フランスで運営されている
メビウスのメーリングリストへの参戦記です。
下記のプログラムに従います。
1. メビウスのメーリングリストの概要
2. メビウスの画像保管庫の概要
3. フランスでの日本の「漫画」の生の感想など
[
後編]
◆ メーリングリストの概要 -
資料の提供・共有場
◆ 概要
問題のメーリングリストの正式名称は
「Mailing liste francophone GIRAUD-MOEBIUS」
(フランス語によるメーリングリスト ジロー・メビウス)
と言います。
名称に「francophone」(フランス語による)とあるとおり、
残念ながらやり取りはすべてフランス語なんですが、
毎日メビウス関連のニュースが投稿されています。
● メビウスのメーリングリスト(概要ページ)
● 同上、最新投稿一覧ページ
概要のページには以下のようにあります。
Description:
Ce groupe permet d'echanger sur le travail
du grand dessinateur Jean Giraud alias Moebius.
解説:
偉大な漫画家ジャン・ジロー・メビウスの作品に関して、
交流をはかって行こうとするグループです。
メーリングリストへの参加は誰でも自由、ともあるのですが、
やはりこういうものにはその場特有の雰囲気というものがあって、
投稿もフランス語に拠ることがルールになっているので、
メーリングリストへの参加方法についてはあえて解説しません。
基本的に、メビウス関連の興味深い情報(画像付きが望ましい)を
フランス語で提供・共有することを目的とするグループです。
あなたがもし、
日本でしか手に入らないようなメビウスの興味深い情報を持っていて、
(画像付きが望ましいです。
どこかにアップしてメッセージ本文のなかにURLを書き添えてください)
最低限のフランス語の知識があって、
(えーと、僕は無いんですが)
メビウスへの愛とメーリングリストのメンバーへの敬意を忘れないなら、
(これが一番大切だと思います、本当に)
歓迎してもらえると思います。
みんなすごく親切な人ばかりです。
◆ 見方、利用の仕方
そして僕が何より凄いと思うのが、
このメーリングリストのやり取りが一般に公開されているという点です。
メーリングリストに提供されている情報そのものは、
メーリングリストに参加しなくても誰でも見れるのです。
● メビウスのメーリングリスト
上記のページのなかの中段「Overview」(概要)とある欄のなかの、
カレンダーの部分(Jan, Feb, Mar,...Dec)を見てください。
月の略称は英語なので多分大丈夫でしょう。
月の略称の下にある数字はその月に投稿されたメッセージの数なんですが、
この数字をクリックすることで、
その月に投稿されたメッセージの一覧ページが開くようになっています。
試みに、2005年1月のページを開いて見ましょう。
● メビウスのメーリングリスト内2005年1月の投稿一覧ページ
「Suject」(投稿の題名)とある欄のテキストをクリックすると、
そのメッセージのページが開きます。
投稿一覧ページの左側最下段にある
「displayed messages per page : 」
(以下の投稿数を一度に表示する)
とある左横のプルダウンメニューのなかから数字を選択することで、
表示件数を選ぶことも出来ます。
● メビウスのメーリングリスト内最新投稿一覧ページ
最新投稿の一覧ページです。
ここで最新の投稿をチェックすることが出来ます。
さらに、RSSフィードまで配信されています。
● メビウスのメーリングリスト
上記ページのなかの最下段、
「RSS Feed Service」(RSSフィード・サービス)
とある右横の[XML]とあるオレンジ色のボタンがそれです。
とりあえず、最新の投稿をチェックしてみて
メッセージのなかにURLが記入されていたらクリックしてみる、
というだけでも充分恩恵に預かれるのではないかと思います。
(各メッセージの最後にある「.domeus.」を含んだURLは
このメーリングリスト・サービスの一般情報のものなので、
クリックするには及びません)
◆ グラバート少佐のアーカイブ -
真に偉大な、画像保管庫
◆ 概要、見方、利用の仕方
そして、これがもう本当に凄いところなんですが、なんと、
このメーリングリストを通して集められたメビウスのレアな作品の画像が、
保管庫のサイト上で一般に向けて公開されています。
● 「LES ARCHIVES NUMERIQUES DU MAJOR GRUBERT」
「グラバート少佐のデジタル・アーカイブ」という意味です。
「Major Grubert」(グラバート少佐)というのは、
メビウスの作品の有名なキャラクターの名前です。
フォルダのアイコンが並んでいると思いますが、
その横にあるテキストをクリックして見てください。
(テキストの右横の数字は
そのフォルダに収録されているファイルの数です。
日々増え続けています)
たとえば「Affiches Dessins Serigraphie」
(ポスター、デッサン、シルクスクリーン)とかどうでしょうか。
● 同上内「Affiches Dessins Serigraphie」
今度は、ページの上半分はフォルダのアイコン、
下半分は画像ファイルのアイコン
(白い四角のなかに、赤と緑の丸と絵筆が描かれているアイコン)
が並んでいると思います。
この画像ファイル・アイコンの右横のテキストをクリックすることで、
画像を表示させることが出来ます。
ページの最下段にある
「Afficher toutes les images (数字 Ko)」
〔すべての画像を表示する(数字 キロバイト)〕
とあるところをクリックすると、
このページのなかの全画像を一度に表示させることが出来ます。
ただし、当然データの量は重くなるので注意して下さい。
「Ko」とある左横の数字がデータの量です。
「Ko」は「キロバイト」という意味です。
◆ 共有の場、ということ
この「グラバート少佐のアーカイブ」でなんと言っても素晴らしいのは、
メビウスのレアな作品の画像をみんなで共有できるようにしてある、
という点でしょう。
トップページには以下のようにあります。
● 「グラバート少佐のデジタルアーカイブ」
Liste des repertoires et/ou images disponibles
誰でも自由に使える画像/フォルダの一覧
「disponibles>disponible」というのは、
「自由に使える、入手できる」という意味です。
ページ最下段には以下のようにあります。
Site collectif a but non lucratif
concu grace aux images
fournies par la Mailing liste francophone GIRAUD-MOEBIUS
「フランス語によるメーリングリスト ジロー・メビウス」
を通して提供された画像のために用意された、
非営利的な共同サイト
Pour sourmettre des images : [メールアドレス]
画像を提供して頂ける場合は右記へ:[メールアドレス]
*画像を提供するばあいはどこかにアップした上で、
そのURLをメールの本文に記入するのが良いでしょう。
一人のマニア、コレクターがメビウスの書籍を独占してしまうのではなく、
みんなで情報を持ち寄って、
みんなで(メーリングリストのメンバーに限らず、“みんな”で)
メビウスのレアな作品の画像を共有できるようにしてあるのです。
(保管してある画像は
あくまで現在入手が困難な作品の画像に限られています)
もうね、あんたらどこまで凄いのかと。
ほんと、マジで尊敬しますよ、マジで。
日本のファンとしても最大限の敬意を払うべき、
真に偉大なサイトだと思います。
個人的にもっとも尊敬しているサイトです。
おかげで、メビウスの作品中屈指のレア度で知られる
画集『LA CITE FEU』(火の街)の画像を
思う存分楽しむことだって出来ちゃうのです。
● 「グラバート・アーカイブ」内「TT TL Portfolio>City of Fire」
この鮮明かつ大サイズの画像! そしてもちろんこの素晴らしい内容!
オークションでは100万円単位で値が付けられることもある、
内容が素晴らしいながらも入手の困難な作品の画像を、
こんなに簡単に楽しむことが出来るのです。
あまりに偉大すぎて泣けてきますよ、本当に。
◆ 補足、概要解説ページ
● 「GIRAUD-MOEBIUS.COM」
メーリングリストとアーカイブの概要解説ページです。
「アーカイブのほうは、
メーリングリストのメンバーが画像を共有するための保管庫です。
でも、著作権はメビウスにあることはくれぐれも忘れないでね」
なんてことが書かれてあります。
◆ メーリングリスト参戦記 -
フランス人おそるべしっ
さて、じつはちょっとした縁があって、
僕もこのメーリングリストに参加させてもらえることになりました。
日本の「漫画」のヨーロッパでの評判など
いろいろと興味深いことを教えてもらえたので、
簡単ながら紹介してみたいと思います。
感想を一言で言うなら、「フランス人おそるべしっ」です。
ヤツらは日本の「漫画」について
恐ろしいほどの知識と熱い関心を持っています。
僕より「漫画」について詳しいです。いやほんとマジで。
◆ 手塚治虫
まず僕は、簡単に自己紹介をしたうえで、
日本の「漫画」にメビウスが与えた影響について概説してみました。
メビウスの多大な影響を受けた日本の漫画家として、
大友克洋、宮崎駿、鳥山明、手塚治虫の名前を挙げてみたんですが、
それに対する反応がのっけから凄いです。
[僕]
日本の漫画家、とくに
大友克洋、宮崎駿、鳥山明、手塚治虫は、
メビウスの多大な影響を受けているんですよ。
[Ralph(ラルフ)]
Je sais qu'en 1982 Osamu Tezuka a fait conference
au Ikebukuro Seibu Studio sur Moebius.
Y a t'il en une publication?
1982年に、池袋西武スタジオで、
手塚治虫がメビウスについて講演を開いてるんでしょ?
知ってる知ってる。
何か資料とかないかな?
おっしゃる通りでございます。
日本でのメビウス関連の情報もしっかりチェックされてるんですね……。
[
手塚治虫とメビウス:82年の邂逅]
また、
僕が手塚治虫とメビウスが一緒に映っている写真を紹介したところ、
さっそくメーリングリストのメンバーが補足情報を追加してくれました。
● メビウスのメーリングリスト内「3577, Re: [giraud-moebius] Merci tout le monde, Terramata, 2005/07/15 1:15」
手塚治虫とメビウスは1982年7月27日に
京都と奈良を観光旅行しているのですが、
この旅に同行した
「Francois Corteggiani」(フランソワ・コルテジアーニ)
というベデの有名な原作者が、
旅の模様をレポートしてくれているようです。
● 「mangakana.com」内
「from japan>Il y a plus de 20 ans au pays d'Astro Boy...」
このページについては追々訳を付けたいと思っています。
でもね、こんなのは次から始まる怒涛の質問ラッシュへの、
ほんの序章に過ぎなかったのです。
次からはさらに凄いっす。
◆ 松本大洋
[Li-An(リー・アン、だと思います)]
On pourrait peut etre parler des auteurs japonais
en dehors des plus connus
qui semblent inspires par Moebius.
Je pense a Terada et et ...zut,
je pensais avoir un de ses albums.
Le titre c'est genre "Numero 9".
メビウスに影響を受けている日本の漫画家といったら、
有名な人以外にもいるんでしょ?
誰か教えてくれないかな、たとえば寺田(克也)とか、
えーと、えーと、うーん思い出せないな……。
僕も、そういう漫画家の単行本を
一冊買ってみようと思ってたことがあったんだけど。
なんだったけ、『ナンバーナイン』?
[Olivier(オリヴィエ)]
Number 5 de Taiyo Matsumoto.
Excellent auteur influence par des auteurs comme Moebius,
Prado ou de Crecy.
Il a bon tout :o)
Je recommande Amer Beton du meme auteur,
mais pas facile a trouver car non reedite.
松本大洋の『ナンバーファイブ 吾』ね。
メビウスとか、プラド、クレシーなんかに影響を受けてる、
すばらしい作家だよね。
良いセンスしてると思う :o)[笑ってる顔の絵文字]
松本大洋といったら何と言っても『鉄コン筋クリート』!
でもフランスじゃ再版されてないから、
探すのに一苦労なんだよね。
松本大洋がフランスでも人気があるのは知ってたんですが、
まさか寺田克也にまでチェックを入れてるとはっ。
たしかに松本大洋もメビウスのファンで、
昨年日本でも発売されたメビウスのアニメDVD
『アルザック・ラプソディ』の広告にも、
松本大洋がメッセージを寄せていたりします。
僕にとってメビウスは奇跡の人、
永遠のヒーローです。
松本大洋
「Miguelanxo Prado」(ミゲランゾ・プラド、ミゲランショ・プラード)
「Nicolas De Crecy」(ニコラ・ド・クレシー)
はどちらもフランスの有名な漫画家です。
寺田克也も、
メビウスに影響を受けている漫画家、イラストレーターとして
知られています。
◆ ヨーロッパの「漫画」熱
[Christophe(クリストフ)]
En ce qui concerne le manga;
il y a depuis plusieurs annees maintenant une folie manga
et nous decouvrons beaucoup d'auteurs de talents japonais ,
chinois ou coreens
et les dessins animes de Miyazaki et de Otomo
ont accentues ce phenomene.
Moebius lui meme est un passionne de mangas
et s'y interesse depuis tres longtemps.
Personnellement,
J'ai commence a aime les mangas avec AKIRA de Otomo
dont la qualite du dessin et de la mise en page
est extraordinaire.
Puis j'ai apprecie Taniguchi avec l'homme qui marche.
Terada est quelqu'un qui est impressionnant dans son dessin
et sa mise en couleur (je ne connais que Saiyukiden)
et puis beaucoup d'autres dont je ne rappelle plus les noms.
(En plus je suis de Limoges
et notre ville est jumelee avec SETO
et expose son savoir faire
a l'exposition universelle jusqu'au 25 septembre.[後略]
「漫画」について:
ヨーロッパで「漫画」が熱狂的に迎えられるようになって、
すでに何年も経っている。
日本や中国、韓国のすばらしい漫画家たちが沢山紹介されてるよ。
そして、宮崎駿と大友克洋のアニメ映画が、
この「漫画」熱に拍車をかけたんだ。
メビウス自身も「漫画」の熱狂的なファンで、
もうずっと前から「漫画」に注目して来ている。
僕は、大友克洋の『AKIRA』に出会ってから
「漫画」が好きになった。
『AKIRA』の絵のクオリティーや構図の取り方は、
本当に凄いと思う。
あと、『歩く人』を読んで谷口ジローもすごいと思うようになった。
寺田克也は、とくにその画力と色彩感覚がすばらしい、
すごい作家だと思う(『西遊記伝』はほんと最高だと思う)。
えーと、今すぐ名前は出て来ないけど、
すばらしい漫画家はもっともっとたくさん紹介されている。
(あと、僕はじつはリモージュ市に住んでて、
リモージュ市が日本の瀬戸市と姉妹都市な関係で、
9月25日まで瀬戸物の博覧会が開かれてるんだよ)
あんた、すごいよ……。
韓国の漫画は「Manhwa」(マンハ)という名称で、
日本の「漫画」の影響を受けながらも
独自の表現領域を開拓している漫画として、
フランスでも注目されているようです。
えーと、恥ずかしながら、
僕はこの中で『AKIRA』しかチェックしてません。
最後はちょっと脱線してますが、この気持ちもまた嬉しいです。
◆ 寺田克也、谷口ジローの新作
[Li-An(リー・アン)]
A propos de Terada[中略]:
Saiyukiden a ete traduit et publie chez Delcourt.
Si le dessin impressionnant,
je ne suis pas convaincu par l'histoire (?).
A propos de Taniguchi:
il doit publier un album chez Dargaud
avec JD Morvan au scenario.
C'est a dire qu'il publierait directement en France.
寺田克也について:
『西遊記伝』はデルクール社から翻訳出版されたんだ。
絵はたしかに凄いんだけど、
ストーリーのほうは僕は“?”って感じだった。
谷口ジローについて:
シナリオのJDモルヴァンと組んで、
ダルゴー社からアルバムを出す予定だそうだよ。
つまり、フランスでじかに作品を出版しちゃうってことさ。
谷口ジローがついにバンド・デシネを出版する予定だということが
分かっているのですが、
[
谷口ジロー特集記事@「Epok」]
これか? これがそうなのか?!
● 出版社Dargaud(ダルゴー)社公式サイト
一応"taniguchi"でサイト内検索を掛けてみたんですが、
ヒット件数0でした。
ダルゴー社というのは、ベデの伝統的な大手出版社です。
僕の知る限りでは、
いままで日本の「漫画」の翻訳書などは手掛けていないと思います。
[
後編]につづきます。