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フランスのテレビで放映されたと思われる、
大友克洋の『スチームボーイ』のインタビュー動画の全訳です。
動画について詳しくは以下の記事を参照してください。
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大友克洋『スチームボーイ』インタビュー動画:ANIMELAND]
● 「ANIMELAND.com」内「Rencontre avec OTOMO Katsuhiro」
● 同上2ページ目
上記のページにアップされているインタビューの記事に
和訳を付けました。
ただ、このページにアップされているテキストは
インタビューの忠実な文字おこしではなく、
要約に近いもののようです。
おおよそ全体の1/3ほどは削られてしまっているように思います。
残念ながら
大友克洋の発言にはフランス語の吹き替えがかかってしまっていて
聴き取ることは困難ですが、
訳文を作るに当たって可能なかぎり反映させました。
そのため、対訳のかたちで示した日本語の訳文は
必ずしもフランス語の文章の忠実な訳にはなっていません。
それぞれのインタビューに簡単なキャプションを付け、
その後に[ ]でくくって、
インタビュー全体の動画の方の該当する開始時間を付しておきました。
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◆ インタビュー1:時代考証[0:00]
AnimeLand :
Steamboy se deroule a l'epoque de l'Angleterre Victorienne.
De quelle maniere vous etes-vous documentes sur cette periode ?
OTOMO Kastuhiro :
J'ai lu tous les livres
qui traitent de l'histoire a cette epoque en Angleterre,
notamment des romans de DICKENS.
J'ai aussi collectionne des livres de photos de l'epoque,
enfin tout ce que je pouvais trouver au Japon !
Ensuite, nous sommes alles en Angleterre pour faire les reperages,
nous avons visite des musees...
et nous avons aussi invente !
アニメランド:
『スチームボーイ』は
イギリスのヴィクトリア時代が舞台になっていますが、
時代考証などはどのようになされたのですか?
大友克洋:
まずこれを19世紀のイギリスでつくろうということで、
この時代に関連する本すべてに目を通しました。
この時代の雰囲気が分かるようなもの、
とくにディケンズの小説なんか、
なんでしたっけね、『オリバー・ツイスト』であったり。
ヴィクトリア時代の写真が載ってる本なんかも集めましたね。
まぁとにかく、日本で手に入るものなら全部に目を通してます。
最終的には、実際にイギリスにも行って調査もしてます。
博物館へ行き、写真集を買い、
あとは、でっち上げたり(笑)。
*「その時代の写真の本を集めた」
(J'ai aussi collectionne des livres de photos de l'epoque,)
と書いてありますが、実際には
「20世紀のはじめの頃の写真集を集めたり、」
と言っているように聞こえます。
ヴィクトリア時代は1819~1901年です。
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◆ インタビュー2:独自のメカを登場させること[1:16]
AL :
Justment,
quand on prend la liberte d'imaginer ses propres machines,
se sent-on comme un inventeur de cette epoque?
O.K. :
Merci de me comparer a un inventeur !
J'ai attache aussi de l'importance a la realite de l'epoque ;
c'est vrai que l'historie se termine de maniere assez excentrique,
mais le debut du film voulait que ce soit realiste,
c'est pour ca que j'ai rassemble tous les documents possibles.
アニメランド:
なるほど。そのことなんですが、
この映画にはいろいろとユニークなメカが登場しますよね。
まるで当時の発明家が造り出したかのようです。
そういったものを創り出すときに、
当時の発明家になったような気持ちになることは
ありませんか?
大友克洋:
そうですか、ありがとうございます(笑)。
なるべく、リアリティを持ちつつ、
でも最後はぶっとんだかたちで終わりますから、
序盤はリアリスティックに進めたかったんです。
そのリアリティーを出すために、
とにかく可能な限りすべての資料を集めたわけですから。
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◆ インタビュー3:時代設定[1:50]
AL :
Pourquoi avoir choisi comme cadre l'exposition universelle de 1851
plutot qu'une autre ?
O.K. :
Je voulais que le film se deroule
pendant la premiere Exposition Universelle, en 1851.
Dans le faits,
le film se situe en fait davantage a
l'epoque de la duxieme Exposition Universelle
(a Paris 1867, NDLR),
mais c'est imaginaire.
Si on avait vraiment respecte l'eta d'avancement de l'annee 1851,
nous n'aurions pas pu inclure de machines a vapeur,
la scienece n'avait pas encore fait assez de progres !
Comme je voulais inserer toutes les machines
que vous trouvez vers la fin du film,
j'etais oblige de situer le film a cette epoque,
vers la deuxieme Exposition Universelle.
アニメランド:
なぜ、1851年の万国博覧会を、わざわざ物語の舞台に選んだのですか?
大友克洋:
一番最初の万国博覧会にしたかったんですよ。
じつを言うと、この映画は実際にはむしろ
第2回目の万国博覧会(編集部注:1967年の第2回パリ万博のこと)
が舞台として設定されているんですよね。
あくまでイメージとして。
1851年当時の歴史を尊重しようとすると、
時代が古くなり過ぎてしまって、
蒸気機関を最後のほうで出しにくくなってしまうんですよ。
当時はまだそこまで科学が進歩してなかったから。
やっぱりそういうのを映画に出したかったわけだから、
どうしても第2回万国博覧会の時期に
時代設定をせざるを得なかったんですよね。
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◆ インタビュー4:いつまでも子供でありたい[2:43]
AL :
Dans le generique de fin,
on voit des images de Ray
a l'Exposition Universelle de Paris en 1900,
avec en fond des images de la Tour Eiffel.
Or, Ray semble ne pas avoir vieilli!
O.K. :
Voila pourquoi l'animation est interessante (rires) !
C'est parce que j'ai envie d'etre toujours enfant ;
je veux rester un jeune garcon,
j'aimerais bien me souvenir eternellement de ma sensation
quand j'etais petit.
Je voudrais
que les adultes qui viennent au cinema
s'excitent comme les enfants.
Les personnages de dessins animes,
comme Doraemon, ne vieillissent jamais !
アニメランド:
映画のエンドクレジットで、
主人公のレイが1900年のパリ万博に行く場面が映りますよね。
背景にはエッフェル塔も映っていました。
しかし、50年は経っているはずなのに、
レイはぜんぜん年を取っているように見えないんですよ。
大友克洋:
だからアニメーションが良いんじゃないですか(笑)。
いつまでも子供でありたいと思ってるのはね、
僕の願いなんですよ。
少年のままでいたいですよ。
自分が小さかった頃の感覚をずっと忘れないでいたいんですよ。
映画を観に来てくれた大人の人達にも、
子供のように楽しんでもらえたらと思ってます。
だから、ドラえもんはいつまでもドラえもんだし、
アニメの登場人物ってのはいつまでも年を取らないでしょ?
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◆ インタビュー5:『スチームガール』[3:50]
AL :
Pouvez-vous nous parler de Steamgirl,
la suite qui est prevue a Steamboy ?
O.K. :
Je suis en train d'ecrire l'histoire.
Je ne sais pas
si je vais le faire sous forme de film en salles,
ou en video.
Je ne sais pas
sous quelle procedure je vais travailler dessus,
je ne sais meme pas si je serai realisateur !
Mais je suis ne train de m'en occuper.
Je pense que ce sera tres interessant.
アニメランド:
『スチームボーイ』の続編として企画されているという、
『スチームガール』についてお話しいただけませんか?
大友克洋:
そうですね、『スチームガール』というのはいま、
まだストーリーを考えている最中ですね。
映画として劇場公開するか、ビデオとして販売するか、
そういったこともまだ決まってません。
自分がどういった形で関わるかもまだよく分かりませんね。
僕が監督が出来るかどうかもまだ分からないんですよ。
でも、今のところは監督はするつもりはないかな。
まあ、面白い作品になることだけは確かですよ。
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◆ インタビュー6:制作背景[4:44]
AL :
Au depart,
Steamboy devait etre une serie tele.
Pourquoi le projet s'est-il transforme en long metrage ?
O.K. :
Lorsque nous avons entame le projet il y a 10 ans,
nous nous sommes heurtes a des problems d'ordinateur,
de resolution d'images.
Il etait alors quasiment impossible
de faire des images numerisees pour les salles,
il fallait utiliser des equipements qui coutaient tres cher.
On nous a alors conseille d'opter
pour des resolutions plus legeres adaptees a une serie televisee,
qui nous permettait des montages virtuels.
Au depart,
ce projet se presentait comme un essai,
et nous avons compris que meme avec des resolutions assez faibles,
ca coutait tres cher.
On a alors decide d'un bodget assez important,
pour que le film soit rentable,
il fallait finalement faire un film pour le cinema.
アニメランド:
『スチームボーイ』は
最初はテレビシリーズとして企画されていた、と
お聞きしています。
この企画が長編映画に姿を変えた背景には、何があったのでしょうか?
大友克洋:
昔の話だったので10年くらい前の話なんですけど、
コンピュータの精度の問題があって、
レゾリューションの問題ですね、
劇場のレゾリューションでつくることがすごく難しくて、
思い描いていたイメージを実現するためには、
かなり高額な機材を使用する必要があったんですね。
それをやるよりは、
もう少しビデオサイズのレゾリューションでやったほうが、
後々編集し直すことも出来るし、
テレビシリーズとして製作してはどうか、
という話が出て来たわけです。
一番最初はもっとね、
試作っぽい企画で進んでいたんですけども、
それでもやっぱり、解像度が、レゾリューションが低くてもやっぱり、
お金がかかると。
それで、
劇場映画として充分収益を上げるという条件と引き換えに、
充分な予算を下ろしてもらえることになったわけです。
こういった感じで、劇場映画として制作することが決まったんですね。
*「レゾリューション」(resolution)というのは、
いわゆる解像度のことです。
コンピュータの性能が低かったために、
緻密な絵を描くことが出来なかった、ということなのでしょう。
おそらく、蒸気の表現の仕方などを言っているのだと思います。
● 「IT用語辞典e-Words」内「解像度 【resolution】」
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◆ インタビュー7:巨額の予算と責任ある地位[6:15]
AL :
Travailler avec un budget aussi colossal,
rajoute-t-il du poids aux responsabilites ?
O.K. :
C'est vrai.
Je me disais peut-etre que je devrais vendre mon velo,
ou autre chose...
C'est une blague,
je vis bien maitenant !
Je crois que mon vin rouge marche tres bien dans ma tete (rires) !
アニメランド:
巨額の予算が下りただけではなく、
そんな重要なポストまで与えられたのですか?
大友克洋:
そうですね、自分の自転車を売らなきゃいけないかなと思いましたね。
家財道具なんかも売り払わなければとかね。
まあそれは冗談で、こうやってまだなんとか生きてるわけですけど。
だんだんワインが効いてきたかな(笑)。
*アニメ業界のなかで自転車がちょっとしたブームになっていることは、
とくに宮崎駿ファンの間でよく知られるところでしょう。
宮崎駿自らが企画した「ツーリング・デ・信州」という大会が
毎年開かれています。
大友克洋も「スチームボーイ」制作スタッフと共に参加していました。
「自分の自転車」(mon velo)と言っているのも、
そういう背景があってのことなのでしょう。
なお、同大会は以前「ツール・ド・信州」という名前でしたが、
同名の大会が他にあったため、2003年から名称が変更されているようです。
● はてな内「ツーリング・デ・信州」
● 『スチームボーイ』公式ブログ内「[04.08.26] 鈴木杏と大友克洋」
● 「YOMIURI ON LINE」内「アニメーション業界の自転車熱2004」
● 「DIGITAL BEAT」内「スチームボーイスターターキット 1」
● 「DIGITAL BEAT」内「スチームボーイスターターキット 2」
*実際に動画を見ていただければ分かるように、
大友克洋は赤ワイン(vin rouge)を飲みながら
インタビューを受けています。
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◆ インタビュー8:プレッシャー[6:50]
AL :
Apres avoir fait une oeuvre
au retentissement planetaire comme Akira,
se sent-on plus responsable face aux gens qui attendent ?
O.K. :
Je souhaite en effet que le film marche,
mais je ne peux pas controler.
Tout ce que je peux faire,
c'est un film interessant ;
si ca ne marche pas,
je n'y suis pour rien !
J'ai tout donne
アニメランド:
『AKIRA』のような世界的に評価の高い作品をつくった後で、
ファンの期待に応えなければならないというような
責任を感じることはありませんでしたか?
大友克洋:
そうですね、責任感と言いますか、
まあ、それは確かに、
この映画が売れてくれれば良いなとは思いますけど、
こればっかりは自分でしようがないことですから。
自分に出来るのは面白い映画をつくることだけだと思ってます。
もし売れなかったとしても、
しょうがないんじゃないかとも思いますし、
それに関しては一生懸命やったと思ってます。
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◆ インタビュー9:スカーレット・オハラ[7:34]
AL :
D'ou vient le nom de Scarlet O'hara,
qui fait reference a Autant en emporte le vent ?
O.K. :
Lorsque j'ai presente mon projet aux scenaristes et a mon equipe,
je leur avais explique que le personnage de fille
- qui n'avait alors pas de non -
ressemblait a la fille de ce film.
Puis c'est reste comme ca jusqu'a la fin !
J'ai essaye de changer a un moment,
mais on etait tellement habitue a ce nom
et a ce visage qu'il etait devenu difficile de changer de nom.
Tout le monde appelait ce personnage Scarlet !
アニメランド:
ヒロインのスカーレット・オハラという名前は
どこから来ているのでしょうか。
やはり『風とともに去りぬ』からですか?
大友克洋:
そうですね、それはシナリオライターであったり、
スタッフたちに説明するときに、
これはスカーレット・オハラに似ているんだ、
という風に言っていたんです。
その時にはまだ名前は決まっていなかったんですが、
結局最後まで残っちゃったんですよね(笑)。
本当は変えたかったんですけど、
みんなもうスカーレットっていうことになってたんで、
変えられなかったんですよね。
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◆ インタビュー10:映画のテーマ[8:38]
AL :
L'anticipation dans le passe
est-il pour vous le moyen de recreer l'histoire,
de rectifier des erreurs
qui auraient ete commises par les hommes ?
O.K. :
Les etres humains font toujours des erreurs,
mais ils vont vers l'avant.
Je voulais quand meme montrer ce cote positif.
Il est difficile de parler du theme principal du film,
mais je voulais exprimer un cote positif :
les etres humains font des erreurs, se trompent,
mais ils s'ameliorent et progressent.
アニメランド:
当時の人間が未来をどう予測していたのか、ということを考えると、
歴史を書き換えてしまいたいと思うことはないですか?
人類が犯してしまった過ちを修正したい、というように。
大友克洋:
人間はいつも間違いを犯すものだけれども、
でも、とにかく前に進んではいる、
ということをやりたかったんですけども。
僕はやはり、
そういったポジティブな面ってのを表現したかったんですよ。
じゃあテーマは何だ、って言うことは、
言葉で言うのは難しいんですけども、
そういったポジティブな面を描きたかったのは確かです。
人間ってのは過ちを犯すものだ。
間違えることもある。
しかし、その過ちを償うことは出来るし、
前に進むことも出来るんだ、と。
《補記》
インタビュー中にたびたび万国博覧会の話題が出て来るので、
簡単にまとめておきたいと思います。
● ウィキペディア日内「国際博覧会」
上記のページの記述によると、以下のようになるようです。
1851年 第1回ロンドン万国博覧会(『スチームボーイ』の舞台)
1867年 第2回パリ万博(『スチームボーイ』の実質的な舞台)
1889年 第4回パリ万博(エッフェル塔が建設される)
1900年 パリ万博(エンドクレジットで映ったレイの姿)
それにしても、同時通訳で
「レゾリューション」に瞬時に「resolution」という訳をつけるって、
ものすごいことですね。
すげぇ、さすがプロだぜ。
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