前回の記事の補足です。
[
『ARZACH』下訳その13]
1991年当時のメビウスをめぐる状況を確認しておきたいと思います。
● DARGAUD社公式サイト内メビウスのバイオグラフィー
関係のありそうな箇所だけ訳出しておきます。
[メビウスは1984年からアメリカに居を移し、
アメリカを中心に活動していた]
1988
[中略]
Tout ca n'empeche nullement Giraud
de rentrer vivre en France.
[アメリカでの種々の活動につづいて]
しかし結局、メビウスはこれらの活動をすべて捨てて、
フランスに帰国することになった。
1991
Moebius concoit un numero special d'A Suivre.
Parution de Moebius, entretiens avec Numa Sadoul.
雑誌「A Suivre」誌の特別号を企画する。
『メビウス ヌマ・サドゥルと語る』を刊行。
メビウスの経歴は
おおまかに四つの時期に区分できるように思います。
・第1期(60年代):伝統的ストリップの時代
伝統に忠実であった時代。
米仏の漫画の伝統的な形式“ストリップ”にしたがって、
作家活動を開始する。
本名とおなじペンネーム「ジャン・ジロー」をおもに使用。
米仏の漫画界で伝統的なジャンル“ウェスタンコミック”の、
「ブルーベリー」シリーズを中心に活動する。
・第2期(70年代):ベデ革命の時代
子供向けのストリップから
大人向けの芸術性を重視したストーリー漫画への革命を主導した時代。
ペンネーム「メビウス」のもとにSF作品を制作。
代表的な作品は『アルザック』。
・第3期(80年代):海外進出の時代
アメリカに居を移し、ベデの海外進出を主導した時代。
漫画のほかに映画のデザイナーなどの仕事もこなす。
「ランカル」シリーズ、「エデナの世界」シリーズ、
「ブルーベリー」シリーズ、
さらに漫画以外の活動と、
メビウスがもっとも多産だった時代。
日本の「漫画」にも影響を与える。
・第4期(90年代~):メビウス自身が変わる時代
いま現在この時期のただ中にあるため、要約は困難。
ただし、
『アルザック・ラプソディ』ではじめてアニメ監督をこなしたり、
「ブルーベリー」シリーズに
「メビウス」的なカラーリングを導入したりと、
新たな展開を見せてくれていることは間違いない。
期待を込めて、メビウス自身がさらに新たな展開を見せる時代、
としておきたい。
つまり、1991年というのは、
フランスの漫画界を牽引してきたメビウスの活動が、
ちょうど一段落ついた時期であるわけです。
すでに功成り名遂げたメビウスが、
自分が今まさに「メビウス」になろうとしていたころ、
革命前夜の自身について語っているのが、
『アルザック』の序文であるわけです。