6月27日からパリの南部モンパルナス地区で
メビウスの展覧会が開かれています。
この展覧会のヴェルニサージュの様子が
フランス語によるメビウスのメーリングリストでレポートされているので、
簡単にご紹介したいと思います。
◆ モンパルナスのメビウスのブティック
パリ市の南部モンパルナス地区に
メビウスのブティック兼アトリエがあって、
そこでメビウスの展覧会が開かれています。
このブティックについては以下の記事を参照してください。
[
モンパルナスのメビウスのブティック兼アトリエ]
展覧会の詳細は以下の通りです。
場所:27 rue Falguiere(ファルギエール通り27番地)にある
「"Moebius Production-Jean Giraud"」で開催される
日時:6月27日~7月21日
水曜日、木曜日、金曜日のみ開催
11時~19時
また、本展のポスターの画像がウェブ上にアップされています。
● 「MAJOR GRUBERT」内「Affiches Dessins Serigraphie>Affiches Fesrival」
メビウスの展覧会のポスターの画像が集められているページです。
年号順に並んでいるなかの、
「2005 MoebiusProduction」とあるところをクリックしてください。
◆ メビウスのメーリングリストのレポート
本展のヴェルニサージュがどうやら6月24日に開かれたようです。
そのレポートがメビウスのメーリングリストに投稿されています。
今のところ3通のレポートが投稿されています。
● メビウスのメーリングリスト内「3442, Re: [giraud-moebius] Expo Moeb 27 r. Falguiere, 40jours, 2005/06/25 15:24」
● 同上内「3445, Re: [giraud-moebius], mazere.claude@club-internet.fr, 2005/06/25 21:03」
● 同上内「3446, Re: [giraud-moebius], Eric T, 2005/06/25 23:31」
概要だけ押さえておきましょう。
・展示されている作品は水彩画8点、モノクロのデッサン1点、小さい絵3点。
(2通目のmazere氏のレポートによる。
1通目の40jours氏のレポートによると、水彩画10点、デッサン1点)
モノクロのデッサンは、
本来水彩画として仕上げられる予定であったものが、
時間の都合でデッサンのまま展示されている。
水彩画とデッサンのサイズはA3見当。
・絵のモチーフはギリシャ神話の神々。
・これらの絵は販売もされていて、価格は3500~6000ユーロ。
[約46万~80万]
(びっくりするほどの高値ですが、
原画をそのまま売っているということなんでしょうか)
メビウスと実際に話すことも出来たようです。
とくに興味深い部分とあわせて訳出しておきましょう。
◆ 2通目のmazere氏のレポートより
Jean, en chemisette, avait l'air tres en forme ;
Isabelle et Claire tres decontractees.
メビウスは半袖を着て、すごく元気そうだったよ。
奥さんのイザベルとクレールもとても寛(くつろ)いでいた。
*「クレール」(Claire)は、
「クレール・シャンパヴァル」(Claire Champeval)
のことだと思います。
「宮崎駿―メビウス」展カタログの奥付に、
スターダム・プロダクション(Stardom production)のスタッフとして、
「Claire Champeval」(クレール・シャンパヴァル)
の名前がクレジットされています。
「シャンパヴァル」はメビウスの奥さんイザベルの旧姓なので、
たぶんイザベル方の親族の人なのでしょう。
「スターダム・プロダクション」は、
メビウスのマネージメントをしている会社のようです。
J'ai demande a Jean comment lui venait une telle inspiration.
《Je n'ai pas d'idee preconcue
lorsque je me retrouve devant une feuille blanche ;
les idees viennent progressivement en dessinant.
Le reste est affaire de technique :
il faut etre capable de retranscrire ses idees sur le papier》.
メビウスに、どうやってインスピレーションを得るのか訊いてみたんだ。
「白い紙を前にした時には、あらかじめ何も考えないようにしているんだ。
アイデアっていうのは、徐々に形を成してくるものだから。
あとはテクニックの問題だね。
そうやって出てきたアイデアを、
紙の上にトレースし直すようにしなくちゃいけない」
Jean a precise
que realiser une aquarelle etait quelque chose de passionant.
《C'est comme tailler un diamant brut (le dessin en n&b)
pour en faire une pierre precieuse rutilante.
Je suis tres excite
quand je commence a aquareller un dessin en n&b.
Je suis impatient de voir le resultat》.
メビウスは、
水彩画を描くのはとても面白い経験だったとはっきり言ってたな。
「水彩画を描く作業っていうのは、
ダイアモンドの原石(モノクロのデッサン)をカットして、
キラキラ輝く宝石を作り出すのに似ている。
モノクロのデッサンに水彩で色を塗りはじめる瞬間は、
とても興奮したよ。
はやく結果が見たくて仕様がなかった」
◆ 3通目のEric氏のレポートより
je telephone par hasard pour savoir si l'expo est commencee
et c'est Moebius lui-meme qui me repond
"Oui, oui, je suis la toute la journee".
展覧会が始まっているかどうか知りたくて、
一か八かで電話してみたんだけど、
なんと、電話に出たのはメビウス本人だったんだ。
「ええ、一日中いますから」
*メビウスって言えば、
まがいなりにも世界的アーティストだと思うんですが、
良いのか? メビウスが電話番してて良いのか?
[Eric氏が会場に着いたときの様子]
Moeb est a sa table,
en train de noircir quelques pages d'"Inside Moebius" 7eme cahier.
メビウスは自分の机で、
『インサイド・メビウス』の7番目の折り丁に
一生懸命手を加えているところだった。
*「cahier」は普通は「ノート」という意味なんですが、
ここは「折り丁。
製本するため、印刷された紙を、ページ順になるように折ったもの」
のことだと思います。
『インサイド・メビウス』(Inside Moebius)は
メビウスの最新作の名前で、
今のところ第1巻が刊行されているので、
おそらくその続巻の原稿に手を入れていたのではないかと思います。
parution des cahiers "Inside Moebius" peut-etre interrompue,
suite succes tres relatif du tome 1.
『インサイド・メビウス』の原稿の刊行はもしかしたら無理かもしれない。
続巻を出すかどうかは第1巻が成功するかどうかに拠る。
il remettrait son site,[中略]
c'est sa femme qui doit s'en occuper
mais comme elle doit s'occuper de trop de choses a la fois,
j'ai l'impression que les choses ne se font pas vite
[後略].
メビウスは自分のサイトの管理を他の人に任せているらしい。
管理をしているのはメビウスの奥さんなんだけど、
彼女は今とても沢山の仕事を抱えているみたい。
すぐにどうにか成るようなものでもない感じだった。
sur le projet de l'artbook, ca doit aussi se faire.
Moeb me repete qu'il n'y a pas de tradition en France
de faire des artbooks sur des artistes mineurs (je m'etrangle).
c'est vrai que
la BD et meme l'illustration sont encore consideres comme etc.....
(vieux debat)
画集を出版する予定はないのかってことも訊いてみた。
メビウスの画集なら、出版されたっておかしくないからね。
メビウスは、
マイナーな画家の画集なんて出版されないんだよ、
それがフランスの伝統ってやつさ、
って言ってた(メビウスが「マイナーな画家」だって?!)。
でも確かに、
ベデやイラストは、まだまだマイナーなジャンルなんだよね……。
(ずっと言われ続けて来たことではあるけれども)
*「artbook」についてのメモ。
● 「英辞郎」内"art book"での検索結果
「美術書」と訳されている。
● ウィキペディア仏内「Manga」
「Types de mangas」の項に以下の一節あり。
Associes aux mangas,
on trouve les artbooks,
recueils d'illustrations en couleur d'images originales,
qui incluent parfois des histoires courtes.
「漫画」に関連して、artbookが出版される場合もある。
artbookとは、
書き下ろしのカラー・イラストを集めたものである。
短い物語が添えられる場合もある。
● ウィキペディア米内「Artbook」
いわゆる「美術書」に該当すると思われる。
ベデの画集は通常は「portfolio」(ポートフォリオ)と呼ばれるが、
ここでは芸術作品を集めた「美術書」という意味で
使われているのであろう。
フランスでもまだまだ漫画の地位は低いようだ。
c'est Isabelle et Jean qui tiennent le local eux-meme quasiment,
donc c'est artisanal.
店は、ほとんどイザベルとジローが切り盛りしていた。
手作り風だったよ。