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メビウス、『メトロポリス』を語る:その2
フランスのアニメ専門誌「AnimeLand」の公式サイトで公開されていた、
メビウスの『メトロポリス』評の訳です。
この記事にはインタビューの後半が収められています。

かなり長い記事になってしまったので、
他の関連記事については以下のインデックスを参照してください。
目次:メビウス、『メトロポリス』を語る


◆ インタビュー対訳:後半
AL:
Pour ainsi dire,
c’est un peu aussi la dream-team de l’animation japonaise
que l’on retrouve au générique de ce film,
et avec, pour tous, un même esprit humaniste dans leurs créations.
アニメランド:
映画のクレジットタイトルを観てみると、
これは本当に日本のアニメのドリームチームですよね。
しかも、どの作家の作品にもおなじヒューマニズムの血が流れている。

M: Oui,
c’est pour cela
que je pense que ça n'est pas le film d’un seul auteur,
ou même d’un groupe d’auteurs,
mais plutôt le film du Japon, d’un peuple,
qui est rentré dans la modernité
par une voie que l’on ne connaît pas, dont on a pas idée.
Il y a un livre, qui s’appelle Le choc des civilisations,
qui est le résultat d’une recherche approfondie
qu’on trouve dans la tradition anglo-saxonne,
qui consiste à essayer de décoder l’Histoire du monde,
à apposer des grilles de perceptions
qui ne soient pas « nationales » mais « extra-terrienne ».
A ce niveau,
les Japonais sont un peu les Anglais du troisième millénaire.
Et cela se voit dans leurs créations.
Ils ont expérimenté ce que seront les problèmes de la planète,
car d’une certaine manière la Terre est une île,
entourée du vide sidéral,
qui est une mer beaucoup plus difficile à traverser qu’un océan.
On est dans un ordre croissant
d’isolement et de difficulté qui est phénoménal.
Quelque part, dans cette perspective des civilisations,
on voit que ce qu’on appelle la civilisation occidentale
(même si on est toujours les occidentaux de quelqu’un)
a ouvert la boite de Pandore du développement technologique et laïque,
et toutes les autres civilisations de la planète sont
confrontées à ce problème que nous avons créé.
C’est ça qui est troublant et excitant quand on observe,
non pas le Japon, mais le regard que pose le Japon sur le monde,
surtout à travers des auteurs populaires.
Ils portent sur le monde un vrai regard,
ils s’approprient l’Histoire du monde
comme quelque chose que l’on peut légitimement explorer.
Chose que les autres civilisations n’ont pas expérimenté.
On n’a pas encore vu d’histoire
par exemple qui serait racontée par l’Islam
et qui prendrait des blancs comme vecteur d’humanité.
Nous on peut faire cela,
comme KIPLING l’a fait avec le Livre de la Jungle,
et raconter une histoire avec un indien dans une forêt
qui devient un mythe fondamental et mondial.
Les Japonais n’ont, de fait, aucun complexe,
ils prennent cette attitude,
qu’ils considèrent comme une attitude de maître de Jeu
et ils la jouent sans la moindre peur, sans complexe.
Ce qui leur permet de faire des histoires de mousquetaires,
avec un sens du détail très approximatif, une fantaisie certaine,
mais en tout cas un sens de l’universalité confondant.
On retrouve cette même démarche
dans la façon d’aborder les thèmes de Métropolis.
メビウス:
そう。でも単にチームというだけじゃないよ。
僕は、この作品には、
西洋人が思いも付かないやり方で近代化を果たした
日本という国や人々の姿が刻印されていると思っているんだ。
特定の作家には還元できない何かがある。
『文明の衝突』という本は読んだ?
いかにもアングロ・サクソンらしい詳細な調査に基づいて、
世界の歴史を分析しようとしているものだ。
“国家”という枠組みをはなれて、
“超地球的”な視野から世界を読み解こうとしているこの本に従うなら、
日本人はさながら、新世紀のイギリス人の観を呈していると思うんだ。
当然、彼らの作品にもそういった性質が反映している。
地球というのは、いわば虚空に浮かぶ一つの島のようなものだろう?
他の星々とのあいだには、
行く手を阻む大海原という名の宇宙が横たわっている。
そういう意味では、島国日本は、
世界がこれから直面する問題をすでに経験してしまっている国とも言える。
世界は孤立化が進んでいる。
どうしようもない困難も増すばかりだ。
『文明の衝突』のなかで、
西欧文明
(もっとも、どこを基準に「西」と言うかによるけれど)
が技術の発達と世俗主義というパンドラの箱を空けてしまって以来、
世界中の他の文明のすべてが、
我々西洋人の引き起こしたこの問題に直面するようになってしまった、
という一節があっただろう?
日本という国を世界とのかかわりのなかで観察してみると、
このことがよく分かるよ。
とくにサブカルチャーの作家を通して観てみるとね。
とても興味深くて、なおかつ厄介な問題だ。
日本人は透徹した目で世界を観ている。
世界の歴史を一国で体現している国でもある。
だから、日本を分析することは、世界の歴史を分析することでもあるんだ。
他の文明ではこうは行かない。
たとえばイスラム文明からは、
白人にヒューマニズムを教えてもらう、
なんて物語は生まれて来ていないよね。
西洋にはキプリングの『ジャングル・ブック』がある。
森に住むインド人の物語で、
人間の本質を描き出した、普遍的なお話に仕上がっている。
思うに、日本人には一切の気負いというものが無いんだと思う。
達観とでも言うのかな、
とにかく少しのためらいも無く軽やかに遊んでみせる感性。
そういう姿勢を持っているから、
日本人は、たとえば戦争を描くときなんかも、
細部の詰めがおそろしく大雑把で現実離れしているにもかかわらず、
おどろくほど普遍性をもった作品を描き得てしまうんだと思う。
『メトロポリス』のテーマの扱い方にも同じことが言えるよね。
 *『文明の衝突』と『ジャングル・ブック』については、
 以下の記事を参照してください。
 [訳注『メトロポリス』:『文明の衝突』『ジャングル・ブック』...
 (の引用とメビウスの日本論 - その1)
 *「anglo-saxonne」(アングロ・サクソン)は、
 イギリスやアメリカの文化を指す語です。
 欧米の文化はおおまかに、
 大陸系(フランスなど。理論を重んずる合理主義の文化)と
 イギリス系(アメリカも含む。実践を重んずる経験主義の文化)の
 二つに分けられることがあります。
 『文明の衝突』は多くの具体的な調査にもとづいた本なので、
 こう言われているのでしょう。

AL:
Il faut dire aussi
que la particularité des manga est
de se pencher beaucoup sur les personnages et leurs psychologies.
アニメランド:
キャラクターや心理描写を重視するのも、
日本の「漫画」の特徴なんじゃないでしょうか。

M:
Oui mais pour en arriver là,
cela dénote une libération pour être à même de considérer
que rien de ce qui est humain ne nous est étranger,
peu importe les critères de civilisation,
la morale, les religions, les couleurs de peaux.
Et cela c’est vraiment la leçon de ces peuples.
メビウス:
そうだね。でもそれを言うなら、
僕たちだって、ヒューマニズムを学ぶべき立場なのかも知れない。
文明の違いだとか、モラルの違い、
宗教や、肌の色の違いなんて関係ないんだよね。
そういったことは、僕たちが日本人から学ぶべきことなんだ。

AL:
Au niveau des références du film,
il y a un véritable jeu permanent tournant au jeu de piste
par rapport à
tout ce que l’on peut voir d’écrit sur les murs de Métropolis.
アニメランド:
この映画にはいろいろと出典があるようですが、
街の壁に落書きがしてあったり、
サウンド・トラックにお遊びがあったりと、
いろいろと面白い試みがなされているようですね。
 *落書きとサウンド・トラックについては、
 以下の記事を参照してください。
 [訳注『メトロポリス』:落書きとサウンド・トラック

M:
Oui, d’ailleurs
dans une des phases de la découverte de son expression par Tima,
elle écrit le nom de son aimé sur tous les murs de sa chambre.
Ca veut dire
que l’écriture, le hiéroglyphe manifesté est
porteur du fond d’elle même.
Il y a une allusion également à Victor HUGO
et au personnage de Gavroche avec le personnage d’Atlas,
chef de la révolution.
On voit le tableau de DELACROIX,
« La Liberté guidant le Peuple » à un moment dans le film.
Rendez vous compte quelle connaissance,
et quelle générosité il y a,
dans l’acceptation que d’autres aient pu lancer
au monde des symboles valables.
Comment aussi
les Japonais ont ils « osé » s’emparer du mythe de BABEL ?
C’est magnifique d’avoir osé ça !
Comme on retrouve aussi l’image du Che Guevara en divers endroits.
On voit bien que Métropolis, c’est une leçon aussi.
C’est une très grande leçon pour nous occidentaux
de voir comme ça paie d’ouvrir son regard
sur une perception planétaire.
Enfin !
メビウス:
そうそう。
ティマが、自分の気持ちを表わそうとして、
自分の部屋の壁一面に愛する人の名前を書く場面もあったよね。
書かれた文字が彼女の内面そのものを表わしているんだろう。
革命の主導者のアトラスが、
ヴィクトル・ユゴーのガヴローシュを思わせる場面もあった。
ドラクロワの『民衆を導く自由の女神』が出てくる場面もあったよね。
こういったシンボルにちゃんとした意味を読み取れるかどうか、
観る側の豊かな教養が期待されているんだと思うよ。
それにしても、まさか日本人が、
バベルの神話を我が物にしてしまうとはね!
すばらしい。
チェ・ゲバラのイメージも何回か出て来ていたな。
もちろんフリッツ・ラングの『メトロポリス』も意識しているはずだ。
ラングの『メトロポリス』が1927年、
日本の『メトロポリス』が2001年だから、
人々が世界的な視野を得るのにこんなにも長い時間がかかったことになる。
このことからも、僕たち西欧人は多くのことを学ぶべきだと思うね。
 *ここで挙げられている「出典」(des références)については、
 以下の記事を参照してください。
 [訳注『メトロポリス』:ティマが部屋の壁一面に愛する人の名前を...
 [訳注『メトロポリス』:アトラスとユゴーのガヴローシュ
 [訳注『メトロポリス』:ドラクロワの『民衆を導く自由の女神』
 [訳注『メトロポリス』:バベルの神話
 [訳注『メトロポリス』:チェ・ゲバラ
 [訳注『メトロポリス』:フリッツ・ラングの『メトロポリス』




目次:メビウス、『メトロポリス』を語る
# by moebius-labyrinth | 2006-11-15 22:30 | メビウスの子孫たち
訳注『メトロポリス』:『I Can't Stop Loving You』
「メビウス、『メトロポリス』を語る」の訳注です。
他の関連記事については以下のインデックスを参照してください。
目次:メビウス、『メトロポリス』を語る


◆ 『I Can't Stop Loving You』
『I Can't Stop Loving You』は、
アメリカの有名なソウル歌手レイ・チャールズが
1962年にヒットさせた曲です。
● ウィキペディア米内「I Can't Stop Loving You」
  *オリジナルは
  ドン・ギブソン(Don Gibson)が1957年に発表したものです。
  レイ・チャールズはこれをカバーしたものです。
● ウィキペディア日内「レイ・チャールズ」
● ウィキペディア米内「Ray Charles」
● レイ・チャールズ公式サイト(英語)

以下のサイトで歌詞を参照することが出来ます。
● 「うたまっぷ」内『I CAN'T STOP LOVING YOU』
歌詞なので多くは語られていませんが、
決してハッピーエンドの内容ではないということは
押さえておいて良いかもしれません。
「But time has stood still since we've been apart」
(君と別れてから、時は止まったままなのに)
とあるので、むしろ、
愛する人と別れた人の心情を歌ったものだと思います。
それでも
「君を愛することを止められない」(I Can't Stop Loving You)
というわけです。
「だから、君と出会う前まだ一人だった頃の寂しさを抱えて、
 これからは生きて行かなきゃならないんだ」
(So I've made up my mind To live in memories of old lonesome time)
というのが、歌詞のおおまかな内容です。
I Can't Stop Loving You
So I've made up my mind
To live in memories
of old lonesome times
I Can't Stop wanting you
It's useless to say
So I'll just live my life
in dreams of yesterday
君を愛することを止められない。
だから、君と出会う前の寂しさを抱えて、
これからは生きて行かなきゃならないんだ。
君が欲しくてたまらない。
そんなこと言ったって無駄だから、
僕はこれから、あの時の夢のままに
生きて行くことにするよ。

Those happy hours
that we once knew
Though long ago
still make me blue
They say that time
heals a broken heart
But time has stood still
since we've been apart
君と出会ったころの、
あの幸せな思い出。
もうこんなに経つんだね。
まだ悲しみは癒えないのに。
あのころの思い出が、
心の傷を癒してくれるさ、って?
君と別れてから、
時は止まったままなのにね。

ケンイチがティマを助けようと必死になっている場面で、
BGMによって既に、
ケンイチがティマを失うことが予告されているわけです。
この選曲は確かに、
メビウスが「sublime」(崇高だ!)と言うだけのことはあると思います。
なお、以下の記事の『St. James Infirmary』も参照してください。
訳注『メトロポリス』:落書きとサウンド・トラック




目次:メビウス、『メトロポリス』を語る
# by moebius-labyrinth | 2006-11-15 22:20 | メビウスの子孫たち
訳注『メトロポリス』:「大量破壊のトラウマ」
「メビウス、『メトロポリス』を語る」の訳注です。
他の関連記事については以下のインデックスを参照してください。
目次:メビウス、『メトロポリス』を語る


◆ 「大量破壊のトラウマ」
「le traumatisme de la destruction de masse」
(大量破壊のトラウマ)は、
第二次世界大戦の日本の敗戦を指しているのでしょう。
● 「La Septieme Ombre」内「Debat>Manga et animation japonaise : une vision du monde」
2003年にフランスで開かれたディベートの記録ページです。
第二次世界大戦(la seconde Guerre mondiale)で日本が受けた
大量破壊(une destruction de masse)が「漫画」に与えた影響について、
「Le traumatisme de la guerre」(戦争のトラウマ)という題で
討議されています。
具体的には、「広島の原爆」(l’explosion atomique d’Hiroshima)と
『はだしのゲン』(Gen d’Hiroshima)などが挙げられています。

第二次世界大戦の敗戦の影響というのは、
欧米の人が日本の「漫画」の歴史を語るばあいに
必ずと言ってよいほど出される話題です。
個人的には、
『メトロポリス』から敗戦のイメージなんて全く連想しないのですが、
欧米の人が観るとそういう解釈になるのでしょう。




目次:メビウス、『メトロポリス』を語る
# by moebius-labyrinth | 2006-11-15 22:10 | メビウスの子孫たち
訳注:『メトロポリス』での『文明の衝突』『ジャングル・ブック』の引用とメビウスの日本論 - その1
「メビウス、『メトロポリス』を語る」の訳注です。
他の関連記事については以下のインデックスを参照してください。
目次:メビウス、『メトロポリス』を語る


この記事では、
「メビウス、『メトロポリス』を語る」での
『文明の衝突』『ジャングル・ブック』の引用と、
メビウスの日本論について検討します。
後半の以下の記事に続きます。
訳注『メトロポリス』:『文明の衝突』『ジャングル・ブック』の引用とメビウスの日本論 - その2

率直に言って、引用は結構いい加減で、
メビウスの日本論も凡庸なものだと思います。

以下のプログラムに従います。
(項目のクリックで該当箇所に飛びます)

 0 インタビューの原文

 1 『文明の衝突』とメビウスの日本論
  1-1 『文明の衝突』についての基本的な情報
  1-2 『文明の衝突』の内容
  1-3 『文明の衝突』を引用している箇所
  1-4 メビウスの日本論

 2 『ジャングル・ブック』と白人至上主義・人間中心主義
  2-1 『ジャングル・ブック』についての基本的な情報と内容
  2-2 『ジャングル・ブック』を引用している箇所
  2-3 白人至上主義・人間中心主義

 3 総括


◆ 0 インタビューの原文
インタビューの当該箇所を原文で挙げておきます。

M:
Oui,
c’est pour cela
que je pense que ça n'est pas le film d’un seul auteur,
ou même d’un groupe d’auteurs,
mais plutôt le film du Japon, d’un peuple,
qui est rentré dans la modernité
par une voie que l’on ne connaît pas, dont on a pas idée.
Il y a un livre, qui s’appelle Le choc des civilisations,
qui est le résultat d’une recherche approfondie
qu’on trouve dans la tradition anglo-saxonne,
qui consiste à essayer de décoder l’Histoire du monde,
à apposer des grilles de perceptions
qui ne soient pas « nationales » mais « extra-terrienne ».
A ce niveau,
les Japonais sont un peu les Anglais du troisième millénaire.
Et cela se voit dans leurs créations.
Ils ont expérimenté ce que seront les problèmes de la planète,
car d’une certaine manière la Terre est une île,
entourée du vide sidéral,
qui est une mer beaucoup plus difficile à traverser qu’un océan.
On est dans un ordre croissant
d’isolement et de difficulté qui est phénoménal.
Quelque part, dans cette perspective des civilisations,
on voit que ce qu’on appelle la civilisation occidentale
(même si on est toujours les occidentaux de quelqu’un)
a ouvert la boite de Pandore du développement technologique et laïque,
et toutes les autres civilisations de la planète sont
confrontées à ce problème que nous avons créé.
C’est ça qui est troublant et excitant quand on observe,
non pas le Japon, mais le regard que pose le Japon sur le monde,
surtout à travers des auteurs populaires.
Ils portent sur le monde un vrai regard,
ils s’approprient l’Histoire du monde
comme quelque chose que l’on peut légitimement explorer.
Chose que les autres civilisations n’ont pas expérimenté.
On n’a pas encore vu d’histoire
par exemple qui serait racontée par l’Islam
et qui prendrait des blancs comme vecteur d’humanité.
Nous on peut faire cela,
comme KIPLING l’a fait avec le Livre de la Jungle,
et raconter une histoire avec un indien dans une forêt
qui devient un mythe fondamental et mondial.
Les Japonais n’ont, de fait, aucun complexe,
ils prennent cette attitude,
qu’ils considèrent comme une attitude de maître de Jeu
et ils la jouent sans la moindre peur, sans complexe.
Ce qui leur permet de faire des histoires de mousquetaires,
avec un sens du détail très approximatif, une fantaisie certaine,
mais en tout cas un sens de l’universalité confondant.
On retrouve cette même démarche
dans la façon d’aborder les thèmes de Métropolis.


◆ 1 『文明の衝突』とメビウスの日本論

 ◆ 1-1 『文明の衝突』についての基本的な情報
『文明の衝突』
(THE CLASH OF CIVILIZATIONS AND THE REMAKING OF WORLD ORDER)
は、1996年にアメリカで発表された政治学書です。
今後の世界情勢を占う書として非常に注目された本です。
● ウィキペディア日内「文明の衝突」
フランス語版は『Le Choc des civilisations』
(「THE CLASH OF CIVILIZATIONS」の直訳)の題で
1997年に発行されています。
● 出版社Odile Jacob社公式サイト内『Le Choc des civilisations』のページ
● アマゾン仏内『Le Choc des civilisations』のページ
メビウスは英語も読めるので、英語の原書を読んでいるかも知れません。
● アマゾン日内『The Clash of Civilizations and the Remaking of World Order』のページ
 *「なか見!検索」(本の内容を検索できるサービス)が
 適用されているので、原書の内容を部分的に確認するのに非常に便利です。
● アマゾン日内『The Clash of Civilizations and the Remaking of World Order (ハードカバー) 』のページ
 *僕が参照したのはこちらの版です。
 「なか見!検索」は上記のペイパーバック版に飛びます。

僕は日本語版(鈴木主税訳)と英語の原書を参照しました。
残念ながらフランス語版は参照するに至っていません。
● アマゾン日内『文明の衝突』のページ

なお、インタビューは2002年に行われたのではないかと思います。
『メトロポリス』の日本公開は2001年、
フランスでの公開とDVDの発売は2002年です。
● ウィキペディア日内「メトロポリス」
● ウィキペディア仏内「Metropolis」
● アマゾン仏内『Metropolis』DVDのページ

 ◆ 1-2 『文明の衝突』の内容
まずは『文明の衝突』の内容を確認しておきましょう。
ひとことで要約するなら、
“今後、世界の国々は文明ごとにまとまるようになり、
 異文明間の争いが起こるようになる”
ということになります。
 本書の中心的なテーマをひとことで言うと、[中略]文明のアイデンティティが、冷戦後の統合や分裂あるいは衝突のパターンをかたちづくっているということである。
[邦訳版21ペイジ。以下同様]

21~22ペイジにかけて本書の全五章の内容が要約されているので、
僕なりに纏(まと)めたうえで示しておきましょう。

 第一部:近代化というのは西欧化することではなく、
     非西欧社会が西欧化するわけでもない。
 第二部:相対的な影響力という意味では、西欧は衰えつつある。
     非西欧文明は全般的に自分たちの文化の価値を再確認しつつある。
 第三部:文明に根ざした世界秩序が生まれはじめている。
 第四部:文明の断層線において文明の衝突が起きる。
 第五部:異文明間の世界戦争を避けるためには、
     世界政治の多文明性を理解し、
     尊重するようにしなければならない。

では、メビウスのインタビューとの関係を見て行きましょう。

 ◆ 1-3 『文明の衝突』を引用している箇所
『文明の衝突』を引用している箇所を直訳とともに挙げたうえで、
具体的な引用本文を検討して行きます。

  ◇ (A)-「国家」という枠組みの限界
Il y a un livre, qui s’appelle Le choc des civilisations,
qui est le résultat d’une recherche approfondie
qu’on trouve dans la tradition anglo-saxonne,
qui consiste à essayer de décoder l’Histoire du monde,
à apposer des grilles de perceptions
qui ne soient pas « nationales » mais « extra-terrienne ».
ここに一冊の本がある。その名前は『文明の衝突』で、
これは、人々がアングロサクソンの伝統のなかに見出す
詳細な調査の結果である。
それは、世界の歴史を解読しようとすることと、
「国家」ではなく「超地球的」という
認識の格子を当てはめようとすることから成り立っている。

『文明の衝突』に
「超地球的」(extra-terrienne)という語は出てきませんが、
「文明」(英civilization/仏civilisation)という枠組みによって
世界全体の情勢を分析しているので、
その点では「超地球的」な研究書と言えるかもしれません。
● アマゾン日「なか見!検索」での"extra"の検索結果

なお、メビウスは、
世界情勢を分析する際の枠組みとしては
「国家」(nationales)は適切ではない、
と言っていますが、これは本書の内容に沿ったものです。
 世界を七つか八つの文明で成り立つと見れば、こうした難点の多くが避けられる。[中略]国家[statist]パラダイムや混沌パラダイムのようにリアリティに固執するあまり簡略さをあきらめる必要もない。
[邦訳版44ペイジ/ペイパーバック版36ペイジ、以下同様]
● アマゾン日「なか見!検索」での該当箇所

ただし、この場合の「国家」には「statist」が使われていて、
フランス語の「nationales」に相当する
英語の「nationals,national」には該当する使用例はありません。
● アマゾン日「なか見!検索」での"nationals"の検索結果
● 同上"national"の検索結果

  ◇ (B)-誰にとっての「西」か、技術の発達と世俗主義、孤立化
On est dans un ordre croissant
d’isolement et de difficulte qui est phenomenal.
Quelque part, dans cette perspective des civilisations,
on voit que ce qu’on appelle la civilisation occidentale
(même si on est toujours les occidentaux de quelqu’un)
a ouvert la boite de Pandore
du développement technologique et laïque,
et toutes les autres civilisations de la planète sont
confrontées à ce problème que nous avons créé.
人々は、
孤立と驚くほどの困難が増大する秩序のなかに居る。
どこだったか、文明に関するこの視点のなかで、
西欧文明と呼ばれているものが
(たとえ、今日では人々は誰かにとっての西欧人だとしても)
技術の発達と世俗主義というパンドラの箱を開けて、
地球の他のすべての文明が
我々が創り出したこの問題に直面している、
という箇所があった。
 *「この問題」(ce problème)は、
 「孤立と驚くほどの困難が増大する秩序」
 (un ordre croissant
  d’isolement et de difficulte qui est phenomenal)
 を指しているのでしょう。

この箇所の内容は比較的『文明の衝突』に忠実です。
ただし、すべてがそのまま該当するような本文はありません。
本文を要約して部分的につぎはぎしている感じです。

  ◇ (B-1) 誰にとっての「西」か
「même si on est toujours les occidentaux de quelqu’un」
(たとえ、今日では人々は誰かにとっての西欧人だとしても)は、
以下の一節に基づいているのでしょう。
「西洋」["the West"]という言葉はいまや多用され、西側キリスト教圏と呼ばれていた世界をさすようになった。したがって、西洋[the West]文明は特定の民族や宗教あるいは地理的な場所の名前ではなく、羅針盤の方位で認識される唯一の文明である。
[邦62/英46-47ペイジ]
● アマゾン日「なか見!検索」での該当箇所

「東」と「西」["West"]という言葉を使って地理的な場所を限定するのは混乱を招くし、自民族中心主義だ。「北」と「南」にはあまねく受け入れられて基準となる定点が南北の極にある。「東」と「西」にはそのような基準点がない。問題はどこの東であり、西であるかということだ。すべてはその人の立っている場所しだいである。
[邦63/英47ペイジ欄外の注。前出の箇所への注である]
● アマゾン日「なか見!検索」での該当箇所

なお、フランス語の「les occidentaux」に相当する
英語の「occidental, occident」等については、
該当する使用例はありません。
● アマゾン日「なか見!検索」での"occidental"の検索結果
● 同上"occident"の検索結果
「西欧」の訳語についてはとくに以下の訳注に従っています。
(訳注ー日本では一般に西洋より西欧がよく使われており、この文明の起源をあらわすにも適切だと考えられるので、本書では西欧で一致した)
[邦62ペイジ、本文中の割注]


  ◇ (B-2) 技術の発達と世俗主義
「ce qu’on appelle la civilisation occidentale(中略)
 a ouvert la boite de Pandore
 du développement technologique et laïque」
(西欧文明と呼ばれているものが、
 技術の発達と世俗主義というパンドラの箱を開けた)については、
以下の一節を挙げることができます。
 このように、西欧が独自の劇的な発展をとげた要因には、[中略]西欧社会では君主と三身分(僧侶、貴族、平民)あるいは世俗[secular]の権力者と宗教的な権力者に力が比較的分散していたこと[中略]などもある。しかし、西欧が拡大した直接の原因は技術[technological]だった。
[邦68~69/英51ペイジ]
● アマゾン日「なか見!検索」での該当箇所

フランス語の「laïque」に相当する
英語「laic,laicism」(世俗、世俗主義)は、
『文明の衝突』では使われていません。
● アマゾン日「なか見!検索」での"laic"の検索結果
● 同上"laicism"の検索結果
その代わりに
「secular,secularism」(世俗、世俗主義)という語が使われています。
● アマゾン日「なか見!検索」での"secular"の検索結果
● 同上"secularism"の検索結果
「技術」「世俗主義」の訳語は邦訳版に従っています。
なお、「パンドラの箱」(la boite de Pandore)という表現は
『文明の衝突』では使われていません。
● アマゾン日「なか見!検索」での"pandora"の検索結果

  ◇ (B-3) 孤立化
メビウスは、
世界は「孤立化」(isolement)の問題に直面している、と言っていますが、
これは「文明の衝突」(異文明間の世界戦争)の問題に相当する
と考えてよいかも知れません。
文化を共有する国家群が冷戦時代の東西ブロックにかわって登場し、世界政治のなかで、文明の断層線[ルビ:フォルト・ライン]を境界として紛争が起こるようになっている。
[邦185/英125ペイジ]
● アマゾン日「なか見!検索」での該当箇所

文明ごとに世界の国々がお互いに「孤立」するようになるわけです。
ただし、フランス語の「isolement」(孤立)に相当する
英語の「isolation」については、
該当する使用例はありません。
● アマゾン日「なか見!検索」での"isolation"の検索結果


以下の記事につづきます。
訳注『メトロポリス』:『文明の衝突』『ジャングル・ブック』の引用とメビウスの日本論 - その2




目次:メビウス、『メトロポリス』を語る
# by moebius-labyrinth | 2006-11-15 22:00 | メビウスの子孫たち
訳注:『メトロポリス』での『文明の衝突』『ジャングル・ブック』の引用とメビウスの日本論 - その2
以下の記事のつづきです。
訳注:『メトロポリス』での『文明の衝突』『ジャングル・ブック』の引用とメビウスの日本論 - その1


◆ 1 『文明の衝突』とメビウスの日本論

 ◆ 1-4 メビウスの日本論
つぎに、メビウスが展開している日本論を見て行きましょう。
該当箇所を直訳とともに挙げておきます。
(a)-西洋人が思いもよらないやり方で近代化した日本
[前略]qui est rentré dans la modernité
par une voie que l’on ne connaît pas, dont on a pas idée.
人々が知らない、人々の察しのつかない方法で
近代に入った[日本人]

(b)-日本人はイギリス人に似ている
A ce niveau,
les Japonais sont
un peu les Anglais du troisième millénaire.
このレベルにおいては、
日本人は第三千年紀のイギリス人のようなものだ。
 *「第三千年紀」(troisième millénaire)については
 以下のページが参考になります。
 ● ウィキペディア日内「ミレニアム」
 要するに、日本人はイギリス人に似ている、
 と言いたいわけです。
 同じ島国からの連想なのでしょう。

(c)-日本は世界の歴史を先取りしている
Ils ont expérimenté
ce que seront les problèmes de la planète,
彼ら[日本人]は、地球の問題になるであろうことを
すでに経験している。

(d)-日本の大衆作家に孤立化の問題が現れている
C’est ça qui est troublant et excitant quand on observe,
non pas le Japon,
mais le regard que pose le Japon sur le monde,
surtout à travers des auteurs populaires.
日本ではなく、日本を世界のなかに据える視点を観察すると、
それは、やっかいで興味深いことだ。
とくに、大衆作家を通して観察してみると。
 *「それ」(C’est)は、
 (B)の、技術の発達と世俗主義、
 孤立化の問題を指しているのでしょう。

(e)-日本は世界の歴史を体現している
Ils portent sur le monde un vrai regard,
ils s’approprient l’Histoire du monde
comme quelque chose que l’on peut légitimement explorer.
Chose que les autres civilisations n’ont pas expérimenté.
彼ら[日本人]は、真のまなざしを世界に注いでいる。
彼らは、人々が当然のように調査できるようなものとして、
世界の歴史をわが物としている。
他の文明が体験しなかったことだ。

(f)-日本人が持っている遊びの態度
Les Japonais n’ont, de fait, aucun complexe,
ils prennent cette attitude,
qu’ils considèrent comme une attitude de maître de Jeu
et ils la jouent sans la moindre peur, sans complexe.
日本人は、実際、コンプレックスをまったく持っていない。
彼らは、遊びの達人の態度だと見做している
この態度を持ち合わせている。
そして彼らは、すこしの恐れもコンプレックスも持たずに、
この態度を遊ぶ。

いずれも『文明の衝突』の内容からは離れたものです。
この本のなかで
日本は一国で一文明を成すものとして特別な扱いをうけていますが、
(この本では世界の国々が八つの文明に分類されています。
 日本以外の国は複数の国で一つの文明に分類されています)
だからといって、
メビウスの言う

 (c)-日本は世界の歴史を先取りしている
 (d)-日本の大衆作家に孤立化の問題が現れている
 (e)-日本は世界の歴史を体現している

というような性質は認められていません。
強いて挙げるなら以下のような一節でしょうか。
[前略]文化的に孤立[lone]している日本は、今後は経済的にも孤立[lonely]していくかもしれない。
[邦201/英135ペイジ]
● アマゾン日「なか見!検索」での該当箇所

 最も重要な孤立国[lone country]は、日本である。日本の独特な文化を共有する国はなく、[後略]
[邦204/英137ペイジ]
● アマゾン日「なか見!検索」での該当箇所

日本の孤立[loneliness]の度がさらに高まるのは、日本文化は高度に排他的で、広く支持される可能性のある宗教(キリスト教やイスラム教)やイデオロギー(自由主義や共産主義)をともなわないという事実からであり、そのような宗教やイデオロギーをもたないために、他の社会にそれを伝えてその社会の人びとと文化的な関係を築くことができないのである。
[邦204/英137ペイジ]
● アマゾン日「なか見!検索」での該当箇所

いずれの例においても、
日本の「孤立」(lone,loneliness)と世界の歴史とのあいだに
類似性は指摘されていませんし、
世界情勢を予測するうえでの特別な意味あいなども含められていません。
メビウスが独自に読み取った結果なのでしょうが、

 (a)-西洋人が思いもよらないやり方で近代化した日本
 (f)-日本人が持っている遊びの態度

と併せて、
こういった特別な思い入れは過大評価でしかないと思います。

 (b)-日本人はイギリス人に似ている

も、俗流の日本論としてありふれたものです。

総じて、ここで展開されているメビウスの日本論は、
いわゆるオリエンタリズムの一種として
批判されてしかるべきものだと思います。
● ウィキペディア日内「オリエンタリズム」
西洋の東洋に対する差別の裏返しとして、
日本を過度に祭り上げているだけなのではないでしょうか。


◆ 2 『ジャングル・ブック』と白人至上主義・人間中心主義

 ◆ 2-1 『ジャングル・ブック』についての基本的な情報と内容
『ジャングル・ブック』
(英The Jungle Book/仏Le Livre de la jungle)は、
イギリスの作家キプリング(Kipling)が1894年に発表した有名な小説です。
● ウィキペディア日内「ラドヤード・キップリング」
● 同上「ジャングル・ブック (小説)」
狼に育てられた少年の物語、と要約されることが多いのですが、
実際にはこのほかにもいろいろな動物の物語が収録されていて、
オムニバス形式になっています。
● アマゾン日内『ジャングル・ブック』(角川文庫)のページ
  *僕が実際に参照したものです。
● 「Project Gutenberg」内「The Jungle Book by Rudyard Kipling」
  *原文を読むことが出来ます。
● アマゾン仏内『Bibliotheque de la Pleiade / Kipling : Oeuvres, tome 2』のページ
  *仏訳版はこれを参照しました。

 ◆ 2-2 『ジャングル・ブック』を引用している箇所
『ジャングル・ブック』を引用している箇所を
直訳とともに挙げておきましょう。
On n’a pas encore vu d’histoire
par exemple qui serait racontée par l’Islam
et qui prendrait des blancs comme vecteur d’humanité.
Nous on peut faire cela,
comme KIPLING l’a fait avec le Livre de la Jungle,
et raconter une histoire avec un indien dans une forêt
qui devient un mythe fondamental et mondial.
人々はまだ、
たとえば、イスラム文明によって話されていて、
また、白人を人間性の仲介者として据えているような物語を、
見たことがない。
我々は人々にそのことをすることが出来る。
たとえば、
キプリングが『ジャングル・ブック』によって彼らにそれをして、
根本的で世界的なひとつの神話になっている、
森のなかの一人のインド人の物語を話すように。

メビウスは
「une histoire avec un indien dans une forêt
 qui devient un mythe fondamental et mondial」
(森のなかの一人のインド人の物語で、
 根本的で世界的なひとつの神話になっている)
と言っていますが、
『ジャングル・ブック』の要約としては標準的なものだと思います。

 ◆ 2-3 白人至上主義・人間中心主義
しかしながら、
『ジャングル・ブック』を
「白人を人間性の仲介者として据えているような物語」
(d’histoire[中略]
 qui prendrait des blancs comme vecteur d’humanité)
とするのは大いに問題があります。
『ジャングル・ブック』には、
狼に育てられたインド人の少年が白人に人間性を教えてもらう、
というような場面はありません。
ただし、
1994年に実写映画化された際にそのようなアレンジがなされているので、
メビウスはこの映画を想定しているのかも知れません。
● 「goo映画」内「ジャングル・ブック(1994)>あらすじ」
  *映画のあらすじがすべて書かれているので注意してください。
  ほとんど別作品と言ってよいほどに大胆にアレンジされています。
  原作には「英国軍将校ブライドン少佐」や「ブライドン少佐の娘キティ」、
  「彼女に恋するブーン大尉」は登場しません。

さらに、原作との食い違い以外にも、
「白人を人間性の仲介者として据えているような物語」という内容自体に
大きな問題があります。
こういった考え方は、
いわゆる「人間中心主義」として批判されているものに当たるからです。
「人間性」(humanité)
「ヒューマニズム」(英humanism/仏humanisme、人間性を重視する考え方)
と言うと一見良いものに見えますが、
その裏には“人間以外のもの”に対する差別が隠されています。
ここで言う“人間以外のもの”は動物や植物には限られません。
西洋の白人にとっての“人間以外のもの”、
すなわち、東洋に住む有色人種も、
“人間以外のもの”に分類されてしまう場合があるのです。
たとえば、白人が黒人を奴隷として酷使したり、
アメリカに渡った白人がインディアンを虐殺したりする場合に、
「有色人種は人間ではないから」という理由で、
大々的に正当化されていた時代がありました。
● ウィキペディア日内「人種差別」
● 同上内「有色人種」
● 同上内「白人至上主義」
メビウスは、
「白人」に「人間性」を教えてもらわなければならない人達として
イスラムの人や日本人を想定しているわけですから、
問題は決定的です。
メビウス自身に悪意は無いのでしょうが、
メビウスの発言には白人至上主義・人間中心主義が透けて見えてしまいます。
「1-4 メビウスの日本論」において僕は、
メビウスの日本論は
「西洋の東洋に対する差別の裏返しとして、
 日本を過度に祭り上げているだけ」
なのではないかと評しましたが、
メビウスによる日本の過大評価は、
こういった白人至上主義・人間中心主義と表裏をなしている
のではないかと僕は思います。
訳注:『メトロポリス』での『文明の衝突』『ジャングル・ブック』の引用とメビウスの日本論 - その1


◆ 3 総括
総じて、このインタビューのなかの
『文明の衝突』と『ジャングル・ブック』の引用には不正確な部分があり、
メビウスの日本論にも大きな問題があると言わざるを得ません。

もっとも、これはあくまで
訳文を作るために可能なかぎり厳密に検証したからなのであって、
メビウスを妄信する必要がないのと同様に、
必要以上に責める必要もないと思います。
公的な論文などではなく、
あくまでインタビューで映画の感想を述べているだけなのですから、
この程度はフランス人としては標準的なのではないでしょうか。




目次:メビウス、『メトロポリス』を語る
# by moebius-labyrinth | 2006-11-15 21:50 | メビウスの子孫たち
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