フランスのアニメ専門誌「AnimeLand」の公式サイトで公開されていた、
メビウスの『メトロポリス』評の下訳です。
● ウィキペディア日内「メトロポリス (漫画)」
● 『メトロポリス』公式サイト
● アマゾン日内『メトロポリス』
当サイトの訪問者真さんから提供していただいた資料です。
ありがとうございました。
AL:
Les principaux ambassadeurs de l’amour, dans Métropolis,
sont aussi ceux qui n’en ressentent pas, à savoir les robots.
アニメランド:
さきほど“愛”とおっしゃいましたが、
『メトロポリス』の登場人物はじつは愛を知らない者たちですよね。
ロボットですから。
M:
C’est tout à fait clair.
Les obstacles que l’on met à leur accession au bonheur
fait qu’ils rentrent dans une rage destructrice
qui est tout à fait à l’image de la destinée des humains,
on retrouve le même schéma.
Comme c’est surmultiplié par la surpuissance technologique,
ce processus psychique du refus de l’amour
qui débouche sur le désir de destruction
prend des proportions tout à fait spectaculaires.
Comme, à contrario,
c’est pourtant l’amour qui empêche la destruction totale.
Je trouve qu’il n’y a pas beaucoup de films
qui débouchent sur une thématique aussi essentielle,
aussi enthousiasmante de profondeur.
メビウス:
そうだね。
・幸福への障碍、愛の拒絶が破滅を招いていること。
・しかし、愛のおかげですべてが破壊されずにいること。
これほど深く、かつ面白く仕上がった映画はそうはないと思うよ。
《付記》
えーと、じつは『メトロポリス』は未見なんですが、
さすがにこのままではまともな訳がつくれないので、
今から観ます。
ということで今日はここまで。
「Les principaux ambassadeurs de l’amour」って、
「愛を伝える主要な使者」という意味なんですが、
まさか文字通りの「ambassadeurs」(大使、外交官)が
作中に登場しているわけじゃないですよね……。
《付記のつづき》
観ました。
教訓 - 基礎資料に当たらずに訳文を作ってはならない。
訳文を改めなければならない箇所が色々と出て来ました。
映画の最後のせりふ(le fin mot du film)は「私はだれ?」なのに、
メビウスは「le cœur」(心)だと言っています。
なんで?
ケンイチが最後に見つけたティマの残骸が心臓(らしきもの)だったから?
仏版の字幕にはそういう語が出て来るんでしょうか。
「le traumatisme de la destruction de masse」
(塊が破壊されることに対するトラウマ)というのは、
直接的にはあの崩壊シーンを指しているんでしょうけど、
メビウスは、そこには「la référence」(出典)がある、と言っています。
ここはやはり、東洋の無常観と結びつけて解釈しちゃって良いんでしょうか。
主人公のケンイチの声優を小林桂が担当していて、
音楽は本多俊之なのに、
(どちらも有名なジャズ・ミュージシャンです)
なんで二人の共演曲がないの?
なんてもったいない。
スマップのバックバンド並みにもったいないキャスティングだ……。