味がない。

ということを述べます。


◆ 総括
さて、
僕なりに『メトロポリス』について調べた結果を挙げてみましたが、
とくに「出典」(des références)に関しては、
ここで挙げたものの他にも多くの仕掛けがあって、
それら全てを挙げることはとても出来ませんでした。
(そんなことをし出すと、それだけで一つのサイトになってしまいます。
 原稿段階で泣く泣く破棄しました)

しかしながら、ここで大切なのは、
これらの「出典」が決して単なる「お遊び」(jeu)に終わってはいない、
ということでしょう。
とくに、
『I Can't Stop Loving You』と
『St. James Infirmary』と
狂騒の20年代前後のアメリカの歴史の知識に関しては、
これらの理解無しには作品の鑑賞すら儘(まま)ならないほどです。

僕は最初この映画を観たときに、
単なる文明批判ものとしか観ていませんでした。
しかし、上記三つの内容をはじめとして色々と調べてみた今は、
その意見を翻さなければならないと思っています。
『I Can't Stop Loving You』と
『St. James Infirmary』の歌詞の内容、
そして最後のBGMのアレンジが
ディキシーランド・スタイルからベイシー・スタイルに変化すること、
これらは全て、
ケンイチがティマを失うことではなく、ティマを失った後のこと、
文明の崩壊ではなく崩壊した後のこと
(すなわち文明批判が役目を終わった後のこと)
こそが、重要な意味を持つということを示しています。
21世紀(映画の公開は2001年)に住む僕たちはすでに、
文明の繁栄には終わりがあること、
文明の批判にも限界があること、
(今さら文明を完全に捨てることは出来ません。
 それを自覚せずにむやみに文明以前の状態に憧れることは
 単なる逃避に過ぎません。
 たとえば、都会の喧騒を逃れて“素朴な田舎生活”に憧れても、
 田舎の現実に打ちのめされるだけです)
を知っています。
文明批判すらすでに古いのです。
では、ケンイチはティマを失った後にどうするのか?
残念ながら映画のなかでは明確に語られてはいません。
(色褪せた写真が提示されるのみです)
好意的に解釈するなら、
おそらくこの問題は、
今この映画を観ている僕たち自身に差し向けられている、
ということになるのでしょう。
答えは僕たち自身が見つけなければならないのだと。

ここは『メトロポリス』のファン・サイトではないので
これ以上深入りすることは避けますが、
(おフランスの漫画のファン・サイトなんですってばっ!)
上述のように、
「出典」が単なる「お遊び」に終わっていないということは、
再度確認しておく必要があるでしょう。
この作品には、僕が挙げた例以外にも、
非常に多くの仕掛けが施されているようです。
それらを際限なく指摘し続けることも出来るでしょうが、
単に出典を詮索するだけでは意味がありません。
それでは、必要以上に作品を煩雑にしているだけです。
僕はそれは、マニアの自己満足でしかないと思うのです。
僕が上に提示した解釈にも限界はあるでしょうし、
もちろん異論はあって当然だと思うのですが、
僕が今回示した種々の考証が、
この作品の可能性を広げることに繋がれば幸いです。




目次:メビウス、『メトロポリス』を語る
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by moebius-labyrinth | 2006-11-15 20:10 | メビウスの子孫たち
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