『The Long Tomorrow』の改訳に際してのメモです。
[
『The Long Tomorrow』和訳]
拙訳について、当サイトの訪問者の
"ぞーさん"から非常に参考になる意見をメールでいただきました。
ありがとうございました。
● 「ぞーさん日記」
とくに[5/5>4]の「STORY」の掛け言葉の指摘が本当に助かりました。
ただ、遺憾ながら、僕の調査が至らないために
未だに訳文に反映させられない点がいくつかあります。
また、当サイトの方針上あえて従うことが出来ない点が
いくつか出てきてしまいました。
ひとまずメモとして書き出しておくことにします。
◆ 改訳点
改訂する前の僕の訳を示した後で、
ぞーさんからの提案を「
ぞーさん:提案内容」という形式で示し、
僕からのコメントを示しておきます。
◆ 訳文全般
ぞーさん:漫画のコマ内のセリフに「。」は必要ないのではないか。
これについては説明し出すと非常に長くなってしまうのですが、
句点は意識的に付けてあります。
以前から感じていたことなのですが、
ベデのセリフの訳には独自の文体が必要とされているように思います。
日本の「漫画」のセリフの調子で訳すと軽すぎて、
小説のセリフの調子で訳すと硬すぎると思うのです。
(あくまで僕の主観による感じ方なのですが)
残念ながら、僕は未だにベデのセリフ用の文体をつくれないでいます。
そのため、僕の訳を実際にベデのフキダシのなかに入れてみると、
どうしても浮いてしまうように思うのです。
窮余の策として、現段階ではフキダシに入れることはあきらめて、
ひとまず参考的な訳として作ってみることにしました。
あくまで文章として読むための訳なので、句点を打ってある、
というわけです。
また、サイトの記事として提示する場合、
句読点を打っておいた方が読みやすい、という理由もあります。
◆ CONFIDENTIAL NOSE
[1/5>3>1]
I'M A CONFIDENTIAL NOSE.
これは人に知られるとやばいんだが、俺は警察のスパイをやっている。
ぞーさん:「CONFIDENTIAL NOSE」は「PRIVATE EYE」のもじりではないか。
非常に迷っています。
たしかにその通りだと思うのですが、
やはり自分の目で確証を得なければなりません。
何かあともう一押し、確実な根拠が欲しいと思っています。
ただ、やはり解釈としてはもじり説の方が格段に優れていると思うので、
(話しのつじつまも合います)
訳文に反映させておきました。
I'M A CONFIDENTIAL NOSE.
俺か? 俺は私立探偵ってヤツさ。
《補足》
「PRIVATE EYE」(私立の目/秘密の調査人)というのは、
私立探偵の異名です。
● 「時の流れは17ノット」内「Young Ridersのページ>The Young Riders エピソードとシーン一覧>8 False Colors 偽りの軍旗>ページ下部の[キーワード]」
*日本語による解説として最もまとまっています。
● ウィキペディア米内「Private investigator」
● ピンカートン探偵社公式サイト(英語)
● ウィキペディア米内「Pinkerton National Detective Agency」
「CONFIDENTIAL NOSE」はそのまま訳すなら、
「秘密の鼻/内密の警察のイヌ」というほどの意味になります。
「秘密」=「PRIVATE/CONFIDENTIAL」
「体の一部分を譬喩として使う」=「EYE/NOSE」
というもじりが成立するわけです。
「PRIVATE EYE」はハードボイルド小説で好んで使われる語なので、
そういった意味でももじりになっているのでしょう。
◆ I'M AFRAID...
[1/5>4>4]
A RATHER DISREPUTABLE PLACE, I'M AFRAID...
あの、ずいぶんと評判の良くないところらしくって、その、恐くて……、
ぞーさん:「I'M AFRAID」はここでは、
「申し訳ない」「残念ながら」といった気分を表すだけではないか。
異論無しです。
[1/5>4>4]
A RATHER DISREPUTABLE PLACE, I'M AFRAID...
あの、ずいぶんと評判の良くないところらしくって、その……、
◆ CUTE LITTLE THINGS
[1/5>8]
CUTE LITTLE THINGS
気の利いた獲物だな……。
ぞーさん:「CUTE LITTLE THINGS」は(2本の)振動ナイフのことではないか。
くわー! 誤字です。
「獲物」ではなく「得物」と書いたつもりでした。
これは痛恨のミスだ……。
[1/5>8]
CUTE LITTLE THINGS
気の利いた得物だな……。
◆ THE ORBITAL DEFENSE SHIELD
[2/5>3>1]
THE ORBITAL DEFENSE SHIELD
街のディフェンス・シールド
ぞーさん:「軌道防衛シールド」の方が
分かりやすいしSFっぽくて良いのではないか。
「ORBITAL」は完全に僕の誤訳です。
ただ、これも説明し出すと長くなるのですが、
サイトの方針の問題で、
可能なかぎりSFっぽさは排除したいと考えています。
(あくまでサイト製作側の問題として処理したいので、
くわしい説明は割愛させてください)
[2/5>3>1]
THE ORBITAL DEFENSE SHIELD
軌道のディフェンス・シールド
◆ THE HOMEO-TUBE
[2/5>4>1]
THE HOMEO-TUBE
ホメオ・チューブ
*「HOMEO-TUBE」というのはチューブ状の通行施設のことなのでしょうが、
よく分かりません。
ぞーさん:HOMEO-TUBEとは「テレビ」かそれに類するものではないか。
「HOMEO」は「Homeopathy」を連想させるが、不明。
おー! 「YouTube」の「Tube」だ。
となると、「HOMEO」というのは、
「同種の、類似の」という意味の接頭語で良いのではないでしょうか。
(「Homeopathy」も「同種療法/類似療法」と訳されますし)
単なるテレビではなくて、現実と非常に良く似た姿を映し出すテレビ、
つまり、SFに良く出てくる3Dホログラムのような装置のこと
なのではないでしょうか。
ただし、これも確証があるわけではありませんし、
そもそも“分かりにくい言葉”として造られている語だと思うので、
訳語は迷うところです。
THE HOMEO-TUBE
3Dテレビ
*(訳注をつける予定)
◆ A MEMBER OF THE ASSASSIN'S GUILD BY HIS UNIFORM
[3/5>2>1]
A MEMBER OF THE ASSASSIN'S GUILD BY HIS UNIFORM.
ユニフォームから察するに、暗殺者ギルドのメンバーってところだろう。
ぞーさん:暗殺者が「ユニフォーム」を着て自ら正体を明かすのはおかしい。
明らかに暗殺者と分かる間抜けな格好をしていることへの皮肉ではないか。
しかし、絵を見るとユニフォームに見えないこともないので、迷うところ。
たしかに言われてみるとその通りだと思います。
僕もよく分かりません。
ひとまず以下のように訳してみました。
[3/5>2>1]
A MEMBER OF THE ASSASSIN'S GUILD BY HIS UNIFORM.
格好から察するに、暗殺者ギルドのメンバーってところだろう。
◆ STORY
[5/5>4]
JUST ANOTHER STORY... THERE ARE 100 MILLION STORIES IN THE CITY.
THIS WAS TWELVE OF THEM.
ありふれたお話……。この街には、幾万ものストーリーが満ちている。
これもそのうちの一つさ。
*「TWELVE(12)」というのが良く分かりません。
「100MILLION(一億)」のうちの12ほどの割合だということなのでしょうか。
それとも、この『The Long Tomorrow』にはあと11話収められている
ということなのでしょうか。
ぞーさん:「STORY」は「話」と「階」の掛け言葉ではないか。
これは本当に助かりました。
まったくもって仰(おっしゃ)るとおりです。
[5/5>4]
JUST ANOTHER STORY... THERE ARE 100 MILLION STORIES IN THE CITY.
THIS WAS TWELVE OF THEM.
ありふれたお話……。この街には、幾万ものストーリーが満ちている。
12階(ストーリー)のストーリー、
気の利かないジョークさ。
[
『The Long Tomorrow』和訳]