さて、以前からちょっと気になるネタだった
「メビウスの娘の名前はナウシカなのか?」問題なのですが、
どうやら信用のおける証言を見つけることが出来ました。
そもそも、メビウスの娘の名前がナウシカらしいという話は、
ファンのあいだではそこそこ知られたネタだったようなのですが、
いかんせん決定的な証拠というのに欠けていて、
ただの都市伝説として、本当のこととは思われていない話だったようです。
たしかに、一通り検索をかけてみても、
見つかるのは以下のような記事だけでした。
●
「Nausicaa.Net」に投稿された記事(july5,2004)
英語で書かれた宮崎駿のファン・サイトとして有名な、
「Nausicaa.Net」に投稿された記事です。
今年の冬からフランスで開催されるという「MIYAZAKI-MOEBIUS」という
博覧会の紹介記事のなかで、あくまで紹介者のKarl Loeffler氏による
補足という形で、以下の一節が投稿されています。
Incidently, Moebius' daughter is named Nausicaa.
ところで、メビウスの娘の名前はナウシカなんですよ。
*「Incidently」は「Incidentally」のことでしょう。
「偶然に、付随的に、ところで、ついでながら」というような
意味です。
残念ながら、あくまで個人の投稿のなかで付随的に触れられている
程度です。
●
「Tirade(くだくだしい説明、というほどの意)」
というブログに
投稿された記事
残念ながら、投稿の内容は「Nausicaa.Net」に投稿されたものと
まったく同じです。
ただし、上記の博覧会に際して撮られたとおぼしき、
メビウスと宮崎駿の2ショットの写真を見ることが出来ます。
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「La foret des Oomus(王蟲の森)」の
記事
フランス語で書かれた宮崎駿のファン・サイトの記事。
メビウスの娘の名前については言及されていませんが、
メビウスが描いたナウシカの絵と
宮崎駿が描いたArzakの絵が紹介されています。
というわけで、実質Karl Loeffler氏によるちょっとした言及のみ、
という貧弱なソースしかなかったわけです。
たしかに、メビウスがいくら宮崎駿と深い交流を持っているとしても、
娘の名前がナウシカ、なんていうのは出来すぎた話のように思えます。
ところが!
じつはこの件に関してかなり信用のおける証言が、
身近なところに転がっていました。
「三鷹の森ジブリ美術館」のサイト内の「美術館日誌」というコーナーに、
以下の一節が記されています
(2002年8月1日の記事)。
フランスを代表するマンガ家、イラストレーターのメビウス氏が来場。
吾朗さん、宮崎館主、鈴木プロデューサーが館内を案内した。
一緒だったメビウス氏の娘さんの名前はなんと「ナウシカ」。
はじめは緊張気味のナウシカちゃんも、ネコバスで大はしゃぎだった。
くはぁ~、やりました。これは信用していいんじゃないかと思います。
やはりメビウスの娘の名前は「ナウシカ」だったのですね。
それにしても、本当に「ナウシカ」と名付けちゃうなんて、
やるなメビウス。筋金入りのオタクと見たっ。
この情報は、当ブログの訪問者ツヨジマロさんから
メールでご教授いただきました。
ありがとうございました!
同じメールによると、
宮崎駿監督の映画『紅の豚』の公開当時に出版された関連本に、
メビウスのインタビューというのが載っていて、
そこでも娘の名前について触れられているようです。
ツヨジマロさんの記憶によると、
その当時ちょうどこの娘さんが生まれた、ということが語られていたそうです。
関連事項をまとめると次のようになるでしょうか。
1938年
メビウス誕生(0歳)
1941年
宮崎駿誕生(0歳)
1982年
メビウス(44歳)
宮崎駿(41歳)
漫画『風の谷のナウシカ』が雑誌「アニメージュ」にて連載開始。
1984年
メビウス(46歳)
宮崎駿(43歳)
映画『風の谷のナウシカ』が公開される。
1987年
メビウス(49歳)
宮崎駿(46歳)
フランスで映画『風の谷のナウシカ』の吹き替え版、
『Le vaisseau fantome(幽霊船)』のビデオがリリースされる。
(くわしくは→
■)
*おそらくこの前後に、メビウスは『風の谷のナウシカ』に触れたのでしょう。
今度娘が生まれたら「ナウシカ」と命名しよう、
と固く心に誓うオタクの鏡メビウス。
1992年
メビウス(54歳)
宮崎駿(51歳)
ナウシカ(0歳?)
映画『紅の豚』が公開される。
*おそらくこの前後に、メビウスに娘が誕生。満を持して「ナウシカ」と命名。
メビウスご満悦。
2002年
メビウス(64歳)
宮崎駿(61歳)
ナウシカ〈10歳?)
メビウス、愛娘ナウシカと一緒に来日。
三鷹の森ジブリ美術館にてますますご満悦。
ナウシカちゃん、ネコバスでおおはしゃぎ。
今年(2004年)に、メビウスは66歳、宮崎駿は63歳、
ナウシカちゃんは推定12歳前後になるわけです。
それにしても、メビウスって、推定54歳で子供をもうけるって、
何と言うか、コメントに困りますね。
そこらへんが、精力的に活動を続ける
世界の漫画の神様たるゆえんなのでしょうか。
なお、映画『風の谷のナウシカ』のフランス語吹き替え版の情報に関しては、
ジブリアニメの海外進出情報を提供するページ、
「くろねこ亭」さんを参照しています。
●
「くろねこ亭」トップページ
●上記サイト内、
フランス語吹き替え版の説明ページ
●上記サイト内、
メビウスの『風の谷のナウシカ』に関する言及の記事
(ニュース>2000/10/20)
以下抜粋。
フランスの漫画家/アーティスト、メビウスが、
製作中の長編アニメーションに関するインタビューの中で
宮崎監督に言及しています。
資金も人手も足りない中でイマジネーションを広げることにより
革新的な作品を作りたい、と述べた後で、
「メビウスとフォスター(プロデューサー)は
このバランスを完璧に取っている例として、
日本のアニメマスター、宮崎駿と大友克洋の名前を挙げている。(中略)
『私の理想は通常のアニメーションであれ、CGアニメーションであれ、
モンスターも、飛んでくる物体も、特撮もない、
通常の生活を送っている人間に焦点を当てた、
より親密な映画を作ることだ。
宮崎は彼のアニメーションでこれをやった』」としています。
(同じ文章のさらにくわしい訳を作ってみました。
くわしくは、
こちらへ)
さて、おかげさまで「メビウスの娘の名前はナウシカなのか?」問題にも
一応の決着がついたようですが、
たんに娘の名前を詮索するだけでは、
つまらないトリビアリズムに終わってしまうように思います。
そこで、今年の冬から開催される「MIYAZAKI-MOEBIUS」展の、
フランス語による公式サイトにアップされている記事を、
例によって和訳してみるのもおもしろいんじゃないかと考えています。
旬のネタですし、個人的にも興味があるので、
「旧公式サイト発掘計画」を一時凍結して、
挑戦してみるのも悪くないでしょう。
次回からは、早速その和訳に挑戦して見たいと思います。
《追記》
ナウシカちゃんの写真を発見してしまいました。
くわしくは以下の記事を参照してください。
[
子孫たち>メビウスの娘ナウシカちゃんの写真発見]
また、ナウシカちゃんの推定年齢の計算が間違っていました。
正確には2002年に推定10才です。訂正しておきました。
関連→
[子孫たち>宮崎駿との関連>メビウス作ナウシカのポスター]
[子孫たち>宮崎駿との関連>ナウシカへの影響、メビウスの娘の名前]
[子孫たち>宮崎駿とメビウスの対談]