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訳注『メトロポリス』:チェ・ゲバラ
「メビウス、『メトロポリス』を語る」の訳注です。
他の関連記事については以下のインデックスを参照してください。
目次:メビウス、『メトロポリス』を語る


◆ チェ・ゲバラ
チェ・ゲバラ(Che Guevara)は南米の有名な革命家です。
● ウィキペディア日内「チェ・ゲバラ」
作中では革命団の本部の場面で登場するのですが、
ゲバラは共産主義
(労働者が資本家を倒して平等な社会を作ろうとする考え方)に
傾倒していた革命家なので、
同様の革命を目指す革命団の団員にも
信奉されているということなのでしょう。
「少佐の階級章(一つ星)をつけたベレー帽は
 後年チェのシンボルマークとなる。」
とあるところも注意しておいて下さい。

1960年に撮られたポートレイトが有名で、
ポップカルチャーの重要なモチーフになっています。
● ウィキペディア日内「画像:Cheicon.jpg」
作中に登場する
「チェ・ゲバラのイメージ」(l’image du Che Guevara)も
このポートレイトを指しているようです。
僕が見たかぎりでは9例登場しています。
(場面が変わっても同じ対象を映している場合は合わせて1例)

(1)
47:15
[47:15]
微妙な例ですが、ゲバラの写真だと思います。

(2)
48:04
[47:58~48:50]
ゲバラの写真の上に英文が書かれていますが、
残念ながらこの英文の出典を確認するには至りませんでした。
英文はおそらく以下のようになっていると思います。

 THE LAW OF REVOLUTION
 SICKNESS IS THE MIRROR OF
 HEALTH
 DISCRETION IS FOR THE
 PROLETARIAT
 FRETUDKE[この一語不明] IS FOR THE
 BOURGEOISIE
 革命の原則
 病(やまい)は身体の兆候なり
 プロレタリアートは思慮深くあれ
 ブルジョワジーは[不明]たり

ゲバラの主著『ゲリラ戦争』と『ゲバラ日記』を見てみましたが、
参考になりそうな箇所は見つけられませんでした。
● アマゾン日内『ゲリラ戦争―武装闘争の戦術』のページ
● 同上内『ゲバラ日記』のページ

(3)
50:02
[50:02]
写真の下の星のマークは、
ゲバラのシンボルマークの少佐の階級章でしょう。

(4)~(8)
ティマが革命団の一室で字の練習をする場面にも
5枚のゲバラの写真が登場しますが、
非常にややこしい例なので、
この部屋の見取り図を描いてみました。
図の左側の壁の構造が少しややこしいのですが、
(角のところが下から上にかけてせり上げてくる構造になっている。
 階段を下から見上げた構造に似ている)
部屋を上から見下ろすと以下の図のようになっていると思います。
見取り図内のローマ数字のI~Vが、
それぞれ通し番号の(4)~(8)に対応します。
ゲバラのイメージ(革命団の一室)
[50:37~52:08]
各スクリーンショットは小さくなってしまいましたが、
実際に映像を観ながら確認して見てください。

(9)
59:09
[59:09]

また、アトラスは右足に星のマークを付けていますが、
これはゲバラのシンボルマークの一つ星(五角)ではなく、
六角のダビデの星です。




目次:メビウス、『メトロポリス』を語る
# by moebius-labyrinth | 2006-11-15 20:50 | メビウスの子孫たち
訳注『メトロポリス』:フリッツ・ラングの『メトロポリス』
「メビウス、『メトロポリス』を語る」の訳注です。
他の関連記事については以下のインデックスを参照してください。
目次:メビウス、『メトロポリス』を語る


◆ フリッツ・ラングの『メトロポリス』
インタビュー原文を直訳とともに挙げておきます。

On voit bien que Métropolis, c’est une leçon aussi.
人々は『メトロポリス』も確かに観る。これも一つの教訓だ。

原文では単に「メトロポリス」(Métropolis)とされているのですが、
これは、ドイツの監督フリッツ・ラングが1927年に発表した
SFの古典的映画『メトロポリス』を指していると思います。
● ウィキペディア日内「メトロポリス (1927年の映画)」
● ラング版『メトロポリス』公式サイト
● 「goo映画」内「メトロポリス(1926)」

ラング版『メトロポリス』にはいくつかのバージョンがあるのですが、
ポピュラーなのは1927年版と1984年編集版のようです。
メビウスがどのバージョンを想定しているのかは分からないのですが、
1984年版はオリジナルとは別個の作品と称されているので、
1927年版を想定しておけば良いでしょう。
問題は2002年版なのですが、

 2001年 5月26日 りんたろう版『メトロポリス』日本公開
 2002年 6月 5日 りんたろう版『メトロポリス』フランス公開
 2002年 7月12日 ラング版『メトロポリス』再編集版がアメリカ公開
 2002年12月 5日 りんたろう版『メトロポリス』DVDがフランスで発売

というように、
りんたろう版『メトロポリス』の公開日程と微妙に前後していて、
インタビューの時点で
メビウスがラングの2002年版を観ているかどうかはっきりしません。
(メビウスのインタビューは
 りんたろう版のDVDがフランスで発売された際に
 特典として付けられているので、
 すくなくともそれまでには行われているはずです。
 インタビューの正確な日程は判明していません。)
● 「IMDB」内「Metropolis (1927)>release dates」
  *ラング版『メトロポリス』各バージョンの公開日程の一覧ページです。
● 同上内「Metoroporisu (2001)>release dates」
  *同様にりんたろう版『メトロポリス』のページです。
● アマゾン仏内『Metropolis - Edition Collector 2 DVD』
  *フランスで発売されたこのDVDの特典として、
  当該インタビューが収められています。
  DVDの発売日は「5 Déc 2002」(2002年12月5日)です。
ただし、メビウスは日本の「漫画」・アニメの熱心なファンで、
大友克洋とも個人的な付き合いがあるようなので、
もしかしたら日本やフランスでの公開に先駆けて
りんたろう版を観ている可能性があります。
その時点ではラング版2002年版は公開されていません。
● [記者会見記事の下訳のまとめ1:「宮崎駿―メビウス」展]
  *当時アメリカに住んでいたメビウスは、
  アメリカでの一般公開に先駆けて、
  海賊版の『風の谷のナウシカ』のビデオ
  (日本版のビデオにアメリカのファンが字幕を付けたもの)
  を観ていたようです。
● [宮崎駿とメビウスの対談]
  *宮崎駿とメビウスの対談のなかで、
  『となりのトトロ』のビデオを
  宮崎駿がメビウスに個人的に送ることを申し出ています。
● [メビウス&大友克洋対談記事:「OTOMOEBIUS」1>注6]
  *『スチームボーイ』もフランスでの公開に先駆けて観ているようです。
  このように、メビウスは
  一般公開に先駆けて日本のアニメ映画を観ることがあるようです。

ひとまずは1927年版を想定しておけば良いでしょう。

● アマゾン日内『メトロポリス』のページ
  *僕はこのDVDをレンタルで観ました。
  淀川長治総監修『世界クラシック名画100撰集』(3)、1927年版です。

りんたろう版『メトロポリス』が
ラング版『メトロポリス』を出典としていることは
説明するまでもないでしょう。
その意味も含めて、ラング版『メトロポリス』は必見です。
モノクロで音声も付いていない映画ですが、
そんなことは全く気になりません。
むしろそれこそが魅力になっています。
色や音に頼らずとも、
役者の表情やしぐさ、美術などが雄弁に語りかけてくるように
作られています。

りんたろう版が出典としている要素は多々あるので
いちいち挙げることは出来ませんが、
ここでは、
ヒロインのマリアが地下世界で
労働者たちにバベルの塔の講話を語る場面を取り上げたいと思います。
Today I will tell you the story of the Tower of Babel.
きょうはバベルの塔の話をします

Let us build a tower whose summit will touch the skies--
「天までとどく塔を建設しようではないか

--and on it we will inscribe :
'Great is the world and its Creator.
And great is Man.'
偉大なる世界と創造主 そして
偉大なる人間を記念するために」

Those who had conceived the idea of this tower
could not build it themselves,
so they hired thousands of others to build for them.
建設工事のために大勢の人が
土工として雇われました

But these toilers knew
nothing of the dreams of those who planned the tower.
しかし土工達は塔建設の立案者の理想には無知でした

While those who had conceived the tower
did not concern themselves with the worker who built it.
一方、立案者たちには
現場土工達への思いやりがありませんでした

The hyms of praise of the few
became the curses of the many.
少数者の喜びは多数者にとって呪いでした

BABEL
バベル

Between the brain that plans
and the hands that build there must be a mediator.
計画立案者と現場の労働者の間には調停者が必要でした

It is the heart
that must bring about an understanding between them.
たがいの理解のための心が必要だったのです
[上記DVDより。訳はDVDの字幕に拠り、表記を改めた箇所がある]


この映画が、
労働者を善とし資本家を悪と決め付けるような、
共産主義にありがちな陳腐で一方的な構図にはおさまらないことを
物語っています。
メビウスがりんたろう版『メトロポリス』のテーマを
「le cœur」(「心」、英語の「heart」に相当)としていることと併せて、
非常に重要な場面だと思います。




目次:メビウス、『メトロポリス』を語る
# by moebius-labyrinth | 2006-11-15 20:40 | メビウスの子孫たち
補足資料『メトロポリス』:作中時間表
「メビウス、『メトロポリス』を語る」の補足資料です。
他の関連記事については以下のインデックスを参照してください。
目次:メビウス、『メトロポリス』を語る


◆ 作中時間表
『メトロポリス』の作中時間表をつくってみました。
合計5日間の出来事です。
作中で雪が降るので、季節は冬でしょう。
メトロポリスの所在地は、
ひとまずはニューヨークを想定しておけば良いと思います。
([補足資料『メトロポリス』:ZONE-1の地図])

┬────────────────────────────
◆ 1日目[01:36~07:36]

│夜:ジグラット完成祝賀会[01:36~07:36]
┼────────────────────────────
◆ 2日目[07:37~24:32]

│朝~昼:
│ケンイチとヒゲオヤジ、警察に行き応援を要請[07:37~09:33]

│ケンイチとヒゲオヤジ、ペロを借りる[09:34~13:07]

│ケンイチとヒゲオヤジ、ZONE-1の調査[13:06~14:13]


│夜:
│ロートン研究所でティマ覚醒~火災[14:14~23:27]
│ケンイチとティマがZONE-3へ落ちる[23:28~24:32]
├────────────────────────────
◆ 3日目[24:32~54:42]

│早朝:レッド公、ロートン研究所の火災の報を受ける[24:33~25:32]

│朝:ケンイチ、目覚める[25:33~30:36]
│ジグラットの光線発射実験[30:37~36:24]

│昼:
│ケンイチとティマ、ロックに追われてZONE-1まで逃げる[36:25~47:12]

│夕方:
│ケンイチとティマ、革命団にかくまわれる[47:13~50:36]

│夜:
│ティマ、革命団の一室で字の練習&着替え[50:37~54:42]
├────────────────────────────
◆ 4日目[54:43~01:26:07]
│早朝:クーデター勃発[54:43~59:21]


│夕方:クーデター失敗[59:22~01:03:26]
│ティマとケンイチ、ジグラットに捕らわれる[01:03:27~01:08:47]

│夜:
│ティマ、ロックにだまされて機能を停止させられる[01:08:48~01:13:22]
│ヒゲオヤジがティマを助け、ホテル・ココナッツへ[01:13:23~01:19:13]
│ヒゲオヤジとティマ、レッド公に発見されジグラットへ
│[01:19:14~01:26:07]
├────────────────────────────
◆ 5日目[01:26:08~01:42:43]
│夜明け前:ティマ覚醒~大崩壊[01:26:08~01:42:43]





目次:メビウス、『メトロポリス』を語る
# by moebius-labyrinth | 2006-11-15 20:30 | メビウスの子孫たち
補足資料『メトロポリス』:ZONE-1の地図
「メビウス、『メトロポリス』を語る」の補足資料です。
他の関連記事については以下のインデックスを参照してください。
目次:メビウス、『メトロポリス』を語る


◆ ZONE-1の地図
ZONE-1のおおまかな地図を作成してみました。
(クリックで拡大)
ZONE-1の地図
 *おおまかにNORTH(北)、EAST(東)、
 SOUTH(南)、WEST(西)に分かれています。
 「SO WHAT st」はWESTとEASTを結ぶ道路です。
 EASTには、地上やZONE-2,3との行き来をするための
 メインゲート(地図中のEASTを上下に挟む斜線で表記)
 があります。詳しくは後述。

ZONE-1は、
その雑然とした街並みそのものがひとつの魅力を持つように
造形されているように思います。
こういう場合は、
単に箱庭としてではなく、
実際に人の生活を想定した設定の裏付けがあるものです。
もしかしたら、しっかりとした地図が設定されているかもしれません。
劇中のヒントを辿って行くと、
少なくとも、おおまかな地図を作成できるように思います。
以下に僕の考証の道筋を示しておきます。

 ◆ TELENETの地図
ZONE-1の地図を作成するうえで第一に参考になるのは、
ホテル・ココナッツ(HOTEL COCONUTS)に隠れているヒゲオヤジとティマを
マルドゥーク党が探し出す場面です。
01:18:05
[01:18:05]
一瞬しか写りませんが、
マルドゥーク党の使用するモニターに
ZONE-1の地図が映し出されます。
これによると、ZONE-1はおおきく
N(NORTH、北)、E(EAST、東)、S(SOUTH、南)、W(WEST、西)
の四つのブロックに分かれているようです。
「ZONE 1 CENTRAL EXCH」は
「ZONE 1 CENTRAL EXCHANGE」(ZONE-1中央交換局)でしょう。
ヒゲオヤジとティマが電話網(TELENET)を使って
ケンイチの居場所を突き止めたので、
それを逆探知しているわけです。
「MGCC」は
「METROPOLIS GENERAL CONTROL CENTER」
(メトロポリス総合コントロール・センター)
の略でしょう。

この四つのブロックに沿って、
ZONE-1のおおまかな地図を作成することが出来るようです。
(ホテル・ココナッツについては後述)

 ◆ EAST ENDのメインゲート
ZONE-1のなかで比較的はっきりと位置を特定できるものとして、
メインゲート(各階層をつなげる通路)を挙げることが出来ます。
ケンイチ、ヒゲオヤジ、ロボットのペロが、
はじめてZONE-1に降りる場面で乗っている昇降機に、
「UNDERGROUND EAST END」(地下、東のはずれ)と書かれてあるからです。
13:09
[13:09]
「METROPOLIS GENERAL CONTROL CENTER」
(メトロポリス総合コントロール・センター)から地下へ降ります。
13:28(1)13:28(1)
13:28(3)13:283
[13:28(1)][13:28(2)]
[13:28(3)][13:23]
メインゲートの昇降機に書かれている文字をすべて繋げると、
「UNDERGROUND EAST END」になるようです。
「DERGROUND」と見切れていますが(ぎりぎり「D」が見えるくらい)、
「UNDERGROUND」を想定しておけば良いでしょう。

13:4113:47
[13:41][13:47]
メインゲートから出てZONE-1に出たところです。
[13:47]の「AN」は、
訳注『メトロポリス』:落書きとサウンド・トラック
で想定した「MANHATTAN」が見切れたものと考えれば良いと思います。
56:03
[56:03]
クーデターの人たちが集まるのもメインゲート前広場です。
ただし、
(くわしい考証は省きますが)
[13:47]と「56:03」の「MANHATTAN」の看板は別物であるはずです。
13:53
[13:53]
「75」の数字が[13:47]のものと一致します。
「EAST END」が見切れたと思われる「END」の文字も見えます。
画面上部の赤い建物はメインゲートの建物なのでしょう。

ZONE-1のメインゲート前は
おそらく以下のような地理になっているのでしょう。
メインゲート前地図

 ◆ WEST所在のロートン研究所
ロートン博士の研究所はZONE-1のWEST(西)ブロックにあるようです。
14:25
[14:25]
レッド公が研究所に向かう途中、
「W-15TH」(西15番通り)を通ります。
20:41
[20:41]
研究所の火事の場面で「ZONE-1 WEST」と映し出されます。

ケンイチとヒゲオヤジ一行は、
東のはずれからZONE-1に入って、
一日中ZONE-1を回ったあとに、
西地区にあるロートン研究所の火事に駆けつけるわけです。
(上掲地図の緑の矢印)

 ◆ HOTEL COCONUTSと南地区
劇中、唯一確実な所在地が知らされるのが、
ヒゲオヤジがティマをかくまった
「HOTEL COCONUTS」(ホテル・ココナッツ)です。
01:18:15
[01:18:15]
マルドゥーク党の逆探知によって、
「SOUTH blk 17 ZONE-1」(南地区 17番 ZONE-1)
とはっきりした住所が判明しますが、
SOUTH(南)ブロックのどこに当たるかは不明です。
このシーンの直前に、
南地区の電話線を探知している画面が映し出されますが、
表示される数字(おそらく住所か通りの番号)には、
とくに規則性などはないようです。
01:18:4701:19:14
[01:18:47][01:19:14]
ホテル・ココナッツは、
「CENTRAL STATION」(中央駅)の跡地に
(おそらく)オリエント急行の列車を係留してホテルとして使っている、
という設定なのでしょう。
実在の駅をモデルにしているのかも知れません(未調査)。

また、確実な手がかりはありませんが、
ヒゲオヤジは機能を停止したティマを担いでホテルまで来たのですから、
ロックがティマを解剖しようとしたビリヤード台のあるバーも、
南地区のホテルの近くにあるのではないかと思います。
01:13:33
[01:13:33]
扉に「Nemo」(『海底二万リーグ』のネモ船長)とあるので、
仮に「Nemo亭」と名づけておきます。

これも確証はありませんが、
ヒゲオヤジがロックの尾行をはじめた酒場も、
ひとまずは南地区にあると考えておけば良いでしょう。
01:07:5301:08:12
[01:07:53][01:08:12]
仮に「TORONGOの酒場」と名づけておきます。
酒場の向かいにはなんと「両国」とあります。

さらに、革命団のアジトも南地区にあるのではないかと思います。
49:12
[49:12]
これをブロック名の表記と考えて良いかは不詳ですが、
「SOUTH」の代わりに「南」とあるのではないでしょうか。

 ◆ ケンイチとティマの逃走経路
ロックに追われるケンイチとティマの逃走経路も、
地図上でおおまかに追うことが出来ます。
(上掲地図の青の矢印)

まず、WEST(西)ブロックのロートン研究所からZONE-3まで落ちます。
20:41
[20:41]
落ちた先のZONE-3でも依然としてWESTブロックです。
このことを確認するために、
ロックの追跡経路を確認しましょう。

36:36
[36:36]
ロックはEAST(東)ブロックからZONE-1に入ります。
(魚のオブジェについては後述)
37:12
[37:12]
さらに、「METROPOLIS GENERAL CONTROL CENTER」から
ZONE-2,3へと降下します。
「METROPOLIS GENERAL CONTROL CENTER」が
EAST END(東のはずれ)にあるのは上述の通りです。
おそらくメインゲートの近くなのでしょう。
38:27
[38:27]
最終的に「ZONE-3 WEST-77-1」(ZONE-3 西地区77-1)の
昇降機を使ってZONE-3に降ります。
ここで東から西に移ったわけです。
この後、ロックがケンイチとティマを発見します。

41:04
[41:04]
ロックに追われるケンイチとティマは、
上述の「ZONE-3 WEST-77-1」の昇降機をつかってZONE-2に逃げます。
ZONE-2のなかで西(WEST)から東(EAST)に移るようです。
43:38
[43:38]
ケンイチとティマは、
東地区にある「METROPOLIS GENERAL CONTROL CENTER」から
ZONE-1に出て来ます。
先ほどロックがZONE-2へと降りた通路のすぐ隣から出てきます。
43:36
[43:36]
ロックを待ち伏せていたヒゲオヤジが
ケンイチとティマを発見する直前の場面です。
このあとケンイチとティマは西に向けて逃走しているようです。
44:19
[44:19]
確証はありませんが、ここはEAST(東)ブロックだと思います。
ケンイチとティマが東のはずれから西に向けて逃げている途中です。
44:20~22
[44:20~22を合成]
中央の尖塔は、
マンハッタンのセントラルパークにあるオベリスクだと思います。
 *くわしくは以下の記事を参照してください。
 [訂正『メトロポリス』:マンハッタンにもオベリスクはあった
ここに魚のオブジェが登場しますが、
これが[36:36]の魚のオブジェと符号する
仕掛けになっているのではないでしょうか。
36:36
[36:36]
ということで、ここはおそらくEAST(東)ブロックだと思います。

45:1145:16
[45:11][45:16]
この場面の考証が非常にむずかしいのですが、
ここはEAST(東)とWEST(西)のちょうど中間にあたる
のではないかと思います。
ケンイチとティマはEAST END(東のはずれ)から逃げて来たはずですが、
この場面に出てくる道路の標識には、
「W 760」(西地区760番)や
「W 751」(西地区751番)とあります。
つまり西地区だと思われるのですが、
それにもかかわらず、このすぐ後の場面(後述)では、
またEAST(東)ブロックと思われる場所が映されるのです。
要するに、ケンイチとティマは、
東のはずれから西に向かって逃走し、
西地区に入りかけたところでUターンをし、
今度は逆に西地区から東に向かって逃げているのではないでしょうか。
(上掲地図の青の矢印、「SO WHAT st」近辺のU字矢印)
さらに、ここで映し出される
「SO WHAT st」(SO WHAT street、SO WHAT通り)の看板が重要です。
後にクーデターが起こって、ケンイチとティマがアトラスを見送る場面で、
「SO-WHAT」という看板が映されるからです。
55:31
[55:31]
ここはEAST END(東のはずれ)のメインゲートに上るエスカレーターです。
つまり、「SO WHAT st」というのは、
EAST(東)ブロックとWEST(西)ブロックを結ぶ通りの名前
なのではないでしょうか。

45:28
[45:28]
「E-7」(東地区7番)とあります。
ケンイチとティマはUターンをしてすぐ東地区に戻って来たわけです。
45:39
[45:39]
なんと「GINZA-7」(銀座7番)とあります。
ZONE-1の東地区には銀座まであるようです。
45:46
[45:46]
「EAST-1」(東地区1番)です。

このあとケンイチとティマは革命団にかくまわれます。
(上掲地図の青色破線の矢印)

 ◆ ZONE-1とジグラットの位置関係
大崩壊後の場面で、
ZONE-1とジグラットの位置関係が示唆される場面があります。
01:38:59
[01:38:59]
遠景の塔がジグラットなのでしょう。
そして、近景はZONE-1のメインゲート前広場です。
13:47
[13:47]

僕の作成したメインゲート前の地図が正しいなら、
ジグラットはおそらくZONE-1の中心地の上あたり、
ちょうどケンイチとティマがUターンをした場所の上あたりに
建っているようです。
45:11
[45:11]

ケンイチとティマの逃走経路(ZONE-1の東地区と中央部)の場面では、
多くのビルが映し出されます。
さらに、これらのビルはとても古ぼけていて、
傾いたものも多くあります。
44:20
44:24
[44:20]
[44:24]
 *背景のビルが傾いています。
おそらく、
ジグラットはかつてのマンハッタンの摩天楼の残骸のうえに建っている、
という設定があるのではないかと思います。

 ◆ その他
ティマが革命団の一室で字の練習をする場面で、
部屋のなかに地図が張られていますが、
とくに参考になりそうなものは見つけることが出来ませんでした。
革命団の一室


また、ジグラットから太陽に向けて光線が発射される場面で、
宇宙から地球を望む絵が映されますが、
ここでも参考になりそうなものは見つけることが出来ませんでした。
32:38
[32:38]

地図の作成には直接関係ないことですが、
地上のメトロポリスの街並みがCGで描かれていて、
地下のZONEの街並みが手描きで描かれているのは、
やはり対比を狙ったものなのでしょう。

 ◆ ZONE-1の地図は作成可能か? - 不確かさの意味
こういった作品の製作のセオリーからして、
ZONE-1については詳細な設定と地図が用意されているとは思うのですが、
(そうしないと生きた街並みがつくれません)
実際に作品に映し出されている限りでは、
せいぜい四つのブロック(東西南北)に沿って、
おおまかに地図を作成できる程度のようです。

ZONE-1の街並みはその雑然とした雰囲気こそが魅力なのですから、
明確な地図は作中では提示されず、
あえて大まかなままに止(とど)められている地理関係にそって、
観客もまたZONE-1をあてもなく彷徨(さまよ)うことが求められている、
ということなのでしょう。
さらにその街並みは、
ニューヨークのマンハッタンを中心として、
銀座や両国、上では触れませんでしたが、フランスやイタリア等、
看板の文字を通して、各国の街並みのイメージがいくつも重ね合わされている
ように思います。
ZONE-1は、はっきりと一つのイメージにはまとめられない、
不確かな街なのです。

上に記した僕の考証にはいろいろと不確かな部分がありますし、
実際に僕とは違った地図を作成することも可能かもしれません。
おそらくそういった不確かな要素を含んだままで、
手探りで不確かな地図を作成してゆく工程そのものが、
ZONE-1という街そのものなのだと思います。

ということはつまり、
僕の不確かな考証の道筋をここまで読んでくれたあなたも、
今まさにZONE-1という街の道筋を旅して来たところだ、
ということにもなるでしょう。
自分で地図を作成してみれば、
もっと深くZONE-1という街に入り込むことが出来るだろう、
ということも、最後に付け加えておきましょう。




目次:メビウス、『メトロポリス』を語る
# by moebius-labyrinth | 2006-11-15 20:20 | メビウスの子孫たち
総括『メトロポリス』:出典の詮索と作品の可能性
「メビウス、『メトロポリス』を語る」の総括です。
他の関連記事については以下のインデックスを参照してください。
目次:メビウス、『メトロポリス』を語る
出来れば、他の関連記事をすべて読んでから
この記事を読んでいただけると助かります。

この記事では、

 ・『メトロポリス』の問題は僕たち自身に差し向けられている。
 ・作品の可能性を広げるような解釈を示さないかぎり、
  出典の詮索には意味がない。

ということを述べます。


◆ 総括
さて、
僕なりに『メトロポリス』について調べた結果を挙げてみましたが、
とくに「出典」(des références)に関しては、
ここで挙げたものの他にも多くの仕掛けがあって、
それら全てを挙げることはとても出来ませんでした。
(そんなことをし出すと、それだけで一つのサイトになってしまいます。
 原稿段階で泣く泣く破棄しました)

しかしながら、ここで大切なのは、
これらの「出典」が決して単なる「お遊び」(jeu)に終わってはいない、
ということでしょう。
とくに、
『I Can't Stop Loving You』と
『St. James Infirmary』と
狂騒の20年代前後のアメリカの歴史の知識に関しては、
これらの理解無しには作品の鑑賞すら儘(まま)ならないほどです。

僕は最初この映画を観たときに、
単なる文明批判ものとしか観ていませんでした。
しかし、上記三つの内容をはじめとして色々と調べてみた今は、
その意見を翻さなければならないと思っています。
『I Can't Stop Loving You』と
『St. James Infirmary』の歌詞の内容、
そして最後のBGMのアレンジが
ディキシーランド・スタイルからベイシー・スタイルに変化すること、
これらは全て、
ケンイチがティマを失うことではなく、ティマを失った後のこと、
文明の崩壊ではなく崩壊した後のこと
(すなわち文明批判が役目を終わった後のこと)
こそが、重要な意味を持つということを示しています。
21世紀(映画の公開は2001年)に住む僕たちはすでに、
文明の繁栄には終わりがあること、
文明の批判にも限界があること、
(今さら文明を完全に捨てることは出来ません。
 それを自覚せずにむやみに文明以前の状態に憧れることは
 単なる逃避に過ぎません。
 たとえば、都会の喧騒を逃れて“素朴な田舎生活”に憧れても、
 田舎の現実に打ちのめされるだけです)
を知っています。
文明批判すらすでに古いのです。
では、ケンイチはティマを失った後にどうするのか?
残念ながら映画のなかでは明確に語られてはいません。
(色褪せた写真が提示されるのみです)
好意的に解釈するなら、
おそらくこの問題は、
今この映画を観ている僕たち自身に差し向けられている、
ということになるのでしょう。
答えは僕たち自身が見つけなければならないのだと。

ここは『メトロポリス』のファン・サイトではないので
これ以上深入りすることは避けますが、
(おフランスの漫画のファン・サイトなんですってばっ!)
上述のように、
「出典」が単なる「お遊び」に終わっていないということは、
再度確認しておく必要があるでしょう。
この作品には、僕が挙げた例以外にも、
非常に多くの仕掛けが施されているようです。
それらを際限なく指摘し続けることも出来るでしょうが、
単に出典を詮索するだけでは意味がありません。
それでは、必要以上に作品を煩雑にしているだけです。
僕はそれは、マニアの自己満足でしかないと思うのです。
僕が上に提示した解釈にも限界はあるでしょうし、
もちろん異論はあって当然だと思うのですが、
僕が今回示した種々の考証が、
この作品の可能性を広げることに繋がれば幸いです。




目次:メビウス、『メトロポリス』を語る
# by moebius-labyrinth | 2006-11-15 20:10 | メビウスの子孫たち
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